Windows 10 May 2019 Update(バージョン1903、通称:19H1)をすぐにでもテストし、導入することで、企業におけるWindows 10の今後の展開はより柔軟になるかもしれません。「Windows Server Update Services(WSUS)」によるWindows 10 バージョン1903の展開をおさらいしてみましょう。
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Microsoftの以下の発表によると、Windows 10の2019年秋の「機能更新プログラム」(通称:19H2)は、2019年春のバージョン1903(通称:19H1)に対する小規模なアップデートになる模様です。以下の発表は19H2についての説明であり、2020年以降の話ではありません。
Windows 10は「半期チャネル(Semi-Annual Channel)」に基づいて、春と秋の年に2回、新バージョン(機能更新)がリリースされます。これまでは毎回「大型アップデート」とも呼ばれる、事実上のアップグレード(OSの入れ替えと設定やアプリ、データの移行)でした。
詳細についてはまだ不明な点はありますが、19H2はバージョン1903(19H1)に対する小規模なアップデートとなり、毎月の累積更新プログラムと同じ技術とエクスペリエンスで、短時間で完了するそうです。一方、バージョン1809以前のPCに対しては、従来と同じ機能更新プログラム、つまり大型アップデートとして提供されます。
このスタイルが2020年以降も踏襲されるとしたら、サポート期間が30カ月のEnterpriseエディションを使用していて、秋のリリース(例えば、2年後の秋のリリース)をターゲットに少ない頻度でアップグレードしようと考えている企業は、秋のリリースを待たずに、1つ前の春のリリースからテストと導入を始められるでしょう。春のリリースでテストを進めても、そのまま秋のリリースにスムーズに移行できることが期待できるからです。
本連載第32回、第33回では、Windows 10 バージョン1607のEnterprise/Education向けに延長提供されていたサポートが2019年4月に終了する前に、バージョン1607に対して「Windows Server Update Services(WSUS)」を使用してバージョン1803の機能更新プログラムを配布する手順を紹介しました。
企業のクライアントとして19H2を次に予定していた場合でも、19H2がバージョン1903(19H1)に対する小規模なアップデートであるなら、19H2のリリースを待たずに、既に利用可能なバージョン1903(19H1)を使用してテストと導入を開始することができます。バージョン1903(19H1)で運用環境への展開を始めたとしても、品質更新プログラムの間隔で19H2に移行できるからです。そこで今回は、第32回、第33回でバージョン1803にアップグレードしたWindows 10に、WSUSでバージョン1903(19H1)を配布し、アップグレードしてみます。
その前に1つ注意点があります。Windows 10 バージョン1809(ただし、ビルド17763.529以降)およびバージョン1903からは、Windows Updateから「自動更新」または「手動更新」(「更新プログラムのチェック」ボタンのクリック)で機能更新プログラムを受け取る場合、機能更新プログラムの存在を通知し、「今すぐダウンロードしてインストールする」オプションが提供されるようになりました。
これにより、意図しないタイミングで機能更新プログラムのダウンロードとインストールが始まることはなくなりました。ただし、機能更新プログラムの延期設定をしている場合は、その設定に従います。また、現在のシステム構成(ハードウェアなど)に何らかの既知の問題がある場合は、その旨を通知して機能更新プログラムの提供をストップしてくれます(画面1)。
WSUSを利用している場合、WSUSクライアントにはこれらの機能は提供されず、「管理者の承認」に基づいてダウンロードとインストールが始まります。そのため、事前にバージョン1903をテストした上で、運用環境に機能更新プログラムを展開することが重要です。もちろん、テスト目的で限定した範囲への展開のために、WSUSを利用することができます。WSUSによる展開を行う前に、OSディスク(C:ドライブ)に3GB以上の空き領域があるのを確認することも忘れないでください(その方法としては自作スクリプトからインベントリ収集ツールなどさまざまあるので今回は説明しません)。
Windows 10 バージョン1903(19H1)は、一般向けリリースと同時にWSUSに対しても提供されました。Windows 10 バージョン1903用の新しい「製品」が追加されているので、WSUSの「製品と分類」オプションを開いて、バージョン1903関連の新しい「製品」を追加し、Microsoft Updateと再同期します(画面2)。
機能更新プログラムの配布対象となるクライアントのOS環境に合わせて、適切な機能更新プログラム(分類:Upgrade)を配布対象の「コンピューターグループ」に対して承認します(画面3)。
「コンシューマーエディション」はパッケージ製品やプリインストール(OEM)製品として入手したPro、Pro for Workstations、Pro Education、Education、「ビジネスエディション」はボリュームライセンス製品として入手したPro、Pro for Workstations、Pro Education、Education、Enterpriseエディションに対応しています。「<言語>」は、Windows 10のインストールに使用されたメディアの言語です。日本語ローカライズ版の場合は、「ja-jp」を選択します。後は、x64またはx86はOSのビット数を配布対象と一致させます。
