SQL DatabaseのCPUとI/O、メモリの消費量を確認するSQL Server動的管理ビューレファレンス(36)

「Microsoft SQL Server」が稼働するデータベースシステムを運用する管理者に向け、「動的管理ビュー」の活用を軸にしたトラブル対策のためのノウハウを紹介していきます。今回は、「Azure SQL Database」におけるCPUとI/O、メモリの消費量の確認について解説します。

» 2021年08月23日 05時00分 公開
[伊東敏章@IT]

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SQL Server動的管理ビュー一覧

 本連載では、「Microsoft SQL Server(以下、SQL Server)」で使用可能な動的管理ビューについて、動作概要や出力内容などを紹介していきます。今回は動的管理ビュー「sys.dm_db_resource_stats」における、「Azure SQL Database」(SQL Database)のCPUとI/O、メモリの消費量の確認について解説します。

概要

 SQL Serverでは、使用可能なリソースの上限は物理/仮想サーバのリソース量やSQL Serverのサーバ構成オプションなどで決まります。

 SQL Databaseの場合、使用可能なリソースの上限は選択されている購入モデル(DTU/vCore)やサービスレベル、コンピューティングレベルによって決まります。

 SQL Serverの場合、リソースの使用状況はパフォーマンスログの採取で確認できます。しかしながら、SQL Databaseの場合は、サービスをホストするサーバには接続できないため、パフォーマンスログの採取でリソースの使用状況を確認できません。

 SQL Databaseでは「sys.dm_db_resource_stats」動的管理ビューを使用して、現在のコンピューティングレベルで使用可能なリソースの上限に対して、どのリソースがどの程度の割合で使用されているかを確認できます。

出力内容

 出力は15秒ごとに1行作成され、履歴データは約1時間分が保持されます。

列名 データ型 説明
end_time datetime 現在のレポート期間の終了時刻(UTC)
avg_cpu_percent decimal(5,2) 現在のサービスレベルでの制限に対する平均CPU使用率
avg_data_io_percent decimal(5,2) 現在のサービスレベルでの制限に対する平均データI/O使用率
avg_log_write_percent decimal(5,2) 現在のサービスレベルでの制限に対する平均ログ書き込みスループット使用率
avg_memory_usage_percent decimal(5,2) 現在のサービスレベルでの制限に対する平均メモリ使用率
xtp_storage_percent decimal(5,2) レポート期間の終了時の、現在のサービスレベルでの制限に対するインメモリOLTPストレージ使用率
データベースでインメモリOLTPを使用しない場合は0
max_worker_percent decimal(5,2) 現在のサービスレベルでの制限に対する最大同時実行ワーカー数の割合
max_session_percent decimal(5,2) 現在のサービスレベルでの制限に対する最大同時セッション数の割合
dtu_limit int データベースの最大DTU設定
vCoreモデルを使用するデータベースではNULL
cpu_limit decimal(5,2) データベースの仮想コア数
DTUモデルを使用するデータベースではNULL
avg_instance_cpu_percent decimal(5,2) データベースが使用するCPU使用率の平均
avg_instance_memory_percent decimal(5,2) データベースが使用するメモリ使用率の平均
avg_login_rate_percent decimal(5,2) サポートされていない
replica_role int データベースの現在のレプリカのロールを表す
 0:プライマリ
 1:セカンダリー
 2:フォワーダ(読み取り可能セカンダリーにRedeOnlyを指定せず接続した場合)

動作例

 SQL Databaseを、DTU購入モデルで構成します(図1)。

図1 図1 DTU 5(BASICサービスレベル)でSQL Databaseを構成した

 ワークロードを実行していない状態で「sys.dm_db_resource_stats」動的管理ビューを出力します(図2)。

図2 図2 消費量の多いリソースがないことが分かる

 15秒ごとのリソース消費量が出力され、最も古いデータは約1時間前のデータが表示されていました。それ以前のデータは削除されるようです(図3)。

図3 図3 出力されたデータは7:12〜8:16のもので、それ以前のデータは出力されなかった

 次に、CPU負荷の高いクエリを複数実行し「sys.dm_db_resource_stats」動的管理ビューを出力します(図4)。

図4 図4 「avg_cpu_percent」が100に近い値となった

 「avg_cpu_percent」列の値から、現在のコンピューティングレベルではCPUが上限近くまで使用されており、CPUのパフォーマンスを改善するには処理能力がボトルネックになっていそうなことが分かりました。

 類似の情報は、Azure SQL Databaseのメトリックで採取することもできます(図5)。

図5 図5  Azureポータルから、SQL Databaseの「CPU percentage」メトリックを表示したところ

 SQL Databaseのメトリックの場合、1時間で削除されるということは無いため、メトリックの保存期間までさかのぼって確認できます。ただし、「avg_memory_usage_percent」列など、一部の列には類似のメトリックが無いため、これらの列のリソース消費量を確認するには「sys.dm_db_resource_stats」動的管理ビューを使用する必要がありそうです。

※本Tipsは、「Azure SQL Database(V12)」での動作を想定して解説しています。

筆者紹介

椎名 武史(しいな たけし)

日本ユニシス株式会社所属。Microsoft MVP for Data Platform(2017〜)。入社以来 SQL Serverの評価/設計/構築/教育などに携わりながらも、主にサポート業務に従事。SQL Serverのトラブル対応で社長賞の表彰を受けた経験も持つ。休日は学生時代の仲間と市民駅伝に参加し、銭湯で汗を流してから飲み会へと流れる。

伊東 敏章(いとう としあき)

日本ユニシス株式会社所属。入社以来SQL Server一筋で評価/設計/構築/教育などに携わりながらも、主にサポート業務に従事。社内のプログラミングコンテストで4回の優勝経験も持つ。趣味は輪行で週末は自転車を持っての旅行。目標は色々な日本百選を制覇すること。


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