Windows 10 November 2019 Update(バージョン1909、ビルド18363、通称:19H2)がリリースされました。現在、Windows Server Update Services(WSUS)でWindows 10 バージョン1903の更新管理を行っている企業は、これまでの機能更新とは異なり、スムーズにバージョン1909に移行することができます。
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Windows Updateおよび「Windows Server Update Services(WSUS)」では、「Windows 10 バージョン1903」以降で重要な変更が行われています。そのことについては、本連載の第50回と第55回で説明しました。
簡単にまとめると、Windows 10 バージョン1903から、それまでの「半期チャネル(対象指定)」(SAC-T)が廃止され、「半期チャネル」(SAC)に対する一般向けリリースの宣言だけになりました。また、Windows 10 バージョン1903を実行しているPCには、Windows 10 バージョン1909の機能更新プログラムが毎月のセキュリティ更新プログラムと同様のテクノロジーを用いて配布され、機能更新プログラムのダウンロードとインストールにかかる時間が大幅に短縮されることが予告されていました。
WSUSを使用したWindows 10 バージョン1909の機能更新プログラムの配布がこれまでとどう変わるのか、実際のところを確かめてみましょう。変わるというよりは、今回は「新しい配布オプションが1つ増える」といった方がよいかもしれません。
なお、Windows 10 バージョン1809以前を実行しているWSUSクライアントに対する機能更新プログラムの配布はこれまでと変わりません。また、Windows 10 バージョン1909を実行しているWSUSクライアントへの2020年春に予定されている、通称「20H1」の機能更新プログラムの配布もまた、これまでと変わりません。
20H1を実行しているWSUSクライアントへの2020年秋に予定されている、通称「20H2」の機能更新プログラムの配布については、まだ何も決まっていないようです。つまり、今後の機能更新プログラムが、毎回、今回のような形で提供されるということではありません。現時点でいえるのは、今回限りかもしれない、うれしい選択肢が1つ増えたということです。
通常、Windows 10の新しい機能更新プログラムが利用可能になると、WSUSの「製品と分類」にはWindows 10の新バージョンに対する新たな製品が追加されます。例えば、Windows 10 バージョン1903のリリース時には「Windows 10, version 1903 and later」という製品が追加されました。
今回のWindows 10 バージョン1909については、新たな製品の追加はありません。Windows 10 バージョン1909は、1つ前のバージョンと同じ「Windows 10, version 1903 and later」でカバーされます(画面1)。その理由については、この後の説明で納得できると思います。
Windows 10 バージョン1903の詳細なビルド番号は「18362.x」、Windows 10 バージョン1909は「18363.x」です。ビルド番号は1つだけインクルメント(増量)され、品質更新の更新レベルを示すリビジョン番号(.x)の部分は共通になります。実は、Windows 10 バージョン1903とバージョン1909のOSの大部分には変更がなく、サービススタック(Windowsのバイナリ)も共通で、Windows 10 バージョン1909ではこれまでの品質更新で追加された新機能が有効化されているという形になります。
「サービススタックが共通」とは、毎月の品質更新プログラムもまた共通ということです。以下の画面2と画面3は、Windows 10 バージョン1903とバージョン1909に2019年11月に配布されたセキュリティ更新プログラム「KB4524570」のファイル情報を、WSUSのコンソールで確認したものです。WSUS上では別の更新プログラムとして表示されますが、更新プログラムのパッケージファイル(.cab)は同じものであることが分かります。
Windows 10 バージョン1909の機能更新プログラムのパッケージは、従来と同様にエディション(コンシューマーまたはビジネス)、言語、bit数(x64またはx86)ごとに「Upgrade」という分類でWSUSに同期され、WSUSクライアントに対して承認可能になります。日本語、x64パッケージのサイズは約3.35GB(画面4)、日本語、x86パッケージのサイズは約2.39GBと、従来と同様にWSUSクライアントによるダウンロードが社内LANの帯域を占有しないように注意しなければならないサイズです。
今回はこれとは別に、Windows 10 バージョン1903の機能更新プログラムとして、「機能更新プログラム(有効化パッケージを使用)」という「Upgrade」に分類されるパッケージが用意されています。こちらのパッケージサイズは20KB以下と極めて小さいものです(画面5)。
この更新プログラムは、以下のサービススタックの更新プログラムおよび品質更新プログラム以降がインストールされているWindows 10 バージョン1903に配布することが可能です。つまり、2019年10月までの更新プログラムがインストールされているWindows 10 バージョン1903ということになります。
「機能更新プログラム(有効化パッケージを使用)」は、Windows 10 バージョン1903のビルドをインクルメントし、バージョン情報を書き換え、無効化されている新機能を有効化するだけのものです。詳しくは、以下のドキュメントを参照してください。
以下の画面6は、条件を満たすWindows 10 バージョン1903のWSUSクライアントに「機能更新プログラム(有効化パッケージを使用)」を承認して配布した様子です。ダウンロードとインストールは一瞬で終わり、再起動も数分で完了しているのが確認できるでしょう(タスクバーの時計を参照)。通常の機能更新プログラムを使用した配布(自動化されたアップグレードインストール)では数時間かかる更新が、通常の品質更新プログラムよりも短い時間で完了するのです。
「機能更新プログラム(有効化パッケージを使用)」のドキュメントでも説明されていますが、このタイプの機能更新プログラムはWindows UpdateとWSUSでのみ利用可能です。WSUSを使用しないWindows Updateの環境には、現在、Windows 10 バージョン1909の機能更新プログラムが利用可能であることが案内され、「今すぐダウンロードしてインストールする」をクリックした場合にのみバージョン1909への更新が始まります。
この挙動は、Windows 10 バージョン1809とバージョン1903の両方で共通ですが、Windows 10 バージョン1809には通常の数GBのフルパッケージが配布され、ダウンロードとインストールに数時間かかります(画面7)。一方、要件を満たすWindows 10 バージョン1903の場合は、わずか20KBの「機能更新プログラム(有効化パッケージを使用)」のダウンロードと、短時間のインストールで終了します。
最後に付け加えておくと、WSUSでは、Windows 10 バージョン1903に対して、従来と同じ形式のWindows 10 バージョン1909の機能更新プログラムを承認してWSUSクライアントに配布することも可能です。「機能更新プログラム(有効化パッケージを使用)」を利用すれば、社内ネットワークに負荷を掛けることなく、Windows 10 バージョン1903をバージョン1909にアップグレードできるというわけです。ただし、今後の機能更新プログラムが、毎回、今回のような形で提供されるわけではないことをもう一度繰り返しておきます。
岩手県花巻市在住。Microsoft MVP:Cloud and Datacenter Management(2019-2020)。SIer、IT出版社、中堅企業のシステム管理者を経て、フリーのテクニカルライターに。Microsoft製品、テクノロジーを中心に、IT雑誌、Webサイトへの記事の寄稿、ドキュメント作成、事例取材などを手掛ける。個人ブログは『山市良のえぬなんとかわーるど』。近著は『ITプロフェッショナル向けWindowsトラブル解決 コマンド&テクニック集』(日経BP社)。
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