Open RAN Policy Coalitionが掲げるミッションステートメントは次の通り。
Open RAN Policy Coalitionは、無線アクセスネットワーク(RAN)におけるオープンで相互運用性の確保されたソリューションについて、その採用につながる政策を促進するために結成された。これによりイノベーションを醸成し、競争を促進し、5Gを含む高度な無線技術のサプライチェーン拡張を図る。
Open RAN Policy Coalitionでは、(米国の)通信政策に関わるRAN関連の調査や提言を行うことになっている。米国企業が中心ではあるが、メンバーリストにはNTT、NEC、楽天モバイルの名もある。一方、中国企業のロゴは全く見られない。中国企業が参加していない点からは、「もしや米国企業中心の『オープン』を目指すのではないか」という疑念が生まれなくはない。一方、米国政府への働きかけで不利になることを防ぐため、中国企業をあえて参加させていないという見方もできる。
少なくとも現在のところ、規格や仕様についてはO-RAN Allianceや、Facebookなどが立ち上げたTelecom Infra Project(TIP)をはじめとする組織に任せ、米国政府への提言に注力していることは確かだ。
同グループは2020年6月26日(米国時間)、米国商務省電気通信情報局(National Telecommunications and Information Administration:NTIA)からの要請に応じ、5G安全保障政策に関する提言を行った。この提言では、オープンなインタフェースの採用を促進し、多様な信頼できるサプライヤーや通信事業者のグローバルなエコシステムを築き、5Gや将来の無線ネットワークの進化において、米国および同盟国の技術的なリーダーシップを構築・維持することが、安全保障に寄与するとしている。
RANは、通信をめぐる国レベルの争いにおける重要な焦点になっている。そして通信業界では、「RAN製品間(さらに通信事業者向けインフラ製品全般)のインタフェースのオープン化およびモノリシックな従来型の設備の機能分解が、特定のベンダーへの依存リスクを低減すると共に通信事業者にとっての選択肢を広げ、通信安全保障につながる」との考え方が勢いを増している。
この文脈で考えると、今回のNECとの共同開発および出資の発表は、NTTにとっての「通信安全保障」施策という要素が大きいのではないか。「安全保障」という言葉が誤解を招きやすいならば、技術/機器調達リスクの低減が、大きな目的なのではないか。
現在の垂直統合的な通信インフラ製品業界の現状と、政治的な状況が続く限り、通信設備調達における選択肢は限定的なままだ。具体的には、Huaweiを選べないなら、選択肢がEricssonかNokiaしかない状況が続いてしまう。すると、オープンなインタフェースに基づく関連機能要素のエコシステムが成長することは、NTTのような事業者にとって、「あればいいこと」ではなく「喫緊(きっきん)の課題」だということになる。
そこで、サプライヤーとしてオープンなRANに力を入れざるを得ないNECと組むことで、エコシステムの確立を少しでも急ぎたいということではないか。また、特にハードウェアが絡む部分は、(他を排除するわけではなく)信頼できる安定した、身近な供給元を、確かな選択肢として確保しておきたいということではないか。
記者会見でNTTの澤田社長は、安全保障のような言葉は使わなかった。だが、二社の提携につながる背景として、「『グローバリズム』から『グローカリズム』への変化が進んでいる。信頼できるサプライチェーンを築く必要性が増している」と述べた。
そして、RANの延長線上にある「安全保障」の対象として、フォトニクスネットワークや宇宙通信といった技術を位置付ければ、NTTとNECの提携がこれらにわたる中長期的なものとされていることもうなずける。
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