Gartnerは2018年12月3日(米国時間)、米国ラスベガスで同日開幕したカンファレンス「Gartner IT Infrastructure, Operations and Cloud Strategies Conference 2018」において、IT環境の動向と、ITインフラとオペレーションの担当リーダーが直面する課題を紹介した。
Gartnerは2018年12月3日(米国時間)、米国ラスベガスで同日開幕したカンファレンス「Gartner IT Infrastructure, Operations and Cloud Strategies Conference 2018」において、IT環境の動向に加え、ITインフラとオペレーションの担当リーダー(I&Oリーダー)が直面する課題を紹介した。
I&Oリーダーは、エッジコンピューティングや人工知能(AI)、絶えず変化するクラウド市場などの新動向に対応しなければならない。
それに加えて、「アジリティーを支える多様性の管理」「アプリケーションによる変革の実現」「シフトする境界」「求められる人材像の変化」という4つの要因を踏まえて、戦略とスタッフのスキルを進化させ、「いつでもどこでも使えるインフラ」を実現する必要があるとしている。
Gartnerは4つの要因ごとに、新動向とI&Oリーダーが取るべき対応を次のように説明している。
Gartnerのバイスプレジデントのボブ・ギル氏は、IT部門が全てをコントロールする時代は終わったと語った。技術やパートナー、ソリューションの選択肢が増える中、「分野ごとに定番の選択肢を決めておき、それを繰り返し使用するという従来のIT部門のアプローチでは、今日のビジネスで要求されるアジリティーを提供できない」と同氏は指摘した。
コロケーションやマルチクラウド、PaaSなど、使用可能な技術のデジタルツールボックスを用意し、社内顧客にとっての使いやすさや製品の先進性、優れた運用性に照らしていつでも選択できるようにすること、さらに長期にわたって多様な選択肢を管理できる枠組みを確立すべきだと、ギル氏はアドバイスした。
アジリティーの必要性は高まる一方であり、短期的にはI&Oリーダーが無秩序に広がる多様性を管理しなければならない。長期的には、ビジネス主導のアジャイルソリューションの構築に必要なサービスを、採算性を含めて管理すべきだ。「I&Oチームには、こうした業務を遂行するためのガバナンスやセキュリティ、経験がある」(ギル氏)
インフラはコスト削減を可能にし、アプリケーションを支えるが、直接的なビジネス価値をもたらすのはあくまでもアプリケーションだ。Gartnerのバイスプレジデント、デニス・スミス氏は、「アプリケーション開発は、変革を実現して顧客ニーズを満たしたり、APIでさまざまなソフトウェアコンポーネントを連携させるソリューションを構築したりするチャンスだ」と述べた。
Gartnerの調査によると、2025年までに、サービス/プロダクト志向のアプローチを採用しないIT部門の70%は、自社のビジネスをサポートできなくなる見通しだ。そのため、I&Oエンジニアは、利用者やソフトウェア開発者と関わり、人やプロセス、技術を統合し、サービスやプロダクトを提供することで、アプリケーションを支える強力なインフラをサポートしなければならない。
デジタルビジネスは新たなやりとりや、よりリアルタイムのビジネスモーメント(デジタルビジネスの中で瞬時に現れる無数の新たな機会)を利用し、結果的に物理とデジタルの境界を曖昧にする。モノの接続が進む中、データセンターはもはや「データのセンター」ではなくなっている。「デジタルビジネスやIoT、没入型体験は、データ処理を絶えずエッジに移行させる」と、Gartnerのディスティングイッシュドバイスプレジデントのトム・ビットマン氏は指摘した。
Gartnerによれば、2022年までに企業で作成されるデータの5割以上がデータセンターやクラウドの外部で生成、処理されるようになる。没入型技術は、文化や世代のシフトの口火となりそうだ。人とデジタル世界の人工的な境界が少なくなり、人々は没入型でリアルタイムのやりとりをより期待するようになる。
低レイテンシが求められていることや、帯域幅のコストを低減すること、個人的データの増加に伴うプライバシーや規制の変化、インターネット接続の停止時に必要となる自律性は、いずれも企業インフラの境界をエッジに拡張する要因となる。
I&Oリーダーは、進化する複雑な環境でも迅速に価値を提供しようと苦心している。これが、組織内で知識を迅速に学びとり、共有する妨げになってしまっている。
Gartnerのマネージングバイスプレジデントのクリス・バン・リパー氏は、「I&Oワーカーは今後、技術的な専門性を1つだけ積み上げていくことよりも、多様なスキルや経験を身に付けることを求められるようになる」と指摘した。
先進的な企業は、従業員の育成方法や報酬制度を変更しており、固定的なサイロ化したキャリアパスから、よりダイナミックなキャリアパスに移行している。こうした新しいキャリアパスには、ローテーションによって時間をかけ、さまざまな技術分野やビジネス部門を経験することが含まれる可能性がある。「多くの人がITポートフォリオやビジネスコンテキストを幅広く理解するようになれば、I&Oチームがデジタルビジネスの要求に備えるための集合知や多様な考え方が得られるだろう」(バン・リパー氏)
究極の姿を考えると、多様な行動を促進することが、I&Oチームをデジタル時代に備えさせることになる。適応性やビジネスセンス、密接なコラボレーション、ステークホルダーとの連携に磨きをかけることで、I&Oチームは今後の変化とディスラプション(創造的な破壊)に対して備えができるという。
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