エクイニクス・ジャパンの新社長、小川久仁子氏は、グローバルでEquinixが進める新たな展開について説明した。同社は単なるデータセンター事業者ではなくなろうとしているという。
エクイニクス・ジャパンは2020年10月19日、2020年5月にマネージング・ディレクターに就任した小川久仁子氏が、Equinixのグローバルでの「データセンター専業からの脱皮宣言」について説明した。
Equinixはもともと、純粋な意味での「データセンター事業者」ではない。ネットワークの相互接続サービスから始まった企業で、高速な接続を特徴とするデータセンター(コロケーション)サービスを展開してきた。例えば金融市場と直接に高速接続されたデータセンターで、金融情報サービスや関連組織がシステムを稼働できるメリットを提供してきた。最近では、複数のクラウドとネットワーク的な距離が近い同社のデータセンターで、企業が自社の制御の下にサーバやストレージを運用できることも訴求している。
「これまでEquinixは分かりやすさのために自社を『データセンター企業』と呼んできたが、今後は『デジタルインフラ企業』というコンセプトでやっていく」(小川氏)
その布石ともなる取り組みを同社は進めてきた。これまでは一般企業向けのデータセンターハイパースケーラー向けの大規模データセンター「xScale」の展開がそれだ。三大パブリッククラウドのほか、Oracle Cloud、Alibaba Cloud、ServiceNow、SAP、Dropboxなどのため、電源容量の大きいデータセンターを展開する。日本では東京で 2カ所、大阪で1カ所を予定しており、2020年中に東京の1カ所を開設する。
EquinixはxScaleのメリットとして、高速なネットワーク接続を挙げているが、これは入居するハイパースケーラーのみならず、同社の他のサービスを利用する一般企業のメリットにもつながることが想定できる。
デジタルインフラ企業のコンセプトに向けたより直接的な取り組みが「Equinix Metal」。物理サーバが数分で利用開始できるサービスで、コロケーションのように時間や手間をかけず、管理コンソールからの設定のみで任意台数のサーバを用意できる。
こうしたサービスは主要パブリッククラウドも提供しているが、これらと競合するものではないと小川氏は話す。新サービスで最大の特徴は、オンプレミスを含む複数のクラウドと直結する同社のネットワークサービスとの統合にあるからだ。
Equinix Metalのサーバは、単一のボートを通じ、ソフトウェアで様々な場所との安全な接続を設定し、変更もできる。このため、オンプレミスインフラの機動的な移行が図れるし、必要に応じた任意のクラウドとの高速接続も実現する。
小川氏によると、企業ではネットワーク関連スキル不足が、ますます深刻化する。そこでEquinixでは今後、Equinix Metalのようにネットワークなど複雑な設定をすることなくITリソースを活用できるサービスに力を入れていくという。さらに既存のデータセンターを含めた全てのサービスにまたがり、ソフトウェアでオーケストレーションできるようにしていくという。
「クリックだけであらゆる構成ができるようになる。データセンターは見えなくなり、オンプレミスのワークロードを短時間、低コストで移行してもらえる」(小川氏)
つまり、パブリッククラウドと競合するのではなく、これらの事業者と高速に接続しながらも独立した機動的なIT基盤を提供することが同社の狙いだ。
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