もう少し先行きの見通しが立てやすいときだったら、「そんな理不尽な会社、辞めてしまえ」というのも、一つの選択肢だとは思います。けれども、先行きが不透明で、この先の経済がどうなるか見えない今、そのようなアドバイスは乱暴すぎて、私にはできません。
だからといって、「仕方がない」と全てを受け入れなければならないのも、また、悔しい。
「その場合は、こうすればいいよ」という明確な答えは分かりません。でも、この理不尽な思いを次に生かす戦略なら、あるのではないかと思うのです。
1つ目の戦略は、「思い込みを意識化する」です。「○○して当然」「○○するのが正しい」といった、無意識の思い込みによる思考停止を防ぐことができます。
例えば、冒頭にお話しした「周りの同僚はテレワークなのに、自分だけできない」問題。本当は、新型コロナウイルスも怖いし、テレワークで働いていいのなら速攻でテレワークに移行したい。でも、理不尽だとは思いつつも「仕方がない」と受け入れてしまう場合、何かしらの思い込みがあるような気がします。
それは、「顧客の言うことに逆らってはいけない」かもしれません。あるいは、「そんなことを上司に言ったら怒られる」という恐れかもしれません。「そんなことをしたって、どうにもならない」という諦めかもしれません。そのような思い込みは、私たちに「言ったって仕方がない」「理不尽だけど、受け入れよう」のように思わせ、思考を停止させます。
そこで、もう一歩踏み込んで、「なぜ?」を考えてみるのはどうでしょうか。
このような状況なのに「なぜ、客先はテレワークに移行しないのだろう?」「なぜ、自社の上司は顧客と交渉してくれないのだろう?」「なぜ、派遣社員だけ出社しなければならないのだろう?」「情報セキュリティって何だろう?」「全部が全部、持ち出しちゃダメなのかな」のように。
もちろん、それを言葉にするのは、できるときとできないときがあるとは思いますが、大切なのは「思考を止めない」ことです。そして、もし質問できそうなら、してみるといいでしょう。
2つ目の戦略は、「最悪の状況を考える」です。現在より最悪の状況を考えることで、「本当に大切なのは何か?」に気付き、思い込みによる思考停止から抜け出すきっかけができます。
例えば、「周りの同僚はテレワークなのに、自分だけできない」問題の場合、「顧客や上司に言ったところで、どうせ言うことを聞いてもらえない」といった、無意識の思い込みがあるはずです。
そこで、現在よりも、さらに最悪の状況を考えてみます。「新型コロナウイルスに感染して生死をさまよう」や「家族に感染させてしまう」のように。あるいは、経済に目を向けるのもいいかもしれません。「経済の悪化がさらに深刻化し、顧客からの契約が打ち切られる」「自社の経営も危うくなり、退職を打診される」など。
このように最悪の状況を考えてみると、「大切なのは、顧客や上司の顔色ではないな」「言いなりになっているだけではだめだな」と、思い込みによる思考停止から抜け出しやすくなります。
3つ目は、「最も大切なことは何かを考えてみる」です。顧客や上司の顔色や、言いなりになっているのが問題だと気付いたら、「じゃあ、自分にとって、最も大切なものは何か」を考えてみます。
例えば、「周りの同僚はテレワークなのに、自分だけできない」問題の場合、先の戦略1、2によって、最悪の状況は意識し始めているはずです。さらに、もしもそうなった場合、「何を失うか」を考えてみます。
それは、「家族」のような大切な“存在”かもしれませんし、「本当にやりたいことをやる」のような“理想”かもしれません。あるいは、「自分に正直にいる」のような“在り方”かもしれません。さまざまな「最も大切なこと」があるはずです。
ちなみに、「命」も大切ですが、命に勝るものはないことと、全ては命に包含されてしまうので、「命」よりももう少し具体的な内容を考えてみるといいでしょう。
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