「Microsoft SQL Server」が稼働するデータベースシステムを運用する管理者に向け、「動的管理ビュー」の活用を軸にしたトラブル対策のためのノウハウを紹介していきます。今回は、PolyBase計算ノードに配布されたクエリ要求の実行情報の取得について解説します。
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本連載では、「Microsoft SQL Server(以下、SQL Server)」で使用可能な動的管理ビューについて、動作概要や出力内容などを紹介していきます。今回は動的管理ビュー「sys.dm_exec_distributed_sql_requests」における、PolyBase計算ノードに配布されたクエリ要求の実行情報の取得について解説します。対応バージョンは、SQL Server 2016以降です。
PolyBase機能を使用した外部データソーステーブルを含むクエリの実行では、クエリはSQL Serverによって自動的に複数のステップに分割され、複数のクエリ実行要求が各ノードに配布されます。
「sys.dm_exec_distributed_sql_requests」動的管理ビューを使用することで、各ノードに配布されたクエリ実行要求の実行情報を確認できます。
実行されたPolyBaseクエリに関する情報を確認できる「sys.dm_exec_distributed_requests」動的管理ビューや、分割されたステップの情報を出力できる「sys.dm_exec_distributed_request_steps」動的管理ビュー、PolyBaseデータ移動サービス(SQL Server PolyBase Data Movement:DMS)のワーカー情報を出力する「sys.dm_exec_dms_workers」動的管理ビューなどと組み合わせることで、詳細にPolyBaseクエリの実行状況を追跡できます。
列名 | データ型 | 説明 |
---|---|---|
execution_id | nvarchar(32) | この要求が含まれるクエリ要求の一意のID |
step_index | int | この要求のクエリステップのインデックス 「sys.dm_exec_distributed_request_steps」の「step_index」列を参照する |
compute_node_id | int | この要求が実行されるノードのID 「sys.dm_exec_compute_nodes」の「compute_node_id」列を参照する |
distribution_id | int | この要求が実行されるディストリビューションID ディストリビューションスコープの要求でない場合は「-1」 |
status | nvarchar(32) | この要求の状態 |
error_id | nvarchar(36) | この要求でエラーが存在する場合の、エラーを識別する一意のID |
start_time | datetime | この要求の実行開始時刻 |
end_time | datetime | この要求を完了、取り消し、または失敗した時刻 |
total_elapsed_time | int | この要求が実行されていたミリ秒単位の時間の合計 |
row_count | bigint | この要求で変更されたか、この要求で返される行の合計数 |
spid | int | 配布された要求を実行するSQL Serverインスタンス上のセッションID |
command | nvarchar (4000) | この要求のコマンドの完全なテキスト |
2つのノードでPolyBaseスケールアウトグループを構成し、SQL Server外部データソースおよび外部テーブルを作成しました(図1、図2)。
外部テーブルを集計するクエリを実行した後に、「sys.dm_exec_distributed_sql_requests」動的管理ビューを出力します(図3、図4)。
「sys.dm_exec_distributed_sql_requests」動的管理ビューには、過去1000件のPolyBaseクエリの情報が表示されます。PolyBase関連の動的管理ビューも分散クエリとして実行されるものがあるため、実行したクエリに該当する実行情報がどのデータに該当するかを確認するには、先にクエリの「execution_id」を特定する必要がありそうです。
実行したPolyBaseクエリの一覧を出力できる「sys.dm_exec_distributed_requests」動的管理ビューを出力して、クエリの実行時間などの情報から、先ほど実行したクエリの「execution_id」を特定します(図5)。
特定した「execution_id」を使用して「WHERE」句を追加し、「sys.dm_exec_distributed_sql_requests」動的管理ビューを一度出力します(図6)。
実行したクエリの情報のみに限定して出力できました。「step_index」ごとに多数の「CREATE TABLE」クエリなどが計算ノードに配布されていることが分かります。各ステップの実行内容は「sys.dm_exec_distributed_request_steps」動的管理ビューを参照することで確認できます(図7)。
「sys.dm_exec_distributed_sql_requests」動的管理ビューには「step_index 1、2、3、7」のみが存在しており、「location_type」が「Compute」となっているステップの情報が「sys.dm_exec_distributed_sql_requests」動的管理ビューに出力されるようです。
次に、計算ノードでエラーを発生させて「sys.dm_exec_distributed_sql_requests」動的管理ビューの出力を確認します。「error_id」列に値が表示されました(図8、図9)。
「sys.dm_exec_distributed_sql_requests」動的管理ビューにはエラーの詳細は表示されませんので、エラーの詳細を確認するには「execution_id」を使用して「sys.dm_exec_compute_node_errors」動的管理ビューを参照する必要があります(図10)。
※本Tipsは、「Windows Server 2019」上に「SQL Server 2019 RC1」をインストールした環境を想定して解説しています。
日本ユニシス株式会社所属。Microsoft MVP for Data Platform(2017〜)。入社以来 SQL Serverの評価/設計/構築/教育などに携わりながらも、主にサポート業務に従事。SQL Serverのトラブル対応で社長賞の表彰を受けた経験も持つ。休日は学生時代の仲間と市民駅伝に参加し、銭湯で汗を流してから飲み会へと流れる。
日本ユニシス株式会社所属。入社以来SQL Server一筋で評価/設計/構築/教育などに携わりながらも、主にサポート業務に従事。社内のプログラミングコンテストで4回の優勝経験も持つ。趣味は輪行で週末は自転車を持っての旅行。目標は色々な日本百選を制覇すること。
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