福島県は富士通エフサスと共同で、センサーやカメラを活用して、繁殖和牛の発情時期と分娩時の監視、牛舎や個体の遠隔管理を行える「個体一元管理システム」の実証実験を開始する。担い手不足や飼養頭数減少などの課題を抱える繁殖農家の営農再開を支援する。
富士通エフサスは2018年12月5日、福島県とICTを活用した繁殖和牛の生育管理や遠隔からの農場管理の実証実験を開始すると発表した。
福島県では、東日本大震災後の原発事故に伴う避難指示などにより、住民の帰還が進まず、繁殖農家の担い手不足や飼養頭数の大幅減少などの課題が進行し、営農再開を阻む大きな要因となっている。
今回の実証実験は、県内の繁殖農家の営農再開を支援する取り組みとして、県内有数の畜産地帯であった阿武隈地域の農場で実施する。実施期間は2018年10月7日から2019年3月31日の予定。
実証実験では、センサーやカメラを活用して、繁殖和牛の発情時期と分娩(ぶんべん)時の状況、牛舎全体の監視を行うIoT機器を導入し、装置から収集するデータを蓄積、分析する「個体一元管理システム」を構築。これにより、農場業務の効率化や負担軽減を図りながら、データに基づく飼養管理や遠隔からの牛舎管理の実現性を検証する。
今回、牛舎に導入する装置は、繁殖和牛にセンサーを取り付け、行動量の情報を収集、分析することで、効果的な発情発見や早期に異常を検知できる「発情監視装置」、分娩房に取り付けたモーションカメラで分娩房に入った繁殖和牛の行動分析、監視を行い、より正確な分娩予知とその後の分娩事故などを未然に防止する「分娩監視装置」、遠隔カメラで牛舎全体を監視し、離れた場所からでもスマートフォンやタブレット端末で内部の確認や早期の異常発見が可能になる「個体監視装置」の3種。
また、同システムは、食の安全や環境保全に取り組む農場に与えられる認証「JGAP」に準拠したチェックシートを実装しており、安心・安全な繁殖和牛の飼育を支援するという。
実証実験が成功すれば、データに基づく正確な発情発見による繁殖成績の向上や分娩予知による事故の防止、疾病の早期発見による損耗防止が見込まれ、大規模繁殖農場経営体の育成や収益性の向上などが期待されるという。また、データに基づいた飼養管理により、勘や経験に頼る農業からの脱却を図ることができ、新規就業者の獲得にも寄与するとしている。
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