PolyBaseデータ移動サービスの状態を確認するSQL Server動的管理ビューレファレンス(53)

「Microsoft SQL Server」が稼働するデータベースシステムを運用する管理者に向け、「動的管理ビュー」の活用を軸にしたトラブル対策のためのノウハウを紹介していきます。今回は、PolyBaseデータ移動サービスの状態の確認について解説します。

» 2021年10月19日 05時00分 公開
[伊東敏章@IT]

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SQL Server動的管理ビュー一覧

 本連載では、「Microsoft SQL Server(以下、SQL Server)」で使用可能な動的管理ビューについて、動作概要や出力内容などを紹介していきます。今回は動的管理ビュー「sys.dm_exec_dms_services」における、PolyBaseデータ移動サービスの状態の確認について解説します。対応バージョンは、SQL Server 2016以降です。

概要

 PolyBaseクエリを実行する場合、クエリはヘッドノード上のSQL Serverに送信、解析されて、外部テーブルを参照するクエリの一部はPolyBaseエンジンに渡されます。

 PolyBaseエンジンは、外部データに対するクエリを解析してクエリプランを生成し、作業を実行するために計算ノード上のデータ移動サービスに配布します。計算ノードの作業が完了すると、計算ノードから結果を受信し、この結果を処理してクライアントに返すためにSQL Serverに送信します。

 PolyBaseデータ移動サービス(DMS)は、ヘッドノード上のPolyBaseエンジンから指示を受信し、「Hadoop Distributed File System」(HDFS)とSQL Serverの間およびヘッドノードと計算ノード上のSQL Serverインスタンス間でデータ転送を行います。

 「sys.dm_exec_dms_services」動的管理ビューを使用すると、計算ノードで実行されているDMSの状態を確認できます。

出力内容

列名 データ型 説明
dms_core_id int DMSコアに関連付けられている一意のID
compute_node_id int このDMSが実行されているノードのID
「sys.dm_exec_compute_nodes」の「compute_node_id」列を参照する
status nvarchar(32) このDMSの現在の状態

動作例

 2つのノードでPolyBaseスケールアウトグループを構成します。1つのノードがヘッドノード、ヘッドを含めた2つのノードが計算ノードとなっています(図1)。

図1 図1 2つのノードでスケールアウトグループを構成

 「sys.dm_exec_dms_services」動的管理ビューを出力します。DMSは計算ノードで動作しているため、2行の結果が出力されました。「status」列の値は「Ready」となっていました(図2)。

図2 図2 正常な状態では「status」列は「Ready」と表示された

 それぞれの行に対応するノードの詳細は、「compute_node_id」列の値を使用して「sys.dm_exec_compute_nodes」動的管理ビューを出力すると確認できます(図3)。

図3 図3 「sys.dm_exec_compute_nodes」動的管理ビューを参照するとサーバを特定できる

 ヘッドノードではないインスタンス側の計算ノードのネットワークを切断し、直後にヘッドノードで「sys.dm_exec_dms_services」動的管理ビューを出力します。動的管理ビューの出力にしばらく時間がかかり、その後、切断した計算ノードのDMSの情報が無くなった状態で情報が出力されました(図4)。

図4 図4 ヘッドノード側インスタンスのDMS情報のみが出力された

 ネットワークを切断した計算ノードのSQL Server構成マネジャーを確認すると、図中に「SQL Server PolyBase Data Movement」とあるDMSのサービスは停止状態に自動的に移行していました(図5)。

図5 図5 ネットワークが切断したノードではDMSが自動的に停止した

 なお、RC1版での確認のため製品版の動作は分かりませんが、ネットワークを再接続してもDMSは自動で開始されなかったため、RC1版では手動での開始が必要となっていました。

※本Tipsは、「Windows Server 2019」上に「SQL Server 2019 RC1」をインストールした環境を想定して解説しています。

筆者紹介

椎名 武史(しいな たけし)

日本ユニシス株式会社所属。Microsoft MVP for Data Platform(2017〜)。入社以来 SQL Serverの評価/設計/構築/教育などに携わりながらも、主にサポート業務に従事。SQL Serverのトラブル対応で社長賞の表彰を受けた経験も持つ。休日は学生時代の仲間と市民駅伝に参加し、銭湯で汗を流してから飲み会へと流れる。

伊東 敏章(いとう としあき)

日本ユニシス株式会社所属。入社以来SQL Server一筋で評価/設計/構築/教育などに携わりながらも、主にサポート業務に従事。社内のプログラミングコンテストで4回の優勝経験も持つ。趣味は輪行で週末は自転車を持っての旅行。目標は色々な日本百選を制覇すること。


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