Gartnerは、2022年以降に向けた重要な戦略的展望を発表した。企業とITリーダーが近年学んだ教訓のうち、「人間中心志向」「レジリエンスの獲得競争」「期待を上回る結果を出す能力」という3つの側面を考慮に入れている。
この記事は会員限定です。会員登録(無料)すると全てご覧いただけます。
Gartnerは2020年10月12日(米国時間)、2022年以降の重要な戦略的展望を発表した。IT部門とユーザーに大きな影響がある。
近年の経済社会の破壊的な変化や不確実性の中で、企業とITリーダーが学んだ教訓のうち、「人間中心志向」「レジリエンス(回復力)の獲得競争」「期待を上回る結果を出す能力」という3つの側面について、今後の進展を検討し、踏まえたものだ。
「新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミック(世界的大流行)の教訓は、不測の事態の予測と、さまざまな戦略的な方向に進む準備を、同時に行うことが重要だということだ。従業員、企業効率の向上、トランスフォーメーション計画を加速するための選択肢を採用するリーダーは、変化に対応する際のレジリエンスが高い」。Gartnerのディスティングイッシュト リサーチバイスプレジデント兼Gartnerフェロー、ダリル・プラマー氏はそう述べている。
「レジリエンス、機会、リスクは常に、優れたビジネス戦略の構成要素だ。だが今では、これらは今日、新たな意味を持つようになっている。今回の展望は、『人材からビジネスモジュラリティまで、レジリエンスをどのように従来と異なる方法で構築しなければならないか』『機会とリスクをこれまで以上に切迫感を持って考える必要がある』ということを体現している」(プラマー氏)
Gartnerが発表した10の戦略的展望は次の通り。
・展望1
消費者の40%が、行動追跡指標の裏をかき、収集された自分に関する個人データの価値を意図的に下げるようになる。これにより、個人データの収益化が難しくなる
企業が自分の個人データから得ている価値や、推奨アルゴリズムによって行動を操作されたときのデータの力を、消費者はますます認識するようになっている。これに対して、一部の消費者は、偽の情報を共有したり、興味のない広告をクリックしたりするなどして、追跡を弱めようとしている。
「消費者は、アルゴリズムを操作し、データベースを台無しにすることで、『顧客でなければ製品である』と主張する格言に逆らっている」とプラマー氏は述べている。「消費者はプライバシーやセキュリティへの懸念、誤った情報への接触、個人的な金銭的利益への欲求など、その動機が何であれ、企業が頼りにしてきた行動データの価値を下げることを目指している」(プラマー氏)
・展望2
2024年までに企業内チームの30%が、仕事の自律性やハイブリッド性により、上司がいない組織になる
パンデミックに対応する中で、ビジネスオペレーションの中にアジリティーが組み込まれ、ビジネスプロセスは本質的な価値に合わせて合理化された。このような合理化には、中央での意思決定からピアツーピアのネットワークベースの意思決定への移行が含まれている。これによってハイブリッドな仕事環境であってもボトルネックを減らし、時間を節約することができる。ハイブリッドな仕事が続く中、従来のマネジャーの役割をなくすが、効率化のためのより現実的な解になり得る。
「ビジネスアジリティーを実現するにはチームの権限と自律性が必要な時代になった。ここで仕事の指揮官としてのマネジャーの役割が大きな障害になっている。仕事の取り組みを計画し、優先順位を付け、組織化することは依然として必要だが、ビジネスアジリティーとハイブリッドワークのメリットを享受するためには、『管理』を従来の『マネジャー』の役割から切り離すことが不可欠だ」(プラマー氏)
・展望3
2025年までに、合成データ(AI技術を使って生成されるデータ)の活用によって、顧客の個人データの収集が減少し、プライバシー侵害の70%がなくなる
人工知能(AI)技術を用いて生成されたデータは、「合成データ」と呼ばれており、勢いを増している。合成データが実際のデータの代理として機能し、結果的にセンシティブな情報の収集や使用、共有を減らすことができる。プライバシー規制は現在成熟しており、さらに地域的に異なる。これらの規制はプライバシー侵害のリスクを低減し、回復力を確保するよう組織に圧力をかけているため、合成データの活用は重要な意味を持つ。
「合成データは実際のデータが反映している過去だけでなく、未来の代替現実を表すことができるため、AIを真に予言的なものにする。高品質で大量の合成データを使用することは、人間を大規模に理解するための強力な方法だ」(プラマー氏)
・展望4
2024年までに、サイバー攻撃が基幹インフラに重大なダメージを与え、G20(Group of Twenty)加盟国の1つが物理攻撃を宣言し、報復する
・展望5
2024年までにCIO(最高情報責任者)の80%が、調査の中で業績向上の理由を5つ挙げるよう求められた場合、その一つとして、コンポーザビリティによるモジュラー型ビジネス再設計を挙げるようになる
・展望6
2025年までに企業の75%が、自社に合わない顧客との関係を断つようになる。こうした顧客の維持コストが、自社に合う顧客の獲得コストと比べて割に合わないからだ
・展望7
2026年までに、アフリカ全体で開発人材が30%増加する。こうした人材の増加を背景に、世界をリードするスタートアップエコシステムがアフリカで生まれ、ベンチャーファンドの成長がアジアに匹敵するようになる
・展望8
2026年までに、企業が代替不能トークン(NFT:Non-Fungible Token)のゲーミフィケーションを利用することで成功を収め、株式時価総額が高い企業のトップ10に入る
・展望9
2027年までに低軌道衛星のおかげで、世界で最も貧しい10億人の人々が新たにインターネットを利用できるようになり、その半数が貧困から抜け出す
・展望10
2027年までにフォーチュンのトップ20企業の4分の1が、ニューロマイニングによって意識下の行動に大規模な影響を及ぼす企業に取って代わられる
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.