Red Hatはこれまで、サーバ仮想化レイヤーでは「Red Hat OpenStack Platform」「Red Hat Virtualization」の2製品を提供してきた。だが、いずれも一般企業のオンプレミスにおけるサーバ仮想化基盤としては浸透していない。OpenShiftも、一般企業では多くの場合、vSphere上で動いている。
Red Hatが新たに発表したOpenShift Virtualizationは、KubeVirtというOSSプロジェクトに基づくOpenShiftの機能で、KubernetesからKVM上の仮想マシンの作成、起動、停止などの運用管理ができる。ストレージ、ネットワークの運用も統一できる。つまり、OpenShiftという単一の基盤ツールで、サーバ仮想化とコンテナを統合的に運用できることになる。
これは、コンテナと仮想マシンが混在するアプリケーションの開発と運用を容易にするというメリットにつながる。
例えば「新しいアプリケーションをコンテナベースで開発したい、だが仮想マシン上の既存アプリケーション/データベースと組み合わせたい」という場合、既存アプリケーションをVMware ESXiハイパーバイザー上で稼働しているのであれば、これをKVMに移行し、ストレージもKubernetesによる利用管理に移行すればいいという。
こうして、既存アプリケーションをまず仮想マシンのままでOpenShiftに移行し、さらに優先順位をつけてコンテナ化を進めれば、OpenShiftでオンプレミスのITインフラ基盤を統合できることになり、サーバ仮想化製品へライセンス料を払う必要がなくなると、Red Hatは説明した。
顧客に対し、vSphereからKVMへの移行を促すのが容易ではないことは、過去の経験からRed Hatとしても承知の上だろう。同社は、「クラウド、そしてコンテナに将来があると考えるならば、サーバ仮想化からコンテナを考えるのではなく、コンテナを中核としてITインフラ戦略を描くべきだ」と訴えようとしている。
VMwareは2020年3月、「VMware Tanzu」製品群を正式発表した。2020年5月中に提供開始予定の「VMware Cloud Foundation with Tanzu」では、vSphereの管理ツールであるvCenterで、ESXi上の仮想マシンとコンテナを統合運用できるようになる。
すなわち、VMwareは、企業のサーバ仮想化基盤におけるシェアを基盤に、注目度が急上昇するKubernetesへのニーズを取り込もうとしている。一方Red Hatは、Kubernetesの勢いと、Kubernetesを採用した企業向けコンテナ基盤における実績を基に、サーバ仮想化を取り込もうとしている。
Red HatはOpenShiftで、主要パブリッククラウド事業者と比べても、企業向けのアプリケーション開発・運用基盤として、より充実した包括的な機能を備えていると説明した。
Red HatのOpenShift担当者は、VMware Tanzuとの比較に関する質問に対し、主に実績と機能、エコシステムの広がりを取り上げて自社の優位性を訴えた。同社が過去5年にわたってKubernetesに取り組んできており、約1700の顧客がいること、主要パブリッククラウドの全てで既に稼働していること、そしてOpenShift上には多数のパートナーによるアプリケーションサービスのエコシステムが既に構築されていることを強調した。
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