ハイブリッド対応を強化した「System Center 2019」がリリース、半期チャネル(SAC)は廃止にMicrosoft Azure最新機能フォローアップ(75)

Microsoftのシステム運用管理製品System Centerの最新の長期サービスチャネル(LTSC)、「System Center 2019」がリリースされました。同時に、2018年2月から始まったSystem Centerの半期チャネル(SAC)は廃止となりました。

» 2019年03月22日 05時00分 公開
[山市良テクニカルライター]
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Microsoft Azure最新機能フォローアップ

System Center 2019の強化点

 Microsoftは2019年3月初め、公式ブログで「System Center 2019」の2019年3月中のリリース予定を発表し、3月14日(米国時間)にリリースされたことを公表しました。

 System Center 2019としてリリースされたのは以下の5製品です。発表の同日からボリュームライセンスサービスセンター(VLSC)と、Visual Studioサブスクリプション(旧称、MSDNサブスクリプション)で入手可能になりました。また、180日評価版の提供も開始されました。

System Center 2019としてリリースされた5製品

  • Virtual Machine Manager 2019
  • Operations Manager 2019
  • Data Protection Manager 2019
  • Service Manager 2019
  • Orchestrator 2019

 System Centerは、オンプレミスのサーバインフラストラクチャ、データセンター、プライベートクラウド、およびクラウドの監視と管理のためのシステム運用管理ツールです。最新のSystem Center 2019では、主に最新のWindows Server 2019への対応や、Microsoft Azureのサービスと連携したハイブリッド管理が強化されています。今回は、System Centerの新機能の一部を紹介します。

 「Operations Manager 2019」では、Azure Log Analyticsのログ解析機能やAzure Application InsightsのWebアプリ監視機能、その他のAzureサービスが持つ監視機能と統合されたパフォーマンスと警告の監視が可能です(画面1)。また、WebコンソールがHTML5ベースになり、Microsoft Edgeなどのモダンブラウザに最適化されました(画面2)。

画面1 画面1 Operations Manager 2019の管理コンソール。Azure Log Analytics(旧称、OMS)との統合によるハイブリッド環境の監視が可能
画面2 画面2 Operations Manager 2019のWebコンソール。HTML5ベースに刷新され、モダンブラウザに最適化された

 「Virtual Machine Manager 2019」は、Azure更新管理(Azure Update Management)サービスと連携した仮想マシンのパッチ管理が可能になりました(画面3)。さらに、Windows Server 2019の強化された「ネットワーク仮想化」(SDNv2とも呼ばれ、従来のHNVv1を置き換えます)や「記憶域スペースダイレクト(S2D)クラスター」「ハイパーコンバージドインフラ(HCI)」の管理と監視に対応しています。

画面3 画面3 Virtual Machine Manager 2019は、オンプレミスの仮想マシンのパッチ管理にAzure Update Managementを使用できるようになった

 「Data Protection Manager 2019」は、Windows Server 2019 Hyper-VやSQL Server 2017、SharePoint 2019、Exchange 2019、VMware vSphere 6.7、Virtual Machine Manager 2019といった新バージョンのアプリケーション保護に対応した他、SSDを用いた階層ストレージによるバックアップの高速化、Azure Log Analyticsを使用したオンプレミスのバックアップとクラウドのバックアップ(Azure Backup)の集中監視、VMware仮想マシンのテープへのバックアップなど、新機能が追加されています(画面4)。

画面4 画面4 Data Protection Manager 2019の管理コンソール。Windowsの保護に加えて、Windows Server上のアプリケーションの保護やVMwareサーバ上のVMware仮想マシンの保護が可能になった

 その他の新機能や強化点、重要な変更点については、各製品のドキュメントを参照してください。

半期チャネル(SAC)は廃止され、LTSCに一本化

 System Centerは2018年2月から、System Center 2016までの「長期サービスチャネル(Long-Term Servicing Channel:LTSC)」とは別に、Windows 10やWindows Serverでも採用されている「半期チャネル(Semi-Annual Channel:SAC)」のサービスモデルが導入されました。

 半期チャネルの最初のバージョンは「System Center,version 1801」、その次のバージョンは「System Center,version 1807」(System Center 1801からのアップグレードのみ)です。半期チャネルは有効なSystem Centerソフトウェアアシュアランス(SA)を持つ顧客に対して、半年ごとに新バージョンがリリースされ、各バージョンは18カ月サポートされます。

 一方、長期サービスチャネルは数年ごとに新バージョンがリリースされ、各バージョンはメインストリームサポート最低5年、延長サポート最低5年の長期サポートが提供されます。System Center 2019は、メインストリームサポートが2024年4月9日まで、延長サポートが2029年4月9日まで提供されます。

 今回、長期サービスチャネルのSystem Center 2019のリリースに合わせ、2018年に始まったばかりのSystem Centerの半期チャネルが廃止となることが発表されました。つまり、System Center,version 1807は半期チャネル最後のバージョンとなり、2020年1月24日に18カ月のサポートが終了します。

