メモリ内で処理中の機密データを暗号化できているか? Linux Foundationがコンソーシアムを創設Intel、Microsoft、Red Hatなどが参加

Linux Foundationは、「コンフィデンシャルコンピューティング」の定義と導入促進に取り組む「Confidential Computing Consortium」を創設する。機密データの保護には3段階あり、今回は中でも最も困難なメモリ内で処理中のデータ保護に取り組む。Alibaba、Arm、Baidu、Google、IBM、Intel、Microsoft、Red Hat、Swisscom、Tencentなどがコンソーシアムへの参加を表明した。

» 2019年08月23日 19時00分 公開
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 Linux Foundationは2019年8月21日(米国時間)、「コンフィデンシャルコンピューティング」の定義と導入促進に取り組むプロジェクトコミュニティーとして「Confidential Computing Consortium」を創設すると発表した。

 Alibaba、Arm、Baidu、Google、IBM、Intel、Microsoft、Red Hat、Swisscom、Tencentなどの企業が今回の取り組みへの参加を表明している。

 今回、コンソーシアムを創設する背景について、Linux Foundationは次のように説明している。

 「オンプレミスやパブリッククラウド、エッジといったさまざまな環境にわたって企業がワークロードを移動するようになった。機密を保たなければならない知的財産やワークロードデータを保護する対策に加え、そうした対策の信頼性、透明性の向上が必要となっている」

使用中のデータを暗号化できているか?

 このような背景の中、Linux Foundationは現在のデータ保護の取り組みが不十分であると指摘している。

 「クラウドコンピューティングにおける現在のアプローチでは、ストレージに『保存中』のデータやネットワークで『転送中』のデータについては保護対策が実現できている。だが、メモリ内で『処理中』のデータの暗号化はそうではない。この部分は機密データの完全な暗号化ライフサイクルにおける3つ目の、おそらく最も困難なステップだ」

 このステップを実現するのがコンフィデンシャルコンピューティングなのだという。

 「コンフィデンシャルコンピューティングは、暗号化されたデータがメモリ内で処理されている際に、システムの他の部分からは見えないようにするとともに、機密データ漏えいのリスクを軽減し、ユーザーにとっての保護対策と透明性を向上させることを可能にする」

まず3社がオープンソースプロジェクトを進める

 Linux Foundationのエグゼクティブディレクターを務めるジム・ゼムリン氏はコンソーシアムの役割について次のように述べている。

 「Confidential Computing Consortiumは、コンピューティングにおけるセキュリティの今後を先取りする。使用中のデータのための信頼できるインフラをサポートするオープン技術の定義と開発に貢献する」

 そのために、ハードウェアベンダーやクラウドプロバイダー、オープンソース専門家、学術研究者を結集して、コンフィデンシャルコンピューティング市場の拡大を加速し、技術と規制の標準化に影響を及ぼし、TEE(Trusted Execution Environment:信頼できる実行環境)開発に適した環境を提供するオープンソース技術を開発する。さらに、業界への啓蒙(けいもう)や教育を中心になって進める。

 コンソーシアムの参加企業は、幾つかのオープンソースプロジェクトを通じて貢献する計画だ。

  • Intel Software Guard Extensions(Intel SGX)Software Development Kit
    アプリケーション開発者が、保護された「エンクレーブ」(TEE)を使用して、選択したコードやデータを、ハードウェアレイヤーでの開示や変更から保護するように設計されている
  • Microsoft Open Enclave SDK
    開発者がエンクレーブによる単一の抽象化を利用して、TEEアプリケーションを開発できるオープンソースフレームワーク。TEEアプリケーションを1回開発すれば、複数のTEEアーキテクチャで動作する
  • Red Hat Enarx
    TEEを使用するアプリケーションのセキュリティを確保するためのプロジェクト。特定のハードウェアに依存しない

 Confidential Computing Consortiumは、コンフィデンシャルコンピューティングをサポートするさまざまなオープンソースプロジェクトやオープン仕様をホストするという。活動資金は会員組織の会費でまかなわれる。

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