オープンソースのITインフラ構築自動化ツール群を事業とするHashiCorpは、創業当初から「リモートファースト」を続けてきた。創業者のミッチェル・ハシモト氏が、コミュニケーションの大切さとパーソナルヘルスについて、具体的な教訓を語った。
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HashiCorp創業者で共同CTO(最高技術責任者)のミッチェル・ハシモト氏は2020年4月7日、同社が開催したバーチャルイベント「HashiCorp VirtualDays Asia Pacific」で、創業当初からリモートワークを中心に組織運営をしてきた経験を語った。
オープンソースベースのITインフラ構築自動化ツール群を事業として展開するHashiCorpは、創業当初から、社員数900人以上の規模に成長した現在まで、社員の大部分が基本的に家から働く「リモートファースト」の企業であり続けてきたという(今でも800人以上が在宅勤務)。ハシモト氏はこうした組織運営の経験から、「リモートワークは、単に『家を職場にする』のとは根本的な違いがある」とし、具体的な教訓としてコミュニケーションの大切さとパーソナルヘルスの2つを挙げた。
「リモート環境だと、(社員同士をつなぐのは)コミュニケーションしかない。コミュニケーションの在り方をどう築くかによって企業文化が定義されることになる」
そこで最初の教訓は、「あえて冗長なコミュニケーションをとる」ということだという。テキストベースのコミュニケーションでは、相手の表情やしぐさ、言葉のイントネーションが分からない。コメントにどんな気持ちを込めているのかが想像できない。そこで相手には、自分の感情を含めて、できるだけ多くのことを伝えるように心がけるべきだという。
「非効率に感じるかもしれないが、あなたの意図を相手が分かれば、かえって効率的だ」
これを最も簡単に実現できるツールとして、絵文字はHashiCorp社内で不可欠な役割を果たしているとハシモト氏は話した。表情やしぐさを簡単に付け加えることができるからだという。
また、テキストメッセージ内の冗談や皮肉で人を傷つけたことがあるとし、誤解を招かないように、(冗談)などとカッコに入れて付け加えるようにしているという。
リモートワークでは、各人の勤務時間がより柔軟になり、さらに(米国内のみで事業をしていても)時差が関わってくる。すると、ZoomやSlackなどによるリアルタイムコミュニケーションには参加できない人が出てくる。
「私自身も(ソフトウェア)エンジニアで、プログラミングなど気分が乗ってくると、(コミュニケーションツールの)通知をオフにすることがある」
HashiCorpでは、議論のためにZoomやSlackを社内で日常的に使っているが、了解を得たり与えたりする作業には非同期的なコミュニケーションツールが必要だ。
そこで、エンジニアリングに関する全ての意思決定について、Googleドキュメントに内容を書き込み、これを電子メールで閲覧し、承認するワークフローを構築したという。HashiCorp社内では、話して周囲を納得させることよりも、書いたものの説得力のほうが重要だとしている。
「当社で成功するには、書くスキルが最も重要だ」
HashiCorpで重視するもう1つのスキルはオンラインチャットでのコミュニケーション能力。これを試すため、人を雇う際には「“Okay”“Okay.”“Okay…”の違いが分かるか」という質問をよく投げかけるという。
“Okay”はシンプルな同意で、“Okay.”は怒っているかもしれず、“Okay…”はためらいを表している。こうした違いが分からないのは、自社の公用語を読む能力がないに等しいとハシモト氏は話した。この違いが分からないからといって雇わないわけではないが、コミュニケーションの仕方と人の気持ちとの関係を理解することは不可欠。ハシモト氏はこれを「チャットリテラシー」と呼び、入社後できるだけ早く教えるようにしているという。
ハシモト氏が指摘した、リモートワークを成功させるもう1つのポイントは、在宅勤務をする社員の心身の健康。
同氏はまず、同じ家の中であっても、仕事とプライベートをはっきり区別することを勧める。
可能な限り、ベッドルームに机を持ち込んで働くことは避けるべきだという。「ベッドルームは休息するための場所。一日中ベッドを見ながら働くのはとても難しい」(ハシモト氏)。
また、同居家族がいる人たちは、仕事時間中、仕事時間外にお互いに期待すべきことを話し合い、明確に合意しておく必要がある。
「当社の社員の多くは、『仕事部屋のドアが閉まっていたら、お母さん(お父さん)は働いているのだから邪魔をしてはいけない』と子供をしつけている。こうしたちょっとしたことが、長期的にはとても大切だ」
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