NECは、NECベクトル型スーパーコンピュータ「SX-Aurora TSUBASA」で稼働させるアニーリングマシンを活用して、組み合わせ最適化問題の解決を目的とした共創サービスの提供を始める。アニーリングマシンに向けて、独自アルゴリズムを開発した。
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NECは2019年12月20日、組み合わせ最適化問題の解決を目的とした量子コンピューティングの共創サービスを2020年度第1四半期に提供開始すると発表した。NECのベクトル型スーパーコンピュータ「SX-Aurora TSUBASA」を利用したアニーリングマシンを活用する。
同社は、顧客との共同実証を通じた技術開発や人材育成を目的とした「量子コンピューティング推進室」を2020年1月に新設することも同日発表した。量子コンピューティングに関する活動を加速させるとしている。
NECが始める共創サービスでは、同社が新たに開発したシミュレーテッドアニーリング(SA)マシンを活用できる。このSAマシンは、既存のベクトルコンピュータ上で、アニーリング処理に向けて同社が独自に開発したアルゴリズムを組み込んだソフトウェアを稼働させるもので、超高速処理が可能だという。NECは、100地点を巡る巡回セールスマン問題を処理させたところ、従来のシミュレーテッドアニーリングアルゴリズムをIntel Xeonプロセッサで実行させた場合と比べて300倍以上高速に計算できることを確認したとしている。
NECが開発したアルゴリズムは、組み合わせ最適化問題に与えられた条件を満たす状態を集中的に探索できる。しかも、使用するハードウェアは既存のスーパーコンピュータなので、既存のミドルウェアを使ってビッグデータ解析やAI(人工知能)処理とも容易に連携できる。
NECによると、1999年に超伝導固体素子を用いた量子ビットの動作実証に世界で初めて成功。現在は、国立研究開発法人 新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)が進める新規事業「高効率・高速処理を可能とするAIチップ・次世代コンピューティングの技術開発/次世代コンピューティング技術の開発」で、4量子ビットからなる基本量子セルの動作を検証中だ。NECは4物理量子ビットを基本単位として全結合の論理量子ビットを構築する技術を採用しており、この動作検証が確立すると基本量子セルの繰り返し配置によって全結合での多ビット化につながる。同社は、2023年に全結合型量子アニーリングマシンの実用化を目指すとしている。
なおアニーリングとは、大きく分けて2つある量子コンピュータの実装方式の一つ。金属の焼なまし(アニーリング)によく似た処理を、量子を使って実行する方式。東京工業大学の教授を務める西森秀稔氏が1998年に提唱した理論で、組み合わせ最適化問題を解くのに適している。NECは、高性能な量子アニーリングマシンの実現を待つ間に、規模の大きな組み合わせ最適化問題に対応するシミュレーテッドアニーリングの研究開発も進めているとしている。
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