WSUSクライアントにどの機能更新プログラムを選択すればよいのか不明な場合は、現在のOSバージョンが必要とする1つ次のバージョンの機能更新プログラムを「未承認」のリストから確認してみてください。その更新プログラムを必要とするPCがWSUSクライアントの中にある場合、「!」アイコンで識別できます(画面4)。
今回、機能更新プログラムをテストする環境は、Windows 10 バージョン1803英語版(en-us)に「日本語言語パック」を追加して日本語化したものです。そのため、「en-us」の機能更新プログラムを承認していますが、国内企業であれば、通常は「ja-jp」の機能更新プログラムになるでしょう。
Windows 10 バージョン1903にアップグレード後、速やかに最新の状態にするために、バージョン1903の機能更新プログラムのリリース後に提供された品質更新プログラムを追加で承認します。例えば、Windows 10 バージョン1903の以下の品質更新プログラムです。
Windows 10 バージョン1809からは、Windowsと.NET Framworkの品質更新プログラムである「累積更新プログラム(Comulative Update、CU)」が別々に提供されるようになったことに注意してください。それぞれ、WSUSに同期された最新版(Latest CU、LCU)を選択します。Windowsの累積更新プログラムには、前提となる「サービススタック更新プログラム(Service Stack Update、SSU)」があるので、承認しようとしている累積更新プログラムの前提のSSUを承認します。LCU、LCUの前提のSSU、.NET FrameworkのLCUは、以下のサイトで確認できます。この他、毎月の「Adobe Flash Playerのセキュリティ更新プログラム」も提供されているので、最新版を承認します。
ウイルス対策ソフトウェアとして、Windows 10標準の「Windows Defender Antivirus」を使用する場合は、以下のマルウェア対策プラットフォームの更新プログラムと定義の更新のそれぞれ最新版を承認します(自動承認している場合は、古いバージョンを拒否します)。
必要な全ての更新プログラムを承認したら、「承認済み」のリストに切り替えて表示をリフレッシュし、各更新プログラムの状態が「インストール準備完了」になっていることを確認します(画面5)。この状態になったら、WSUSクライアントは自動更新または手動更新でいつでも機能更新プログラムを受信できるようになります。
WSUSクライアントでは、自動更新、またはWindows Updateの「更新プログラムをチェック」ボタンをクリックすることにより、バージョン1903の機能更新プログラムのダウンロードとインストールが行われます(画面6)。
筆者のバージョン1803英語版+日本語言語パックの環境では、一部表示が英語になっていますが、これは2019年6月に提供されたバージョン1803の機能更新プログラムの影響です。実は、この表示の問題もあって、今回のバージョン1903への更新を実施することにしました。
バージョン1903の機能更新プログラムのインストールが完了すると、Windows 10のビルドは最新の状態です。つまり、追加で承認したWindowsのLCUまでインストールされた状態です。
ちなみに、英語版+日本語言語パックの環境にen-usの機能更新プログラムをインストールした場合、初回のサインイン時までに日本語言語パックも追加され、日本語化された状態で完了しました。.NET FrameworkとAdobe Flash Playerの更新プログラムについては、初回のWindows Update時にWSUSからダウンロードされてインストールされました(画面7)。
また、「更新の履歴」には表示されませんでしたが、Windows Defender Antivirusの更新プログラムもインストール済みになっていました。おそらく、初回のWindows Updateよりも先にWindows Defender Antivirus自身の更新機能で更新されたのでしょう。
WSUSクライアントが多数の場合は、手動更新ではなく、自動更新またはスケジュール設定による更新になるでしょう。その場合、機能更新プログラムやその他の品質更新プログラムの配布状態は、「承認済み」更新プログラムリストの先頭のアイコンと、選択した際に表示される状態で把握できます(画面8)。
「エラーが発生したコンピューター」をクリックしていけば、問題が発生しているWSUSクライアントを特定できます。エラーの発生を確認したら、そのPCを調査して、エラーの原因を取り除いた上で、WSUSからのWindows Updateを再実行してください。
岩手県花巻市在住。Microsoft MVP:Cloud and Datacenter Management(2019-2020)。SIer、IT出版社、中堅企業のシステム管理者を経て、フリーのテクニカルライターに。Microsoft製品、テクノロジーを中心に、IT雑誌、Webサイトへの記事の寄稿、ドキュメント作成、事例取材などを手掛ける。個人ブログは『山市良のえぬなんとかわーるど』。近著は『ITプロフェッショナル向けWindowsトラブル解決 コマンド&テクニック集』(日経BP社)。
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