Kubernetes創始者の1人、ジョー・ベダ氏に聞いた「Kubernetesとエンタープライズビジネスの関係」VMworld 2020に見るVMwareの大きな変化(2)(1/2 ページ)

Kubernetesプロジェクトの創始者の1人として知られるジョー・ベダ氏は今、オープンソースプロジェクトと企業向けビジネスの関係をどう考えているのか。また、Kubernetes製品としての差別化を、どう進めているのか。同氏に直接聞いた。

» 2020年10月12日 05時00分 公開
[三木泉@IT]

この記事は会員限定です。会員登録(無料)すると全てご覧いただけます。

 GoogleでKubernetesのオープンソースプロジェクトを立ち上げた3人のうちの1人として知られるジョー・ベダ(Joe Beda)氏は、その後企業におけるKubernetesの利用を促進する製品/サービスの企業であるHeptioを立ち上げ、同社の買収に伴ってVMwareに移籍、現在プリンシパルエンジニアとして関わっている。

 こうした経歴を持つベダ氏は、オープンソースプロジェクトと企業向けビジネスの関係をどう考えているのか。また、Kubernetes製品としての差別化を、どう進めているのか。同氏に直接聞いた。

オープンソースをベースに企業向けビジネスをやるということ

――CNCF(Cloud Native Computing Foundation)のイベントに参加して思うのは。「Kubernetesとエンタープライズ製品ベンダーは矛盾する」という印象を持っている参加者が多いということだ。Kubernetesで企業向けのビジネスをしてきたあなたは、コミュニティーとエンタープライズビジネスの関係を、今どう考えているか。

VMwareプリンシパルエンジニア、ジョー・ベダ氏

 コミュニティーはさまざまな立場の人々が結集し、お互いに合意できることや方法を見いだし、一緒に進歩するために作られる。Kubernetesやクラウドネイティブ関連のコミュニティーは、それぞれの技術に情熱を持つ小さな独立系企業や個人が、GoogleやRed Hat、私たちなどの大きな企業と一緒になって、驚くべきことを成し遂げられるという事実を証明している。どんな企業や個人でも、単独では実現できないことだ。

 だからこそ、一方でコミュニティーの参加者の間では、何をゴールとすべきかについて、ある種の緊張が見られることがある。それでも全ての関係者は、オープンな場で議論し、解決策を見いだしていくということに同意している。

 過去数年でKubernetesのガバナンスモデルは鍛え上げられ、あらゆる人々が協力し合える環境を生み出した。2020年9月のKubeConでは、私を含めてKubernetes運営委員会の初期メンバー全員の退任が完了した。現在Kubernetesの活動をガイドしているメンバーは、後でコミュニティーに加わってきた人ばかりだ。こうした事実が、コミュニティーの力の源泉になっている。そして私は、(旧Heptioを含めた)VMwareが果たしている役割に誇りを持っている。

 Kubernetesでエンタープライズビジネスを築くことに関しては、バランスの問題だと考えている。オープンソース一般について言えることだが、まずそのオープンソースプロジェクト自体が多くの人々にとって有益なものでなければならない。

 一方で、エンタープライズならではのニーズに応えられるように、拡張的な価値を提供していかなければならない。私たちは顧客を理解し、オープンソースコミュニティー全体と連携して課題解決を推進することに努めている。

 1つの例として、Cluster APIを通じたクラスタライフサイクル管理への取り組みがある。こうした取り組みをした上で、オープンソースではない機能によってどう補完するかを考える必要がある。こうした補完機能が、エンタープライズに向けたビジネスを展開する上で、中核的な価値になり得る。多くの場合、補完機能はSaaSという形態を採る。

 当社のKubernetes製品群「Tanzu」における中核的な機能の1つに「Tanzu Mission Control」という管理サービスがあり、エンタープライズ特有のニーズに応える、ユニークな価値を提供している。この製品は、機能を迅速に顧客へ届けるため、SaaSとして提供している。

 このようにして、うまいバランスを見出せるのは楽しいことだ。

 まずコミュニティーをサポートしてその成長を支援し、誰もが参加できるよう、エコシステムの拡大を促せる。英語に、「上げ潮は全てのボートを押し上げる」という慣用句がある。誰もが恩恵を受けられるということだ。

 一方で私たちは、これを超えた部分で、自分たちがどのようにエンタープライズ顧客を助けられるか、あるべき姿についての明確な見解(opinionated view)を持ち込む必要がある。

企業の中には、Kubernetesにも興味がない開発者はいる

――では、「VMware vSphere」に関する興味を全く持たない開発チームに、Tanzu製品群をどう説明しているのか。

 それも非常にいい質問だ。その質問をさらに広げて、Kubernetesにも興味を持たない開発チームがたくさんあることを指摘したい。私たちが迎え入れたPivotalの人たちは、開発者が抱える問題に敏感だ。Spring Oneカンファレンスの資料を見れば、私たちが開発者たちとどれだけやり取りをし、開発者コミュニティーにおける問題を解決しようとしているかが分かるだろう。

 (企業の中には)自分のコードをどうにかして動かせればいい、どうするかは気にしたくないという開発者がいる。一方企業の側にも、そうした環境を自社の開発者に提供したいというニーズがある。重要なのは、複数の異なる立場の人々を結び付ける必要があるということだ。

       1|2 次のページへ

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

RSSについて

アイティメディアIDについて

メールマガジン登録

@ITのメールマガジンは、 もちろん、すべて無料です。ぜひメールマガジンをご購読ください。