今回の漫画では、レビューの投稿記録を題材に、なぜ「氏名」や「住所」ではなく、投稿記録が個人情報に該当するのかを紹介しました。
ということです。
氏名はあくまでも、ある個人に関する情報が個人情報に該当するかどうかの要件であると考える方が正確です。
確かにさまざまな文献で、「氏名は単体で個人情報に該当する」とされています。
しかしそれは、氏名の他に何も含まれない個人に関する情報であっても、当然ながら「その情報に含まれる氏名により特定の個人を識別できるため、個人情報に該当する」という、かなり特殊なケースであると理解すると分かりやすいでしょう。
ちなみに、同姓同名が存在するなら個人情報に該当しないということはありません。以下の文献では、「同姓同名の可能性もありますが、氏名のみであっても、社会通念上、特定の個人を識別することができるものと考えられますので、個人情報に該当すると考えられます」とされています。
それでは、個人に関する情報とは何でしょうか。
個人情報委員会の「個人情報の保護に関する法律についてのガイドライン(通則編)」では、個人に関する情報を以下のように説明しています。
氏名、住所、性別、生年月日、顔画像等個人を識別する情報に限られず、個人の身体、財産、職種、肩書等の属性に関して、事実、判断、評価を表す全ての情報であり、評価情報、公刊物等によって公にされている情報や、映像、音声による情報も含まれ、暗号化等によって秘匿化されているかどうかを問わない。
引用元:個人情報の保護に関する法律についてのガイドライン(通則編)-個人情報委員会(2020/08/21閲覧)
要約します。
一見、「氏名、住所、性別、生年月日、顔画像など個人を識別する情報」と「個人の身体、財産、職種、肩書などの属性」の部分だけが個人情報だ、とも見えます。しかし、「情報のうち個人の属性に関する部分」という書き方になっていないことから、その情報自体が「個人の属性に関して事実、判断、評価を表す」ものかどうかという観点で考えるのが妥当です。
この観点で、漫画の事例におけるレビュー投稿、つまり個人の購買履歴や、個人の感想というのは、まさに個人に関する情報に該当するということになります。
とはいえ、ガイドラインはあくまでも指針に過ぎません。
法的に拘束するものではありませんから、ガイドラインの文言について「辞書で言葉の定義を調べた結果、厳密にはガイドラインの定義には当てはまらない」という揚げ足を取るような解釈をしても、裁判で負けることもあります。
抜け道を探すよりも、個人に関する情報は、文字通り個人に関係する情報全てであると考える方が無難な解釈といえるでしょう。
しかし、こうした細かい規定を知る前に、もっと大切なことがあります。第26列車(2020年9月3日掲載)は、まず法の趣旨を理解しようという点を述べます。
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フリーイラストレーター。アニメ「こうしす!」ではキャラクターデザイン・キャラ作画担当をしています。
アニメ「こうしす!」監督、脚本。情報処理安全確保支援士。プログラマーの本業の傍ら、セキュリティ普及啓発活動を行う。
「こうしす!社内SE 祝園アカネの情報セキュリティ事件簿」(翔泳社)2020年2月発売
「物語の力でIT、セキュリティをもっと面白く」をモットーに、作品制作を行っています。
オープンソースなアニメを作ろうというプロジェクト。現在はアニメ「こうしす!」を制作中。
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