前回(第90回)は、Windows 10とMicrosoft Office製品について、2021年以降のサポートライフサイクルを再確認しました。今回は視点を変えて、2021年内にサポートが終了するMicrosoftの製品/技術についてまとめます。
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Microsoftは、同社の製品およびサービスについて、継続的にサービスが提供される「モダンライフサイクルポリシー」と、メインストリーム「5年」と延長サポート「5年」、合わせて「10年」の長期サポートが提供される「固定ライフサイクルポリシー」のいずれかでサポートを提供しています。
各ライフサイクルポリシーの下で、2021年中にサポートが終了する製品については、以下のWebページにまとめられています。詳細なライフサイクルについては、「製品およびサービスのライフサイクル情報の検索」ページで検索できます。
今回は、ライフサイクルポリシーを区別することなく、時系列に沿って2021年にサービスまたはサポートが終了する製品や技術をまとめます。日付は米国時間であり、更新プログラムが提供される製品については、その日にリリース(日本では時差の関係で翌日)される更新プログラムが最後になります。各種サポートチャネル(サポート窓口など)を通じてのサポート終了日は、米国時間に従います。
2021年1月11日は、「Windows 7」「Windows Server 2008」「Windows Server 2008 R2」の「拡張セキュリティ更新プログラム(Enterprise Security Update、ESU)」の1年目が終了します。1年目のESU購入者で2021年1月12日リリースと、その後1年間のセキュリティ更新プログラムを受け取るためには、2年目のESUを購入する必要があります。2年目のESUは、2022年1月11日までセキュリティ更新プログラムを提供します。ESUは2020年、2021年、2022年の各年に12カ月分が販売され、最長2023年1月9日までセキュリティ更新プログラムを提供します。
2021年1月12日は、以下の製品および技術のサポートが終了します。いずれもレガシーな業務アプリで使用されることがある製品および技術です。影響を受ける業務アプリがないかどうかを再確認することをお勧めします。
2021年3月は、Windows 10 バージョン2004以前の「Windows 10」に標準搭載されているレガシー(EdgeHTML版)「Microsoft Edge」のサポートが終了します。新しい(Chromium版)Microsoft Edgeに入れ替えるか、Chromium版Microsoft Edgeを標準搭載するWindows 10 バージョン20H2(October 2020 Update)に移行してください。
2021年4月13日は、以下のコラボレーション製品、組み込みOS、デスクトップ最適化ツールのサポートが終了します。
「Lync」は「Skype for Business」を経て、「Microsoft Teams」が現在のメインストリームです。「Project Server」と「SharePoint Server」はバージョン2019が現在のメインストリームです。「Windows Embedded Compact 7」については後述します。「Microsoft Enterprise Desktop Virtualization(MED-V)」は「Microsoft Desktop Optimization Pack(MDOP)」のコンポーネントです。MDOPについては、最後にまとめて説明します。
2021年5月11日は、半期チャネル(Semi-Annual Channel、SAC)のWindows 10およびWindows Serverの以下のバージョンがサポートを終了します。サポートが終了すると、品質更新プログラムが提供されなくなるため、速やかに後継バージョンに移行することをお勧めします。
「Mirantis Container Runtime」(旧称、Docker Enterprise)や「Docker Desktop for Windows」、Microsoft Azureのコンテナ関連サービスでWindowsコンテナのアプリ開発環境、デプロイ環境を利用している場合は、SACバージョン1909ベースの更新イメージは提供されなくなります。
2021年7月は、以下の製品およびアプリのサポートが終了します。
「Windows MultiPoint Server 2011」は2021年7月13日にサポートが終了します。Windows MultiPoint Server製品としては、次の「Windows MultiPoint Server 2012」(サポート終了日:2023年10月10日)が最後であり、Windows Server 2016(サポート終了日:2027年1月12日)において「MultiPoint Services」の役割として統合されました(画面1)。しかし、MultiPoint Servicesの役割は、Windows Server 2019で廃止、削除されました。後継の製品や技術が提供される予定はありません。
2021年7月15日はWindows 7およびWindows Server 2008 R2上でのChromium版Microsoft Edgeのサポートが終了する予定でしたが、同じChromiumエンジンを搭載する「Google Chrome」に足並みをそろえる形で、半年間延長され2022年1月15日までサポートされることになりました。
