新設の拠点の場合は、フレッツ 光ネクストの開通とひかり電話の工事が同時にできるので、図2のような状況になってVPNが不通になる心配はない。しかし、既設拠点でフレッツ 光ネクストにひかり電話を追加してISDNを「巻き取る」場合には、期間の長短はあれ、必ずVPNの通信断が発生する。ひかり電話についてフレッツ網側の工事時間をユーザーが指定できるなら、営業時間外に一時的にVPN通信を止めてホームゲートウェイを設置すればよい。
しかし、ひかり電話の工事時間が指定できない以上、営業時間中にVPN通信断が発生する可能性が高い。これを回避する有力な対策の一つが、LTEでバックアップすることだ。図4のように拠点ルーターからLTEでデータセンタへ向かうインターネットVPNのバックアップを用意するのだ。
フレッツ網でひかり電話の工事が完了すると自動的にインターネットVPNに迂回(うかい)し、ホームゲートウェイ設置後は、キャリアVPNが復旧してLTEから切り戻される。
バックアップに使うLTEのSIMは普段データが流れることがないので、高価な大容量の契約である必要はなく、格安SIMで十分だ。ISDNを止めることによる経済効果を大きく損なうことはないだろう。
フレッツやISDNはかなり地味なテーマだ。だが、1000本単位のフレッツ 光ネクストを業務上運用している筆者のようなユーザーには重大な問題だ。そして、つくづく思うのだが、フレッツというサービスは奥が深い。皆さんの中にも多くのフレッツ回線を使っている方がおられるだろう。このコラムが参考になれば幸いだ。
松田次博(まつだ つぐひろ)
情報化研究会主宰。情報化研究会は情報通信に携わる人の勉強と交流を目的に1984年4月に発足。
IP電話ブームのきっかけとなった「東京ガス・IP電話」、企業と公衆無線LAN事業者がネットワークをシェアする「ツルハ・モデル」など、最新の技術やアイデアを生かした企業ネットワークの構築に豊富な実績がある。企画、提案、設計・構築、運用までプロジェクト責任者として自ら前面に立つのが仕事のスタイル。『自分主義-営業とプロマネを楽しむ30のヒント』(日経BP社刊)『ネットワークエンジニアの心得帳』(同)はじめ多数の著書がある。
東京大学経済学部卒。NTTデータ(法人システム事業本部ネットワーク企画ビジネスユニット長など歴任、2007年NTTデータ プリンシパルITスペシャリスト認定)を経て、現在、NECセキュリティ・ネットワーク事業部主席技術主幹。
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