パスワードの方針について総務省は2004年に「パスワードを定期的に変更するように」と総務省のサイトで呼び掛けていました。しかし、2018年に「パスワードの定期変更は不要」と内容を一変させ、話題となりました。今回はパスワードの定期変更について、米国の状況や、定期変更が必要となるパターンを見直してみます。
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利用者を特定するための基本的な手段としてIDとパスワードを用いた方法(認証)が広く利用されています。しかし、この方法はIDとパスワードの組み合わせが分かれば、誰でもその人になりすますことができます。特にパスワードは機密性が高いため、漏えいしないように厳格な管理が求められます。
「パスワードの定期変更は不要」と一様に思われがちですが、必ずしもそうとは言い切れません。今回はパスワードの定期変更について解説します。
2004年、総務省はパスワードが漏えいした場合、パスワードを定期的に変更していれば、被害を防ぐことができるため、パスワードの定期変更を推奨していました。
しかし2018年には、パスワードの作り方がパターン化して容易に推測されやすくなるリスクやパスワードを使い回すことを助長しかねないことから、パスワードの定期変更に関する内容を変更しました。例えばパスワードを「password1」から「password2」に変更(下1桁の数字が増えた)する場合、変更前のパスワード「password1」から現在のパスワード「password2」を推測することは比較的容易となり、定期的に変更する効果は低くなります。
そのため、以下の条件を満たし、複数のサービスで異なるパスワードを設定している場合は、パスワードが漏えいした事実が確認できない限り、定期的にパスワードを変更する必要はないと方針を変更しました。
総務省が内容を変更した背景には、米国立標準技術研究所(NIST)が発表したID運用についての報告書があります。
2017年5月にNISTが出した「Digital Identity Guidelines」でも「パスワードの定期変更は不要」と記載されています。この内容によると、以下の条件を満たす場合はパスワードの定期変更は不要となっています。
総務省の提示した内容との大きな違いとしては、総務省はパスワードに英語と数字の混在を推奨している半面、NISTでは複雑さの要件を課さないことを推奨しています。これは、NISTでは細かなパターン分けされたルール(詳細は原文をご確認ください)が記載されており、さらにパスワードに求める条件も多いことから、これらの要件を満たしている場合は複雑さの要件が必要とはならず、むしろパスワードの作り方がパターン化しないように不要と記載していると考えられます。
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