機械学習/AIスタートアップのABEJAが同社イベント「SIX 2019」で発表した新サービスは、機械学習/AIのマーケットプレイス構築にもつながるという。
機械学習/AIスタートアップのABEJAは2019年3月5日、東京都内で5000人以上を集めたイベント「SIX 2019」を開催、新サービスを発表した。
ABEJAはインフラの構築・運用を考えることなくユーザーが機械学習/AI関連の作業を(データ格納/前処理段階から)行えるクラウド上のプラットフォーム、「ABEJA Platform」、そして流通業、製造業、インフラ業界に向けた特定目的のSaaS、「ABEJA Insight」を提供している。一方で顧客の要望に応え、機械学習/AIの導入を支援する活動をしてきた。
特に画像における物体認識などのディープラーニングを生かしたソリューションに注力しているのが特徴。例えば小売・流通業向けのSaaSである「ABEJA Insight for Retail」では、カメラ映像から事前登録なしに来店客の顔を識別し、リピーターかどうかを推定する新機能を搭載している。同サービスに関連し、ABEJAは今後、「学習工場」として自ら店舗を運営し、仮説検証を通じて得る知見を製品に組み込んでいくという。
今回のイベントでは「ABEJA Platform Accelerator」という新サービスを発表した。ABEJA Platformはデータサイエンティストやデータエンジニアの使う基盤だが、Acceleratorではこの上で、データのアノテーションからモデル作成, 評価レポート提供に至るプロセスを自動的に実行する。評価レポートでは、モデルの精度や推論の根拠、改善のためのヒントを示す。よく言われるようになってきた「AIの民主化」を目指した機能という。
Acceleratorは、PaaS であるABEJA Platformと、SaaSであるABEJA Insightの中間に位置するもので、同社はこのレイヤーを「MLaaS」と呼び、今後力を入れていくという。自社でもGoogle Cloudでいえば「Cloud AutoML」に似た機能などに取り組むが、カギとなるのは他社にMLaaSを提供してもらうことだと、執行役員の菊池佑太氏は説明する。
「顧客のニーズを支えるため、MLaaSモジュールの数を増やしていきたい。例えば不良品を検知したいというニーズに対し、『不良品検知のための機械学習のプロセス』をMLaaSとして他社に提供してもらうなどが考えられる」(菊池氏)
ABEJAは海外進出も進めようとしているが、今後の勝負のポイントは、上記のような複数レイヤーのサービスを通じ、ABEJA Platformとしてエンドユーザー顧客のアカウントをどれくらい獲得できるかにあるという。
このため、例えば他社が同プラットフォーム上でMLaaSやSaaSを提供しやすくするマーケットプレイス的な機能を組み込もうとしている。
「例えば個人の開発者が、いずれかのMLaaSを使ってサービスを構築し、APIリクエスト単位などの課金でビジネスができるというような仕組みを作りたい」と菊池氏は話している。
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