 System Center 2019に対しては、メインストリームサポート期間中、従来の長期サービスチャネルと同様に半年に一度「更新ロールアップ(Update Rollup:UR)」が提供されることになりますが、この更新ロールアップを使用して新機能が追加されます。

 Microsoftによると、既存顧客のほとんどがSystem Center 2016、またはそれ以前の長期サービスチャネルリリースを使用してインフラストラクチャを運用しているという実態があり、更新サイクルとサポート期間が長い長期サービスチャネルリリースの方が企業への展開に適していると学んだとのことです。

 これに基づいて、半期チャネルリリースを中止し、System Center 2016だけでなく、半期チャネルリリースのSystem Center,version 1801とversion 1807に対してもSystem Center 2019へのアップグレードパスが提供されることになりました。

 なお、System Centerの半期チャネルの変更は、Configuration Manager Current Branchリリースには影響しません。これまでと同様に、Configuration Manager Current Branchリリースから長期サポートチャネルリリースへのアップグレードパスは提供されません。長期サポートチャネルリリースからCurrent Branchリリースへのアップグレードは、ソフトウェアアシュアランスまたは同等のサブスクリプションを購入することで可能です。

Configuration Manager 2019は提供されないの?

 「Configuration Manager」と「Endpoint Protection」は、System Center 2016のリリースやSystem Centerの半期チャネルがスタートする以前に、それまでの長期サービスチャネルから、年に3回のサイクルで「Current Branch」のリリースに移行しました(最初のバージョンは2015年12月のversion 1511、Endpoint ProtectionはCurrent Branchリリースのみ)。

 Current Branchリリースでは、半期チャネルとは異なり、年に3回のサイクルで更新バージョンが提供され、version 1706以前は12カ月、version 1710以降は18カ月のサポートが提供されます。通常、長期サービスチャネルのSystem Centerの新しいバージョンと同時期に、Configuration Managerの長期サービスチャネルが提供されますが、現時点でConfiguration Managerの新しい長期サービスチャネルバージョンは製品としても、評価版としても提供されていません。

 同じSystem Centerブランドではありますが、Configuration ManagerとEndpoint Protectionは「Enterprise Mobility+Security(EMS)」というカテゴリーにも分類される製品であり、今回リリースされた他のSystem Center製品とは幾つか違いがあることに注意してください。

 まず、Configuration ManagerとEndpoint Protectionは、長期サービスチャネルとCurrent Branchのどちらを使用するかに関係なく、ソフトウェアアシュアランスまたは同等のサブスクリプション(Enterprise Mobility+Security、Microsoft 365 Enterpriseなど)が必須です。ソフトウェアアシュアランスなしで、Configuration ManagerおよびEndpoint Protectionを購入することはできません。

 また、長期サービスチャネルのConfiguration Managerには、新機能は提供されません。新機能は年に3回のサイクルで提供されるCurrent Branchリリースに対して提供されます。さらに、更新ロールアップもまた、Current Branchリリースに対してのみ提供されます。

 長期サービスチャネルのConfiguration Managerは、ソフトウェアアシュアランスまたは同等のサブスクリプションの有効期限が切れた(失効した)顧客を対象としたものです。例えば、System Center 2016に含まれる長期サービスチャネル版のConfiguration Managerは、2016年10月1日以降に失効する顧客を対象としたもので、Current Branchリリースのversion 1606をベースにしたものでした。その製品名はConfiguration Manager 2016ではなく、「System Center Configuration Manager(LTSB - version 1606)」(LTSBは現在のLTSCの旧称)です。

 ただし、Endpoint Protection(Windows、Linux、Macに対応したマルウェア対策製品)にはこのオプションは用意されておらず、失効した時点でアンインストールする必要があります。

 Configuration Managerの長期サービスチャネル版がCurrent Branchリリースのどのバージョンをベースとしたものになるのか、現在、公開された情報はありません。もしかすると、System Center 2016のときに特例として用意されたオプションであり、今後、長期サービスチャネルで新バージョンの提供予定はないのかもしれません。新しい情報があれば、以下の公式ドキュメントに反映されるでしょう。

 なお、Configuration ManagerおよびEndpoint Protection Current Branchリリースの最新バージョンはversion 1810であり、このバージョンでWindows Server 2019とWindows Server,version 1809が正式にサポートされました。現在、version 1902がTechnical Preview段階にあります。version 1902のTechnical Previewは、以下の評価版サイトからダウンロードできます。

筆者紹介

山市 良(やまいち りょう)

岩手県花巻市在住。Microsoft MVP:Cloud and Datacenter Management(2018/7/1)。SIer、IT出版社、中堅企業のシステム管理者を経て、フリーのテクニカルライターに。Microsoft製品、テクノロジーを中心に、IT雑誌、Webサイトへの記事の寄稿、ドキュメント作成、事例取材などを手掛ける。個人ブログは『山市良のえぬなんとかわーるど』。近著は『ITプロフェッショナル向けWindowsトラブル解決 コマンド&テクニック集』(日経BP社)。


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