「Microsoft SQL Server」が稼働するデータベースシステムを運用する管理者に向け、「動的管理ビュー」の活用を軸にしたトラブル対策のためのノウハウを紹介していきます。今回は、SQL Databaseの操作中にスレッドで発生した待機情報の出力について解説します。
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本連載では、「Microsoft SQL Server(以下、SQL Server)」で使用可能な動的管理ビューについて、動作概要や出力内容などを紹介していきます。今回は動的管理ビュー「sys.dm_db_wait_stats」における、SQL Databaseの操作中のスレッドで発生した待機情報の出力について解説します。
SQL Serverおよび「Azure SQL Database」では、クエリ実行などの要求はタスクに割り当てられます。タスクは、単一または複数のスレッドに割り当てられて実行されます。
タスクを処理するそれぞれのスレッドでは、ネットワーク・ディスクIOの完了待ちやロックの獲得待ち、他のスレッドへのCPUの割り振りなど、さまざまな要因で待機が発生することがあります。
Azure SQL Databaseでは「sys.dm_db_wait_stats」動的管理ビューを使用することで、データベースで発生した待機の発生回数や待機時間の累積情報を取得できます。
なお、「sys.dm_db_wait_stats」動的管理ビューは、Azure SQL Databaseで使用可能な動的管理ビューとなっており、SQL Serverでは使用できません。SQL Serverでは「sys.dm_os_wait_stats」を使用することで、インスタンスで発生した待機に関する累積情報を取得できます。
列名 | データ型 | 説明 |
---|---|---|
wait_type | nvarchar(60) | 待機の種類の名前 |
waiting_tasks_count | bigint | この待機の種類の合計発生回数 |
wait_time_ms | bigint | この待機の種類の合計待機時間(ミリ秒単位)。この時間にはsignal_wait_time_msが含まれる |
max_wait_time_ms | bigint | この待機の種類における最大待機時間 |
signal_wait_time_ms | bigint | 待機スレッドがシグナルを受け取ってから実行を開始するまでの合計待機時間(ミリ秒単位) |
Azure SQL Databaseに接続し、「sys.dm_db_wait_stats」動的管理ビューを出力します(図1)。
さまざまな待機の発生状況についての情報が出力されました。出力された情報は累積情報となるため、1回の出力だけでは待機傾向などを把握することはできません。
高負荷の時間帯やクエリの処理中などの待機の発生状況を確認したい場合には、確認したい期間中に「sys.dm_db_wait_stats」動的管理ビューを一定時間ごとに出力したり、開始のタイミングと終了のタイミングで出力したりして、2回以上の出力の差分を計算する必要があります(図2、図3)。
同じ待機の種類の「waiting_tasks_count」列と「wait_time_ms」列、「signal_wait_time_ms」列の値で、時間の変化に伴う差分を計算すると、待機の発生状況の変化を確認できます。
なお、「wait_time_ms」列の値には、「signal_wait_time_ms」列のリソースの待機が終了したあとにスケジューラーからのシグナルを待機していた時間も含まれます。そのため、他のスレッドにスケジューラーを受け渡した際の「SOS_SCHEDULER_YIELD」での待機の種類は、「wait_time_ms」と「signal_wait_time_ms」の値は近い値になります。
※本Tipsは、「Azure SQL Database(V12)」での動作を想定して解説しています。
日本ユニシス株式会社所属。Microsoft MVP for Data Platform(2017~)。入社以来 SQL Serverの評価/設計/構築/教育などに携わりながらも、主にサポート業務に従事。SQL Serverのトラブル対応で社長賞の表彰を受けた経験も持つ。休日は学生時代の仲間と市民駅伝に参加し、銭湯で汗を流してから飲み会へと流れる。
日本ユニシス株式会社所属。入社以来SQL Server一筋で評価/設計/構築/教育などに携わりながらも、主にサポート業務に従事。社内のプログラミングコンテストで4回の優勝経験も持つ。趣味は輪行で週末は自転車を持っての旅行。目標は色々な日本百選を制覇すること。
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