Chromium版Microsoft Edgeは、Windows 10だけでなく、Windows 7、Windows 8.1、Windows Server、macOS、iOS、Android、Linux(プレビュー)にインストール、利用できますが、Windows 7およびWindows Server 2008 R2については、ESUの購入の有無にかかわらず、1年後にはサポートされなくなることに注意してください。
「Skype for Business Online」は、2021年7月31日にサポートを終了します。現在のメインストリームである「Microsoft Teams」に移行することを検討してください。
2021年8月17日は、Microsoft 365のアプリとサービスにおける「Internet Explorer(IE)11」のサポートが完全に終了します。なお、サポートライフサイクル期間中のWindowsおよびWindows Serverに標準搭載されているIE 11は互換性のために引き続きサポートされます。
2021年9月14日は、MDOPに含まれる「Microsoft BitLocker Administration and Monitoring(MBAM)」の以下のバージョンのサポートが終了します。MDOPについては、最後にまとめて説明します。
2021年10月12日は、以下の組み込みOS、レガシー技術、ツールのサポートが終了します。
Windows 7ベースの組み込み向けOS「Windows Embedded POSReady 7」、およびWindows 7ベースのシンクライアントOS「Windows Thin PC」(画面2)のサポートが終了することで、拡張セキュリティ更新プログラム(ESU)でカバーされるWindows 7を除き、Windows 7ベースのOSのサポートは全て終了することになります(Windows Embedded Compact 7は2021年4月13日に終了)。
「Silverlight 5」のサポート終了で、Silverlightの技術は完全に終了します。Silverlightのダウンロード提供もサポート終了に合わせて停止される予定です。Silverlightに依存するレガシーアプリがある場合はご注意ください。
「DaRT」はMDOPのコンポーネントの1つであり、「Windowsプリインストール環境(WinPE)」ベースのトラブルシューティングツールセットです。DaRTはWindows 7(Windows Embedded Standard 7)ベースのWinPEで作成されている古いバージョンのものです。MDOPについては、最後にまとめて説明します。
2021年12月14日は、SACのWindows 10およびWindows Serverの以下のバージョンがサポートを終了します。サポートが終了するまでに、余裕を持って後継バージョンに移行することを検討してください。
MDOPはもともと、Windows 7 Enterpriseのデスクトップを最適化するツールセットとして、ボリュームライセンスのSA(ソフトウェアアシュアランス)契約者に対して、サブスクリプション契約で販売されていたもので、2015年8月にリリースされた最後の「MDOP 2015」はWindows SA(ソフトウェアアシュアランス)やVDA(Virtual Desktop Access)ライセンスを持つユーザーに無料で公開されました。
MDOPのコンポーネントの一部である「Microsoft Application Virtualization(App-V)」と「User Experience Virtualization(UE-V)」は、Windows 10 バージョン1607以降、Windows 10 Enterprise/Educationに組み込まれており、App-VおよびUE-Vの新機能はWindows 10とともに提供されるようになっています。
MDOP 2015までは6つのコンポーネントからなり、各コンポーネントにはWindows XPからWindows 10までに対応した複数のバージョンがあります。現在、Windows 10に組み込まれたApp-VとUE-Vを除くと、延長サポートフェーズにある以下のバージョンがサポートされています。このうち、2021年内にサポートが終了するのは、Windows 7と関連が深いMBAM 1.0(画面3)、DaRT 7.0(画面4)、MED-V 2.0(画面5)になります。スクリーンショットやアイコンに見覚えがある場合は、企業内で使用している可能性があります。特に、MED-VはWindows XPの互換性ソリューションとして導入し、アプリの塩漬けに使用している可能性があります(Windows XPのサポートは2014年4月に終了しています)。
岩手県花巻市在住。Microsoft MVP:Cloud and Datacenter Management(2020-2021)。SIer、IT出版社、中堅企業のシステム管理者を経て、フリーのテクニカルライターに。Microsoft製品、テクノロジーを中心に、IT雑誌、Webサイトへの記事の寄稿、ドキュメント作成、事例取材などを手掛ける。個人ブログは『山市良のえぬなんとかわーるど』。近著は『Windows版Docker&Windowsコンテナーテクノロジ入門』(日経BP社)、『ITプロフェッショナル向けWindowsトラブル解決 コマンド&テクニック集』(日経BP社)。
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