PolyBase計算ノードに配布されたクエリ要求の実行情報を取得するSQL Server動的管理ビューレファレンス(52)

「Microsoft SQL Server」が稼働するデータベースシステムを運用する管理者に向け、「動的管理ビュー」の活用を軸にしたトラブル対策のためのノウハウを紹介していきます。今回は、PolyBase計算ノードに配布されたクエリ要求の実行情報の取得について解説します。

» 2021年10月18日 05時00分 公開
[伊東敏章@IT]

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SQL Server動的管理ビュー一覧

 本連載では、「Microsoft SQL Server(以下、SQL Server)」で使用可能な動的管理ビューについて、動作概要や出力内容などを紹介していきます。今回は動的管理ビュー「sys.dm_exec_distributed_sql_requests」における、PolyBase計算ノードに配布されたクエリ要求の実行情報の取得について解説します。対応バージョンは、SQL Server 2016以降です。

概要

 PolyBase機能を使用した外部データソーステーブルを含むクエリの実行では、クエリはSQL Serverによって自動的に複数のステップに分割され、複数のクエリ実行要求が各ノードに配布されます。

 「sys.dm_exec_distributed_sql_requests」動的管理ビューを使用することで、各ノードに配布されたクエリ実行要求の実行情報を確認できます。

 実行されたPolyBaseクエリに関する情報を確認できる「sys.dm_exec_distributed_requests」動的管理ビューや、分割されたステップの情報を出力できる「sys.dm_exec_distributed_request_steps」動的管理ビュー、PolyBaseデータ移動サービス(SQL Server PolyBase Data Movement:DMS)のワーカー情報を出力する「sys.dm_exec_dms_workers」動的管理ビューなどと組み合わせることで、詳細にPolyBaseクエリの実行状況を追跡できます。

出力内容

列名 データ型 説明
execution_id nvarchar(32) この要求が含まれるクエリ要求の一意のID
step_index int この要求のクエリステップのインデックス
「sys.dm_exec_distributed_request_steps」の「step_index」列を参照する
compute_node_id int この要求が実行されるノードのID
「sys.dm_exec_compute_nodes」の「compute_node_id」列を参照する
distribution_id int この要求が実行されるディストリビューションID
ディストリビューションスコープの要求でない場合は「-1」
status nvarchar(32) この要求の状態
error_id nvarchar(36) この要求でエラーが存在する場合の、エラーを識別する一意のID
start_time datetime この要求の実行開始時刻
end_time datetime この要求を完了、取り消し、または失敗した時刻
total_elapsed_time int この要求が実行されていたミリ秒単位の時間の合計
row_count bigint この要求で変更されたか、この要求で返される行の合計数
spid int 配布された要求を実行するSQL Serverインスタンス上のセッションID
command nvarchar (4000) この要求のコマンドの完全なテキスト

動作例

 2つのノードでPolyBaseスケールアウトグループを構成し、SQL Server外部データソースおよび外部テーブルを作成しました(図1、図2)。

図1 図1 2つの計算ノードが構成された
図2 図2 T-SQLで、SQL Server外部データソースと外部テーブルを作成した

 外部テーブルを集計するクエリを実行した後に、「sys.dm_exec_distributed_sql_requests」動的管理ビューを出力します(図3、図4)。

図3 図3 パーティション列ごとに条件を満たすデータをカウントするクエリを実行した
図4 図4 「sys.dm_exec_distributed_sql_requests」動的管理ビューには大量のデータが出力された

 「sys.dm_exec_distributed_sql_requests」動的管理ビューには、過去1000件のPolyBaseクエリの情報が表示されます。PolyBase関連の動的管理ビューも分散クエリとして実行されるものがあるため、実行したクエリに該当する実行情報がどのデータに該当するかを確認するには、先にクエリの「execution_id」を特定する必要がありそうです。

 実行したPolyBaseクエリの一覧を出力できる「sys.dm_exec_distributed_requests」動的管理ビューを出力して、クエリの実行時間などの情報から、先ほど実行したクエリの「execution_id」を特定します(図5)。

図5 図5 「start_time」や「end_time」列の値などから「execution_id」を特定(QID1046)できる

 特定した「execution_id」を使用して「WHERE」句を追加し、「sys.dm_exec_distributed_sql_requests」動的管理ビューを一度出力します(図6)。

図6 図6 各ノードに配布された多数のクエリの情報が出力される

 実行したクエリの情報のみに限定して出力できました。「step_index」ごとに多数の「CREATE TABLE」クエリなどが計算ノードに配布されていることが分かります。各ステップの実行内容は「sys.dm_exec_distributed_request_steps」動的管理ビューを参照することで確認できます(図7)。

図7 図7 「sys.dm_exec_distributed_request_steps」動的管理ビューで「step_index」を調べられる

 「sys.dm_exec_distributed_sql_requests」動的管理ビューには「step_index 1、2、3、7」のみが存在しており、「location_type」が「Compute」となっているステップの情報が「sys.dm_exec_distributed_sql_requests」動的管理ビューに出力されるようです。

 次に、計算ノードでエラーを発生させて「sys.dm_exec_distributed_sql_requests」動的管理ビューの出力を確認します。「error_id」列に値が表示されました(図8、図9)。

図8 図8 計算ノードの「tempdb」のトランザクションログをいっぱいにしてエラーを発生させた
図9 図9 失敗した配布クエリは「status」が「Failed」となり「error_id 9002」が表示された

 「sys.dm_exec_distributed_sql_requests」動的管理ビューにはエラーの詳細は表示されませんので、エラーの詳細を確認するには「execution_id」を使用して「sys.dm_exec_compute_node_errors」動的管理ビューを参照する必要があります(図10)。

図10 図10 エラーの詳細な情報は「sys.dm_exec_compute_node_errors」動的管理ビューで確認できる

※本Tipsは、「Windows Server 2019」上に「SQL Server 2019 RC1」をインストールした環境を想定して解説しています。

筆者紹介

椎名 武史(しいな たけし)

日本ユニシス株式会社所属。Microsoft MVP for Data Platform(2017〜)。入社以来 SQL Serverの評価/設計/構築/教育などに携わりながらも、主にサポート業務に従事。SQL Serverのトラブル対応で社長賞の表彰を受けた経験も持つ。休日は学生時代の仲間と市民駅伝に参加し、銭湯で汗を流してから飲み会へと流れる。

伊東 敏章(いとう としあき)

日本ユニシス株式会社所属。入社以来SQL Server一筋で評価/設計/構築/教育などに携わりながらも、主にサポート業務に従事。社内のプログラミングコンテストで4回の優勝経験も持つ。趣味は輪行で週末は自転車を持っての旅行。目標は色々な日本百選を制覇すること。


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