Azure Migrateが移行プロジェクトの中央ハブとして大幅刷新、「日本」地域にも対応Microsoft Azure最新機能フォローアップ(88)

オンプレミスのVMware仮想マシンの移行を支援するサービスとしてスタートした「Azure Migrate」が、2019年7月に新バージョンに刷新。Hyper-V仮想マシン、SQL Serverデータベース、ISV(独立系ソフトウェアベンダー)のソリューションを含む、Azureへの移行プロジェクトの“中央ハブ”として生まれ変わりました。

» 2019年08月22日 05時00分 公開
[山市良テクニカルライター]

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「Microsoft Azure最新機能フォローアップ」のインデックス

Microsoft Azure最新機能フォローアップ

以前のバージョンと新バージョンのAzure Migrate

 「Azure Migrate」は、2018年3月から一般提供されているサービスです。当初は、オンプレミスの「VMware ESXi(5.5以降)」上のVMware仮想マシンを対象に、Azure仮想マシンへの移行の可能性や、その費用をレポートする評価ツールでした。

 評価対象としては、Windows仮想マシン(Windows Server 2008以降、Windows Server 2008のサポートは2018年8月に追加)とLinux仮想マシンがサポートされますが、Azure Migrate自身には移行を実施する機能は含まれていません。移行ツールとしては「Azure Site Recovery(ASR)」の「オンプレミス−Azure間レプリケーション」を利用する形でした。

 2019年7月、Azure Migrateは新バージョン(v2)に更新され、VMware仮想マシンに加えて、Hyper-V仮想マシンがサポートされました。その他にも複数の移行ツールによる検出と評価の開始、移行の実施、進行状況の追跡を行うことができる“中央ハブ”として刷新されています。

 新バージョンのAzure Migrateでは、オンプレミスの仮想マシン、データベース、データ、Webアプリの移行を支援する、以下の機能が統合されています(画面1)。

  • サーバ:Server AssessmentまたはISVツールによるVMware/Hyper-V仮想マシンの検出、Server MigrationまたはISVツールによる仮想マシンおよび物理サーバのAzureへの移行
  • データベース:Database Assessmentによるデータベースの評価、Database MigrationによるAzureへの移行
  • Databox:Azure DataBox製品による大容量データのオフライン転送
  • Webアプリ:App Service Migration(https://appmigration.microsoft.com/)による.NETおよびPHP Webアプリの評価と移行

画面1 画面1 Azure MigrateはVMware仮想マシンの評価ツールから、サーバ、データベース、Webアプリ、データの移行を支援する中央ハブとして機能する総合的なツールに刷新

 上記のサーバの検出と評価を行うServer Assessmentが、新バージョンでHyper-Vに対応しました。サポートされるのは、Windows Server 2012 R2とWindows Server 2016のHyper-Vホスト(Windows Server 2019は非サポート)上のWindowsおよびLinux仮想マシンです。

 VMware仮想マシンの検出と評価には「Azure Migrateアプライアンス」(OVA形式、ダウンロードサイズ12GB)のVMware仮想マシンイメージをダウンロードして「VMware vCenter」にインポートします。そして、このアプライアンスが提供するWebベースの評価ツールを実行すると、検出したデータがAzure Migrateサービスに転送されます。

 Hyper-V仮想マシンの検出と評価も同様で、仮想マシン構成バージョン5.0(Windows Server 2012 R2 Hyper-Vの既定)のAzure Migrateアプライアンス(VHD形式<.zip圧縮>、ダウンロードサイズ12GB)をダウンロードしてHyper-V仮想マシンとして実行し、アプライアンスが提供するWebベースの評価ツールを使用する形になります(画面2)。

画面2 画面2 Azure MigrateのServer Assessmentの評価ツールは、仮想マシンアプライアンスとしてオンプレミスのvCenterまたはHyper-V環境にインポートして実行する

 Server Migrationは、ASRをバックエンドとして利用する新しい移行ツールであり、Azure MigrateのUI(ユーザーインタフェース)に統合されています。

 サーバの検出と評価、移行については、Microsoftが提供するServer AssessmentとServer Migrationの他、ISVが提供する複数のソリューションを選択できるようになりました(画面3)。Microsoft提供のツールは現在、VMwareおよびHyper-Vの仮想マシンの検出と評価に対応していますが(物理サーバについては近い将来対応予定)、ISVのツールの中には物理マシンの検出と評価、移行に対応しているものもあります。

画面3 画面3 サーバの検出と評価、移行のためのツールとして、ISV提供のもの(有料の場合あり)を選択することも可能

メタデータの格納先として「日本」地域が利用可能に

 Azure Migrateではこれまで、移行プロジェクトの作成可能な地域が米国、アジア太平洋、ヨーロッパの3つ地域(地理)に限られていました。新しいバージョンのAzure Migrateでは利用可能な地域が拡張され、2019年8月時点では以下の8つの地域がサポートされています(Azure Governmentは現状、古いバージョンのみ提供)。

  • 米国
  • アジア太平洋(2019年1月〜)
  • ヨーロッパ(2019年1月〜)
  • 英国(2019年7月〜)
  • オーストラリア(2019年8月〜)
  • カナダ(2019年8月〜)
  • インド(2019年8月〜)
  • 日本(2019年8月〜)

 なお、移行プロジェクトの作成可能な地域とは、Azure Migrateにより収集された仮想マシンのメタデータが保存される場所であり、移行先のターゲットとなるAzureリージョンを制限するものではありません。移行プロジェクトの地域は、メタデータを格納するためだけに使用されます。

 しかしながら、オンプレミスのデータを日本国内だけにとどめておきたいという要望や、法的要件がある場合は、移行プロジェクトの地域として日本を選択できるようになったのは重要なことでしょう(画面4)。

画面4 画面4 Azure Migrateの移行プロジェクトの地域としては、日本を含む8つの地域がサポートされる

Azure Migrateの料金は180日まで基本無料

 Azure Migrateに含まれる、Server Assessment、Server Migration、Database Assessment、Database Migration、App Service Migrationは、基本的に無料で利用できます(Database Migration Standardは無料、Premiumは有料、その他にストレージやデータ転送に対して別途課金される場合があります)。

 ただし、利用開始から180日間経過すると、LogAnalyticsやASRなど依存関係にある一部のサービスの課金がスタートすることに留意してください。その他、Azure DataBox製品やISVツールは、有料のサービスです。詳しくは、以下の価格ページで確認してください。

筆者紹介

山市 良(やまいち りょう)

岩手県花巻市在住。Microsoft MVP:Cloud and Datacenter Management(2019-2020)SIer、IT出版社、中堅企業のシステム管理者を経て、フリーのテクニカルライターに。Microsoft製品、テクノロジーを中心に、IT雑誌、Webサイトへの記事の寄稿、ドキュメント作成、事例取材などを手掛ける。個人ブログは『山市良のえぬなんとかわーるど』。近著は『ITプロフェッショナル向けWindowsトラブル解決 コマンド&テクニック集』(日経BP社)。


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