ITインフラとオペレーションのリーダーは、従来の課題と、新たな変化に伴う課題の両方に直面している。
ガートナーの米国本社発のオフィシャルサイト「Smarter with Gartner」と、ガートナー アナリストらのブログサイト「Gartner Blog Network」から、@IT編集部が独自の視点で“読むべき記事”をピックアップして翻訳。グローバルのITトレンドを先取りし「今、何が起きているのか、起きようとしているのか」を展望する。
企業がITとオペレーション技術を連携させ、デジタルビジネスのイノベーションを進めようとする中、ITインフラとオペレーション(I&O)の担当リーダーは、10の主要な技術トレンドへの対応に力を入れ、こうした取り組みを後押ししなければならない。
2016年12月に開催されたGartner Data Center, Infrastructure & Operations Management Conferenceで、Gartnerのバイスプレジデント兼最上級アナリストを務めるデイビッド・カプッチオ氏は、I&Oに影響するこれらの技術トレンドは、「戦略的」「戦術的」「組織的」といったカテゴリに分類されると語った。
「これらのトレンドは、社会やビジネスのさまざまな側面と結び付いている。どのトレンドも今後5年間、IT部門がビジネス部門にサービスを提供する方法に直接影響するだろう。『こうしたトレンドがどのように生まれているか』『ITオペレーションにどのような連鎖的影響を与えるか』をITリーダーが理解しなければ、戦略、計画、オペレーションへのインパクトが甚大なものになる可能性がある」(カプッチオ氏)
ガートナーは、「2020年までに、IaaS(Infrastructure as a Service)やPaaS(Platform as a Service)のプロバイダーによって販売されるコンピュートパワーの量が、企業データセンターに販売されデプロイされるコンピュートパワーの量を上回る」と予想している。ほとんどの企業(ごく小規模な企業以外)は、オンプレミス(またはホスティングされた)データセンター機能を引き続き保持するだろう。しかし、大部分のコンピュートパワーはIaaSプロバイダーに移るため、企業やベンダーは、オンプレミス、オフプレミス、クラウド、非クラウドのアーキテクチャのハイブリッドな組み合わせを管理し、利用することに注力する必要がある。
データセンターのインターコネクトファブリックは、「ソフトウェアで定義された動的な分散型データセンター」を実現しようとしている。ワークロードを動的にモニタリング、管理、分散する機能や、APIによってLANやWANサービスを迅速にプロビジョニングする機能が、さまざまな可能性を広げている。
コンテナ(Dockerなど)とマイクロサービスは、クラウド開発における新しいアプリケーションプラットフォームだ。コンテナは、プロセスの分離を実装する便利な方法を提供することから、マイクロサービス開発に適している。マイクロサービス開発では、アプリケーションは一連の小規模なサービスとして構築される。これらのサービスは別々のプロセスとして動作し、ネットワークベースの軽量のメカニズムで通信する。マイクロサービスは独立してデプロイ、管理でき、コンテナ内で実装されると、基盤のOSとはほとんど直接やりとりしない。
ガートナーの最近の調査では、IT支出の29%が従来のIT部門ではなく、ビジネス部門で行われていることが分かった。この割合は今後数年間、上昇する見通しだ。こうしたビジネス部門主導のIT利用は多くの場合、時間のかかる従来のITプロセスを避ける方法だった。だが現在では、技術に詳しいビジネスパーソンが、できるだけ労力をかけずに新しい市場に適応あるいは参入し、新しいアイデアを迅速に実行する手段になっていることが多い。
現在の明敏なITリーダーは、ビジネス部門主導のIT利用が企業に価値をもたらすことを認識するとともに、IT部門の役割が、「主要なビジネスステークホルダーと協力関係を築くことで新しいプロジェクトを常に把握し、それらが長期的にどのような影響を全体的なオペレーションに与え得るかを見通すこと」にあることを認識している。
ITリーダーは、「サービスとしてのデータセンター(DCaaS:Data Center as a Service)」モデルを構築する必要がある。このモデルでは、IT部門とデータセンターの役割は、適切なサービスを適切なペースで、適切なプロバイダーから、適切なコストで提供することにある。IT部門はサービスのブローカーになるわけだ。
ITリーダーは、社内全体にクラウドサービスの利用を可能とすることができ、しかも適切なサービスを適切なタイミングで、適切なプロバイダーから、必要なITサービスおよびサポートが損なわれないような形でこれを実現できる。
費用を支払っているのに実際には使われていない残余キャパシティは、オンプレミスデータセンターでもクラウドでも見られる。ITリーダーはアップタイムや可用性だけでなく、キャパシティ、使用率、密度も重視しなければならない。この問題を解決すれば、既存データセンターの寿命が延び、プロバイダーに支払う運用費用を抑えられる。
IoT(モノのインターネット)は、将来のデータセンターの設計、管理や進化の在り方を変えるだろう。IoTにより、膨大なデバイスから常時または定期的に、世界中の企業や政府機関にデータが送信されるようになるからだ。I&O部門は、IoTとデータセンターの両方の長期戦略を担うIoTアーキテクトを起用しなければならない。
リモートオフィスを持つ多くの企業で大きなトレンドとなっているのが、こうした遠隔拠点の資産を集中管理する必要性の高まりだ。その背景には、企業が地方や遠方の拠点にあるマイクロデータセンターのサポートに注力していることや、IoTなど地理的に固有のコンピュート要件に対応するエッジコンピューティング環境の登場が挙げられる。
ビジネス部門が急ピッチで進めているIoTソリューションの導入に伴い、新タイプの資産である接続センサーが広く使われるようになっている。センサーは、ファームウェア更新や定期的なバッテリー交換が必要になることがある。このため、資産追跡管理システムで新たなレベルのきめ細かな制御を行う必要がある。
マイクロ/エッジコンピューティングでは、高速なレスポンスを要求するリアルタイムアプリケーションが、ユーザーに近いエッジサーバで実行される。通信遅延は数百ミリ秒どころか、数ミリ秒に短縮される。ユーザーのデバイスから計算負荷の高い処理の一部がエッジサーバにオフロードされ、アプリケーションの処理はデバイスの能力への依存度が減少する。
IT部門がこうしたトレンドに適応していくと、ITインフラとオペレーションの担当組織に新しい職を置くことが必要になる。その最たるものが、さまざまなクラウドサービスプロバイダーの監視/管理を担当するITクラウドブローカーだ。
次に必要なのが、さまざまなIoTシステムのデータセンターへの潜在的な影響を把握する責任を負うIoTアーキテクトだ。また、IoTアーキテクトはビジネス部門と協力し、ビジネス部門のクローズドループIoTソリューションが中央のIoTアーキテクチャと互換性を持っているか、あるいは広く普及したプロトコルやデータ構造を使用していることを保証する。
さらに、インテグレーションの専門家も必要になる。インテグレーションの専門家がチームとして、新たな取り組み(クラウド、エッジコンピューティング、IoTなど)のインテグレーションを保証する責任を担うようになる可能性もある。
出典:Top 10 Technology Trends Impacting Infrastructure & Operations(Smarter with Gartner)
Director, Public Relations
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