NTTコミュニケーションズとPwCコンサルティングは製造業の設計、調達関連業務の効率化を図るデジタルマッチングプラットフォームの商用化を目指し、2020年7月から共同で実証実験を開始する。
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NTTコミュニケーションズは2020年4月27日、PwCコンサルティングと、製造業の設計、調達関連業務の効率化を図る「デジタルマッチングプラットフォーム」の商用化を目指して協業することを発表した。
同日開かれたメディア向け説明会で、NTTコミュニケーションズ スマートファクトリー推進室長の赤堀英明氏は、日本の製造業を取り巻く環境について、次のように語った。
「日本の製造業を取り巻く環境は急速に変化しており、第四次産業革命の進展、グローバル化が進む一方で高まる保護主義の動きなど、変化に対応しながらのかじ取りが求められている」(赤堀氏)
赤堀氏は、製造業の現場では限られた人員で従来以上の成果を出せという要請が強まる一方で、生産性を阻害する複数の課題があると指摘する。
両社が製造業の有識者に実施したヒアリングによると、発注側のメーカー調達担当者からは「相見積もりをするのに時間がかかっている」、受注側の加工業者からは「取引先が固定化しているため、稼働率を平準化しづらく、安定的な事業運営が困難」、発注側のメーカー設計担当者からは「3D図面では表現できない情報があり、設計担当者は2D図面も作製して手間がかかっている」などの声が挙がったという。
「設計調達の課題解決を図るため、受注側と発注側をつなげる場、そしてデータ活用によるDX(デジタルトランスフォーメーション)の推進を提供価値として、デジタルマッチングプラットフォームを構想した」(赤堀氏)
同プラットフォームはNTTコミュニケーションズの技術と、PwCコンサルティングの戦略、ノウハウを取り入れ、設計調達業務の課題解決を支援するという。
PwCコンサルティングが持つノウハウについて、ディレクターの三山功氏は次のように語った。
「内閣府が設立した『ムーンショット型研究開発制度』に代表されるような、非連続な変革をもたらす研究開発の機運が高まる中、2020年1月に『Future Design Lab』という未来創造型のコンサルティングに特化した組織を設立し、その配下に未来ものづくりワーキンググループを組織し、ものづくり分野に注力している」(三山氏)
未来ものづくりワーキンググループは、世界、未来目線の政策提言支援や場内とその周辺も含めた「デジタルものづくりバリューチェーンデザイン」など6つのサービスを有しているという。
デジタルマッチングプラットフォームはどのような機能を提供していくのか。三山氏は「端的に言うと、3次元設計データによる直接材の調達にフォーカスした、受発注双方をつなぐマーケットプレースと設計、調達業務の効率化を実現するサービスにより、日本の製造業が抱える課題の突破口となるDXを推し進めるもの」と紹介した。
受注側のメーカーに対しては、設計、調達業務の効率化を、受注側のサプライヤーに対しては、見積もり、受注業務の効率化を進める機能を提供するという。
提供する機能は大きく分けて以下の6つだ。
組図(複数の部品が組になった図面)から部品単位に自動展開した上で、発注部品、製造リソースのマッチングや入札形式により発注側とサプライヤーをつなぐことで、発注側の見積もり依頼、選定、受注側の見積もり回答における業務を効率化する
見積もり対象部品の3D設計図をAI(人工知能)で解析し、過去の見積もり依頼、発注を受けた類似部品の履歴を検索し、サプライヤーの見積もり回答業務を効率化する
過去の設計データを基に、部品形状ごとにカテゴライズされた「データカタログ」を生成し、作成中の設計データとの重複を検知する
製造に必要な詳細な仕様、補足情報を3D設計図とともにクラウドで一元的に管理することで、設計者の2D/3D図面や書類の作成業務を効率化する
発注部品の3D設計図をAI解析し同一部品のグループを自動生成することで、同一部品を異なるサプライヤーへ発注することを抑制する
これら6つの機能を提供する以外にも、今後利用企業のニーズに合わせて連携機能を随時拡充する予定だ。現在拡充を予定している機能として、「IIoT(Industrial Internet of Things)との連携」「製造コミュニケーション機能」を想定しているという。
提供形態としては、6つの機能全てをパッケージ化し導入することも、他の業界協調型プラットフォームや他企業のプラットフォーム/既存システムとの連携にも対応し、機能の一部分のみの導入も可能になるという。
デジタルマッチングプラットフォームは2020年7月から共同で実証実験を開始し、2020年度中の商用化を目指す。商用化する際のビジネスモデルもそこで検討するとしており、現在実証実験の開始に向けた議論を進めているという。
「既に幾つかあるマッチングプラットフォームは認識している。もともとわれわれは製造業ではないので、それらのマッチングプラットフォームと協調していく世界観を描いていきたい」(赤堀氏)
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