NECはAIを使ってコンクリート電柱のひび割れの有無を判定することに成功した。既存の通信用光ファイバーを振動センサーにする「光ファイバーセンシング技術」で関連するデータを遠隔から取得できる。
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NECは2020年9月1日、電力中央研究所と協力してAI(人工知能)技術を応用したコンクリート電柱(以下、電柱)のひび割れの有無を判定する実証実験を実施したと発表した。
現在、国内の電力会社が保有する電柱は2200万本以上。これらの経年劣化の状態や、災害時の被害状況把握の効率化が課題になっている。NECは実証実験によって、こうした電柱のひび割れの有無を遠隔で判定することに成功した。この実証実験で用いたのは、光ファイバーの振動波形を遠隔から測定可能とする「光ファイバーセンシング技術」と「振動データ解析AI」を組み合わせた分析システム。
NECの光ファイバーセンシング技術は、光ファイバーケーブルの片端から光パルスを送信し、微弱な戻り光(後方散乱光)の位相の変化を検出することで、経路上に生じた振動などの状態変化を測定する。実証実験では、電柱設置地点を事前に特定しておき、各電柱の振動波形を継続的に取得した。
光ファイバーから得られる振動は、周辺音響や交通振動などを含んでいるため、試験対象の電柱群の振動特性を事前に調査して、電柱に起因する振動成分を抽出。その後、NECの「RAPID機械学習」に振動波形と電柱のひび割れとの関係性を学習させた。
電力中央研究所の赤城試験センター構内にある電柱を対象に、ひび割れを遠隔判定したところ、約75%の精度で判定できたとしている。NECは今後、対象をとする電柱の構造や材質を広げ、判定精度の向上に取り組む予定だ。
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