企業がクラウド推進組織として社内に設置する「クラウドセンターオブエクセレンス」(CCOE)。どのような活動をすべきなのか。Gartnerでクラウドを担当するアナリストで、ディスティングイッシュト バイスプレジデントのリディア・レオン(Lydia Leong)氏が解説する。
ガートナーの米国本社発のオフィシャルサイト「Smarter with Gartner」と、ガートナー アナリストらのブログサイト「Gartner Blog Network」から、@IT編集部が独自の視点で“読むべき記事”をピックアップして翻訳。グローバルのITトレンドを先取りし「今、何が起きているのか、起きようとしているのか」を展望する。
どのような組織体制がクラウド導入を成功させるのに役立つのか。私は日々、企業や公共機関とこのトピックについて話し合っている。クラウド導入に成功している組織もあれば、苦労している組織もある。後発で導入した組織は、最初からうまくやりたいと考える。
私は、2014年のカンファレンスでの講演から、当時は業界に新たに登場してきたベストプラクティスだった「クラウドセンターオブエクセレンス」(CCOE)の考え方を取り上げ始めた。2019年初めには、CCOEを構築する方法についてのアドバイスを満載した調査レポートを発表し、その後1年半にわたって多くの時間を費やし、顧客に説明してきた。このたびこのレポートを改訂し、「How to Build a Cloud Center of Excellence」(第1部:組織設計、第2部:初年度のタスク)という2部構成の長編にまとめた。
基本的に、GartnerのCCOEへのアプローチは、エンタープライズアーキテクチャ(EA)の原則に加え、革新的な技術の導入によってビジネスを成功させる上でのEAの役割に根差している。Gartnerは、ガバナンス(コスト管理、リスク管理など)、仲介(ソリューションアーキテクチャ、ベンダー管理)、コミュニティー(組織的なコラボレーション、知識の共有、自然発生的に生まれたベストプラクティスを推進)を3本柱に据えたCCOEを提唱している。
CCOEは、コントロールよりもガバナンスに注力することが極めて重要だ。このことに注意する必要がある。コントロールにこだわる組織は、効果的なセルフサービスの実現、つまり、クラウドの重要なメリット――例えば、アジリティや柔軟性、イノベーションの活用といったメリットを十分に生かせる可能性が低い。実際、クラウド利用を厳しくコントロールしようとするIT部門は、しばしばビジネス部門の抵抗に直面し、結果としてCIO(最高情報責任者)とIT部門は社内での影響力が低下してしまう。
またGartnerは、CCOEがシングルベンダーアプローチを取ることは、ほとんどの顧客にとって長期的に適切な解決策ではないと考えている。このことも重要だ。現在、シングルベンダーアプローチは、ハイパースケーラー(大規模データセンターを運営する巨大なクラウドプロバイダー)の専門サービス部門が積極的に推奨している。だが、CCOEは理想的には、ベンダー中立であるとともに、マルチクラウド環境でIaaS、PaaS、SaaSをカバーし、ビジネス課題の最適な解決策を見いだす(それはクラウドにあるかもしれないし、クラウド以外の場所にあるかもしれない)ことに重点を置かなければならない。
さらにCCOEは、IaaS/PaaSのオペレーションを担う組織ではない。クラウドのエンジニアリング/オペレーションに関する一連の事項は、別の組織が統括する必要がある。
出典:Refining the Cloud Center of Excellence(Gartner Blog Network)
VP Distinguished Analyst
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