Windows 10 May 2020 Update(バージョン2004)の目玉機能の1つであったLinux互換環境の「WSL 2」が、Windows 10 May 2019 Update(バージョン1903)/November 2019 Update(1909)でも動作可能となった。その実行方法を紹介する。
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「Windows 10」上でLinuxの実行環境を構築可能とする「Windows Subsystem for Linux(WSL)」は、Windows 10 Fall Creators Update(バージョン1709)から正式版が利用可能となっている。その後、May 2020 Update(バージョン2004)では、Linuxとの互換性を高めた「WSL 2」が提供された(WSL 2については、Windows 10 The Latest「前バージョンから大幅に性能向上した新Linux環境『WSL 2』の実力を探る」を参照のこと)。
WSL 2は、May 2020 Updateの目玉機能として提供されたものだが、2020年8月20日になって、過去のバージョンとなるWindows 10 May 2019 Update(バージョン1903)とNovember 2019 Update(バージョン1909)の64bit版(ARM64版を除く)に対しても提供が開始された。
新しい機能を使う場合は、機能アップデートを適用する、というのがこれまでの流れであった。しかし、WSL 2については、「より多くのWindowsユーザーがWSL 2を利用できるようにすること」から、過去のバージョンへの提供(バックポート)を行うことにしたということだ(Windows Command Line「WSL 2 Support is coming to Windows 10 Versions 1903 and 1909」[英語]参照のこと)。
May 2019 Update(バージョン1903)とNovember 2019 Update(バージョン1909)でWSL 2を利用する方法を紹介しよう。
WSL 2を利用するには、事前にWSL 1(従来のWSLを明確にするため「WSL 1」と記す)をインストールしておく必要がある。そのため、既にWSL 1をインストールしている場合は、この手順をスキップしてよい。
[コントロールパネル]の[プログラムと機能]を開き、[プログラムと機能]画面の左ペインで[Windowsの機能の有効化または無効化]を選択する([コントロールパネル]の開き方は、Tech TIPS「Windows 10で素早くコントロールパネルを開く方法」参照のこと)。
[Windowsの機能]ダイアログが開くので、「Windows Subsystem for Linux」にチェックを入れる(後述の累積的更新プログラムが適用済みの場合は、「Linux用Windowsサブシステム」)。WSL 1をインストール後、再起動が求められるので、再起動を行う。
WSL 1が有効化されたら、Microsoft Storeアプリを起動し、検索ボックスに「WSL」と入力し、WSL 1用のLinuxディストリビューションをインストールする。Linuxディストリビューションは好みのものを選択すればよい。Linuxディストリビューションがインストールできたら、一度、起動して「ユーザー名」や「パスワード」などのセットアップを完了しておくこと(詳細は「【WSL入門】第1回 Windows 10標準Linux環境WSLを始めよう」を参照)。このLinuxディストリビューションをWSL 2用に変換することになる。
May 2019 Update(バージョン1903)とNovember 2019 Update(バージョン1909)の場合、事前にオプションの累積更新プログラム「KB4566116」を適用する必要がある(2020年9月の月例更新プログラムに含まれる予定)。PCの性能や環境などにもよるが、適用には40分ほどかかり、適用完了には再起動が必要になる。
「KB4566116」の累積更新プログラムを適用すると、ビルド番号の小数点以下が「1049」以上になる。WSL 2に対応可能かどうかは、ビルド番号を確認することで判断できる。
またWSL 2では、仮想マシン環境で実装されるため、プロセッサの「仮想マシン支援機能」(Intel VTもしくはAMD-V)が必要になる。PCによっては、出荷時にこれらをBIOS設定(UEFI設定)で無効にしてある場合があるため、インストール前に有効にしておく必要がある。Tech TIPS「Windows 10でBIOS/UEFIセットアップ画面を確実に開く方法」を参考に、BIOS/UEFI画面を開き、Intel VTもしくはAMD-Vを有効にしておく。
再び、[コントロールパネル]の[プログラムと機能]を開き、[プログラムと機能]画面の左ペインで[Windowsの機能の有効化または無効化]を選択する。開いた[Windowsの機能]ダイアログの一番下にある「仮想マシンプラットフォーム」にチェックを入れて、仮想マシン機能を有効にする(「仮想マシンプラットフォーム」は、Windows 10 Homeでもサポートされている)。再起動を行って、機能を有効にする。
これで下準備ができたので、WSL 1用にインストールしたLinuxディストリビューションをWSL 2で実行できるように変換する。いったんWSL 2用に変換すると、WSL 1で実行するには、WSL 1で実行できるように再変換が必要になるので注意してほしい。
LinuxディストリビューションのWSL 2への変換は、コマンドプロンプトかPowerShellを開き、コマンドを実行する。変換にあたってLinuxディストリビューション名が必要になるので、以下のコマンドでLinuxディストリビューション名を調べる。
wsl.exe -l -v
名前だけであれば、「-l」オプションだけでいいが、「-v」を付けることでLinuxディストリビューションがWSL 1対応なのかWSL 2対応なのかといったバージョンも分かるようになる。このコマンドラインで表示されたLinuxディストリビューション名を以下のコマンドで指定して変換を行う。最後の「2」がWSL 2への変換を示す。WSL 2対応のLinuxディストリビューションを、WSL 1に戻したい場合は「1」を指定する。
wsl.exe --set-version <ディストリビューション名> 2
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