GartnerがCEOの3大懸念事項を解説、CIOに求められる課題とは?国家の対立や景気減速に立ち向かうには

Gartnerは、2019年時点で企業CEOが考える最も大きな3つの懸念事項として、「再グローバル化」「景気減速」「デジタル化の不透明性」を挙げた。CIOはこの3つの懸念事項を理解し、今後12〜18カ月にわたる戦略計画で対処する必要がある。

» 2019年10月31日 10時00分 公開
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 Gartnerは2019年10月29日(現地時間)、企業CEO(最高経営責任者)が考える2019年の最も大きな3つの懸念事項として、「再グローバル化」「景気減速」「デジタル化の不透明性」を挙げた。CIO(最高情報責任者)はこれらの懸念事項を理解し、今後12〜18カ月にわたる戦略計画で対処する必要があるという。

 Gartnerのディスティングイッシュトアナリストでフェローのクリスチャン・ステーンストルプ氏は、オーストラリアのゴールドコーストで同日に開催された「Gartner IT Symposium/Xpo」で講演し、ビジネス環境の悪化に伴って、CEOは収益の成長を維持する方法を探していると指摘した。

 「多くの取締役会がCEOに対して、デジタルビジネスの収益拡大によって、他のビジネスの困難な問題を埋め合わせるように求めている。CEOは長年、デジタル投資を行っており、デジタルビジネスが成長して大きな結果を出し始めることを期待している。CEOが何を達成する必要があるかをCIOが理解すれば、取り組みの優先順位を調整してCEOをサポートできる」(ステーンストルプ氏)

 さらにステーンストルプ氏は、ビジネスモデルや競争ルール、商品、サービスが今後、深く変わるだろうと警告し、企業が長期的な構造改革を怠り、戦術的なデジタルビジネスの成果に短期的に依存することを戒めている。

 Gartnerによると、CEOが考える上位3つの懸念事項と、CIOに求められる内容は以下の通り。

(1)再グローバル化

 世界各国の政府が貿易関係と貿易ルールを見直しており、規制強化などこれらに伴う大きな変化や課題に対応した再グローバル化が企業活動に求められている。

 「Gartner 2019 CEO Survey」では、CEOの23%が、国際貿易における新しい関税や割り当て量などの規制が、今後3年間に自社のビジネスに大きな影響を与えると答えている。さらに58%が、これについて全般的な懸念を示している。

 再グローバル化による地理的なシフトの中で、CIOがCEOを支援するには、地理的な柔軟性を確保しながら組織を導くことに注力する必要がある。具体的には次のような対応によって実現できる。

  • データサイエンスを適用し、ビジネスに最適な地理的展開とフローを発見することで、競合他社の先を行く
  • 業務において地理的なアジリティー(機敏性)を発揮できるように、クラウドベースの機能を提供する
  • デジタルビジネストランスフォーメーションを加速する機会として、地理的な変更を伴う施策を利用する

(2)景気減速

 景気指標の悪化を受け、2019年を通じてCEOの懸念が高まっている。特に顕著な指標として、逆イールドカーブ(短期金利>長期金利となっている状態)や収益成長率の低下、貿易量の減少、消費者信頼感指数の低下などがある。

 CIOは、分析力や診断力、プロジェクト管理力を生かして次のような施策を実行することで、CEOをサポートできる。

  • 効果が落ちている従来型の生産性施策に疑問を提起する
  • 自社のビジネスモデルのデジタルシフトを促進するため、生産性の新たな鍵を特定する
  • デジタルイノベーションとITイノベーションを適用し、生産性を画期的に高める

(3)デジタル化の不透明性

 CEOは成長を優先しており、そのけん引役としてデジタル化は期待できる。だがCEOのデジタル化へのコミットメントは不十分な場合が多い。その背景には、自分の専門外の分野、あるいはリスキーと感じる分野であるデジタル化への不安感や、デジタル化に伴うコストや大きな変化からくるためらいがある。

 「CEOの間でデジタル化の意欲が下がっている。デジタルトランスフォーメーションが(ハイプサイクルの)幻滅期に入ったからといって、デジタル化による改革を諦めてはならない。3〜5年後に後悔することになるからだ」(ステーンストルプ氏)

 CIOは、短期中期長期からなる3種類のデジタル戦略を策定することで、CEOが自社の長期的なデジタルビジョンを維持できるようサポートできる。

 この戦略には、1年後、5年後、10年後に目指すデジタル化の在り方を盛り込むようにする。さらに、この戦略では、現在の改革の前進によって、将来にどのような選択が可能になるかを明示するとともに、将来にわたって有効な差別化機能や長期的な施策にも重点を置く必要がある。

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