Google Cloudが、2018年7月に開催したカンファレンスGoogle Cloud Next ‘18で「Contact Center AI」を披露した。顧客からの電話に、AIエージェントが人間に近い自然な会話で対応、オペレーターに引き継いだ後も、文脈から自動的に情報を表示して支援する。
Google Cloudが、2018年7月に開催したカンファレンスGoogle Cloud Next ‘18で「Contact Center AI」を披露した。既にアルファ版の提供を開始したといい、同社は今後、ソリューションとして展開していく。
Googleは2018年5月に開催したGoogle I/Oで、Google Assistantが人間に代わり、レストランなどに電話をかけて予約をとる「duplex」という機能を紹介した。今回のContact Center AIは、これと同じ技術を用いながら、人からの問い合わせなどの電話を受け付けて、「電話が通じない」「長時間待たされる」といった顧客のフラストレーションを解消する一方、コールセンターにおけるオペレーターの負担を軽減する役割を果たす。
電子商取引のeBay、コールセンター技術企業Genesys、Google Cloudが協力して構築したプロトタイプでは、次のようなシナリオに対応しているという。
eBayでランニングシューズを購入した顧客が、返品のために電話をかける。すると次のような会話が始まる。
AIエージェント (発信電話番号から顧客名を取得して)こんにちは、マーラさん。私は自動エージェントです。6月25日に6インチサイズの白いPamarcaブランドのランニングシューズをお届けしたようです。この注文についてのお問い合わせでしょうか?
顧客 ええ、その通り。
AIエージェント 分かりました。どういたしましょうか。
顧客 残念だけれどサイズが合わないので、返品したいと思います。
AIエージェント お助けできますよ。返品手続きを開始します。手続きの詳細を記述した電子メールが届くはずです。
顧客 よかった。ありがとう。
AIエージェント では、お客さまに合った靴を見つけるために、eBayのファッションエキスパートにおつなぎしましょうか?
顧客:ええ。助かるわ。
ここでAIエージェントは、コールセンターサービスに引き継ぐ。Genesysのコールルーティング技術を活用し、顧客のニーズにマッチした専門知識を持つ最適なオペレーターを選び、電話をつなぐ。同時に、前回の注文内容や、AIエージェントと顧客との会話の記録が、オペレーターの端末画面に示される。情報が引き継がれているため、顧客はオペレーターに最初から説明し直す必要がない。
オペレーターと顧客との会話も、リアルタイムに記録され、システムはこれらの情報を総合して、会話の文脈を把握。その過程で、顧客が靴をテニスにも使いたかったが、前回はランニングシューズを買ってしまったことが分かる。
すると、会話の文脈に基づいて、テニスシューズの選び方ガイドが、オペレーター端末の画面に表示される。ガイドに基づくやり取りで、大まかにシューズが絞り込まれると、エペレーター端末にオンラインストアの商品検索画面が表示される。オペレーターはこれに基づき、顧客と相談しながら、商品を絞り込む。
オペレーター 今、eBayを検索して、6インチサイズの女性用ハードコート用テニスシューズのリストができました。SMSで送りましょうか? それとも電子メールにしますか?
顧客 SMSで頼むわ。
オペレーター 承知しました。eBayをお選びいただき、ありがとうございました。
Contact Center AIでは、インテリジェンスを高めたチャットボットが、顧客との自然な会話を通じ、定型化しやすいプロセスについては自己完結できるようにしている。また、オペレーターに引き継いだ後も、機械学習/AIを生かした支援を行う。Contact Center AIのもう1つのポイントは、システムを顧客ごとに一から作り込むのではなく、会話フロー設計ツール「Dialogflow」などを通じたカスタマイズによって構築できるようにしていることにある。
これを紹介したGoogle Cloudチーフサイエンティストのフェイフェイ・リー(Fei-Fei Li)氏は、「Googleは、人間本位のAIを追求していく」とし、Contact Center AIにおいても人間を代替するのではなく、逆に人間が価値を発揮できる仕事に集中できるよう支援することが最大のテーマだと話した。Google Cloudは今後、同様な考え方に基づき、さまざまな産業に特化したAIソリューションを提供していくという。
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