クラウドストレージやクラウドバックアップサービスを提供するBackblazeは、2022年のクラウドコンピューティング業界における7つのトレンドを予測した。セキュリティやマルチクラウド化、エグレス料金はどのように変化するのだろうか。
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クラウドストレージやクラウドバックアップサービスを提供するBackblazeは2021年12月31日(米国時間)、2022年のクラウドコンピューティング業界における7つのトレンド予測を発表した。
Backblazeが予測したトレンドは次の通り。
2021年はランサムウェアの脅威が急増し、1年を通して大きなニュースになった。インターネットで広く使われているJava用ロギングライブラリ「Apache Log4j」の脆弱(ぜいじゃく)性が明らかになったことを受け、データセキュリティ投資を主張することがかつてないほど容易になり、最高責任者クラスの役員(CxO)全員がセキュリティの取り組みに関与するようになるだろう。企業はデータを保護するために、バックアップの強化や、オブジェクトロックのような機能の実装など、強力なランサムウェア対策への投資を拡大すると予測できる。
これまで企業は、プロアクティブなデータ保護に投資するよりも、身代金の支払いをカバーするサイバー保険に頼ってきたかもしれない。だが、政府機関からの圧力が強まり、そうはいかなくなりそうだ。
米国政府は既に企業に対し、ランサムウェア攻撃に対するデータ保護の強化を期待していることを表明し始めている。2022年には財務省、運輸保安庁(TSA)、他の機関を通じて、さらに厳しく対策を求めることが予想される。
今後ランサムウェア攻撃を受けて多額の身代金を支払った米国企業のうち少なくとも1社は、米国政府からやり玉に挙げられるだろう。身代金の支払いは、十分な自衛策を怠り、財務省の外国資産管理局に逆らって、米国外の既知の攻撃者への支払いを助長する行為と見なされるからだ。
現在、多様なサービスを提供するクラウドプロバイダー1社に依存している企業は、データの冗長性を確保するために、独立した別のクラウドプロバイダーも利用するようになるだろう。最近のAmazon Web Services(AWS)のサービス障害により、AWSが単一障害点となることが露呈したため、今後この傾向が進むことが、かつてないほど明確になった。クラウド上のデータのバックアップが、優先度の高い課題になるだろう。
クラウド展開の多様化とともに、独立系クラウドプロバイダーをプライマリデータストアとして利用し、多様なサービスを手掛ける従来のプロバイダーの1つをバックアップ先として利用しようとする企業が増えると予想される。
クラウドプロバイダーは大量のHDDを利用している。HDDメーカー各社が最近発表した2022年の容量拡大計画は、30TBの容量を備えたドライブの実現が近づいていることを示している。Western Digitalは、ePMR(エネルギーアシスト垂直磁気記録)とOptiNAND技術、10プラッタのHDD(既存の9プラッタ20TBドライブよりも大容量化)により、30TB HDDが手の届くところまで来ていると述べている。OptiNANDは、NAND型フラッシュメモリと回転ディスクを組み合わせた同社のドライブアーキテクチャだ。
同様に、昭和電工は、30TBドライブの開発をサポートするMAMR(マイクロ波アシスト磁気記録)技術の開発を発表した。Seagate TechnologyもHAMR(熱アシスト磁気記録)技術の開発を続けており、30TBに達する可能性がある第2世代HAMRドライブの開発を発表している。
2022年にはHAMRやMAMRを採用したドライブが本格的に普及し、Backblazeのデータセンターにも導入される見通しだ。
使用される技術が何かにかかわらず、30TBドライブが開発されるのは少なくとも数年先とみられる。だが、HAMRとMAMRは将来のデータストレージ要件を満たす技術になっている。
(半導体不足など)あらゆる業界でサプライチェーンが混乱し、ビジネスの大きな制約となる一方で、最終需要は増加を続けている。この問題は長引く見通しだ。
企業は2022年には、在庫を最小限に抑える「ジャストインタイム」のサプライチェーン管理から、サービスや販売の中断を最小限に抑える「ジャストインケース」のサプライチェーン管理への転換を加速させるだろう。
API接続ソリューションの進化により、企業はベンダーロックインを回避し、クラウド関連ニーズ(ストレージやコンピュート、コンテンツ配信ネットワークなど)を満たしながら、柔軟なマイクロサービスベースのアプリケーションを作成できるようになる。そこで、膨大な通信コストを必要とせずにデータを自由に移動するために、エグレス(送信)料金の値下げを求めるようになる。エグレス料金とはあるクラウドサービスから別のインフラへのデータ送信にかかる費用のことだ。
独立系クラウドプロバイダーの間で、エグレス料金の最小化や撤廃に向けた協力が進むことを背景に、賢明な企業は2022年にAWS、Google、Microsoftといったクラウドプロバイダーに、エグレス料金の引き下げ、マルチクラウドオプション、ベンダーからの独立性を要求し、望ましい成果を得ると予想される。
非構造化データは増加を続け、世界のデータの80〜90%を占めるといわれている。データはクラウドやオンプレミスデータセンター、エッジなど、さまざまな場所に存在している。
賢明な企業は、自社のワークロードに合わせて最適なクラウドプロバイダーを組み合わせて利用したいと考えている。プロバイダーはオープンなエコシステムを構築し、データを環境間で簡単に移動できるようにすることで、より多くの企業から支持を得られるだろう。
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