2021年3月、Windows 10標準のブラウザだったEdgeHTML版の「Microsoft Edge」のサポートが終了し、4月以降、サポート期間中の半期チャネル(SAC)のWindows 10から削除され、Chromium版の新しいMicrosoft Edgeに置き換わりました(まだインストールされていなかった場合)。新しいMicrosoft Edgeは、常に最新バージョンに更新され、アンインストールはできません。通常の方法ではその通りなのですが、実は、アンインストールできなくもありません。
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以下の連載記事では、「Microsoft Edge」安定版の最新バージョンに更新したところ、あるWebベースのアプリの一機能が「予期しないエラー」を多発するようになったと書きました。記事では、このような問題に素早く対処できるように、複数のモダンブラウザをクライアントで使用可能にしておくことをお勧めしました。
記事では、「システムの復元」またはバックアップからの復旧以外にMicrosoft Edgeのバージョンをロールバックする方法はないとも書きました。
本稿では、システムの復元やバックアップからの復旧に頼らない、Microsoft Edgeのバージョンのロールバックが成功したので紹介します。決して一般ユーザー向けの手順ではありません。企業が業務継続のために、緊急避難的、一時的にバージョンをロールバックしたいという場合の参考にしてください。
個人の環境の場合、ロールバックしてもMicrosoft Edgeの自動更新機能ですぐに問題のバージョンに更新されてしまいます。企業はMicrosoft Edgeの自動更新を止めることはできますが、その場合、新しいバージョンで修正済みのセキュリティ問題を放置することになります。
現在の「Windows 10」では、コントロールパネルの「プログラムと機能」→「プログラムのアンインストールまたは変更」から、Microsoft Edgeのインストール変更(修復)ができますが、アンインストールオプションは表示されません(画面1)。また、Microsoft Edgeの古いバージョンのインストーラーをダウンロードして上書きインストールしようとしても、Windowsインストーラーのエラー("There is a problem with this Windows Installer package. ……")で失敗します。
このように、標準的な方法でMicrosoft Edgeをアンインストールする手段は用意されていません。しかしながら、レジストリに登録されているMicrosoft Edgeのアンインストール情報を用いれば、アンインストールできることを確認できました。
Microsoft Edgeのアンインストール情報は以下のレジストリキー(x64版とx86版で場所が異なります)にある「UninstallString」および「UninstallArguments」値で確認できます。64bit(x64)版と32bit(x86)版で異なる場所に格納されています。
なお、「Microsoft Edge WebView 2 Runtime」は、「Microsoft 365」アプリなどが使用するランタイムであり、インストールされていない(レジストリが存在しない)場合があります。「Microsoft Edge WebView 2 Runtime」がインストールされているかどうかは、コントロールパネルの「プログラムのアンインストールまたは変更」の一覧で確認できます。
管理者として開いたコマンドプロンプトまたはPowerShellウィンドウで「UninstallString」値のコマンドラインに続けて、「UninstallArguments」値のパラメーターを付けて実行することで、Microsoft EdgeとMicrosoft Edge WebView 2 Runtime(インストールされている場合)をアンインストールできました(画面2)。
また、以下のPowerShellコマンドラインを管理者として実行することでも、x64版用のMicrosoft EdgeとMicrosoft Edge WebView 2 Runtimeをアンインストールできるでしょう(画面3)。x86版の場合は「WOW6432Node\」の部分をカットすることで対応可能です。
# Uninstall Microsoft Edge $uninstallcmd = (Get-ItemProperty "HKLM:\SOFTWARE\WOW6432Node\Microsoft\EdgeUpdate\ClientState\{56EB18F8-B008-4CBD-B6D2-8C97FE7E9062}" -ErrorAction SilentlyContinue).UninstallString $uninstallarg = (Get-ItemProperty "HKLM:\SOFTWARE\WOW6432Node\Microsoft\EdgeUpdate\ClientState\{56EB18F8-B008-4CBD-B6D2-8C97FE7E9062}" -ErrorAction SilentlyContinue).UninstallArguments Start-Process -FilePath $uninstallcmd -ArgumentList $uninstallarg -wait # Uninstall Microsoft WebView 2 Runtime $uninstallcmd = (Get-ItemProperty "HKLM:\SOFTWARE\WOW6432Node\Microsoft\EdgeUpdate\ClientState\{F3017226-FE2A-4295-8BDF-00C3A9A7E4C5}" -ErrorAction SilentlyContinue).UninstallString $uninstallarg = (Get-ItemProperty "HKLM:\SOFTWARE\WOW6432Node\Microsoft\EdgeUpdate\ClientState\{F3017226-FE2A-4295-8BDF-00C3A9A7E4C5}" -ErrorAction SilentlyContinue).UninstallArguments if ([string]::IsNullOrEmpty($uninstallcmd)){ Start-Process -FilePath $uninstallcmd -ArgumentList $uninstallarg -wait }
なお、「アンインストールしてもよろしいですか?」ダイアログボックスに応答する必要があるので、PowerShellスクリプトでバッチ的に実行するのではなく、コマンドラインを1行ずつ実行してください(動作保証するものではありません、ご利用は自己責任で)。
Microsoft Edgeの現在のバージョンをアンインストールしたら、以下のサイトからロールバックしたいバージョンのMicrosoft Edgeのインストーラーをダウンロードし、インストールします。これでMicrosoft Edgeのバージョンのロールバックは完了です(画面4)。
Microsoft Edgeを実行するWindows 10デバイスがActive Directoryドメインに参加している、またはAzure Active Directory(Azure AD)ドメインに参加している場合は、「グループポリシー」または「ローカルコンピューターポリシー」にある以下のポリシーを設定することで、Microsoft Edgeの自動更新を無効化できます(画面5)。
このポリシー設定の前提は、Active DirectoryドメインまたはAzure ADドメインに参加しているデバイスであることに注意してください。ドメインに参加していないデバイスでこのポリシーを設定しても、Microsoft Edgeの「設定\Microsoft Edgeについて」(edge://settings:help)ページには「更新ポリシーは構成されていますが、このデバイスはドメインに参加していないため、無視されます」と表示され、自動更新は止まりません。インターネットアクセスが有効であれば、すぐに最新バージョンのチェックと更新のインストールが行われます。
岩手県花巻市在住。Microsoft MVP:Cloud and Datacenter Management(2020-2021)。SIer、IT出版社、中堅企業のシステム管理者を経て、フリーのテクニカルライターに。Microsoft製品、テクノロジーを中心に、IT雑誌、Webサイトへの記事の寄稿、ドキュメント作成、事例取材などを手掛ける。個人ブログは『山市良のえぬなんとかわーるど』。近著は『Windows版Docker&Windowsコンテナーテクノロジ入門』(日経BP社)、『ITプロフェッショナル向けWindowsトラブル解決 コマンド&テクニック集』(日経BP社)。
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