ガートナー ジャパンは2022年に向けて日本企業が注目すべきクラウドコンピューティングのトレンドを発表した。「次世代サービス・ファクトリー」「人・組織」「ビジネス/主権」の3つをテーマとして挙げた。
この記事は会員限定です。会員登録(無料)すると全てご覧いただけます。
ガートナー ジャパン(以下、ガートナー)は2021年11月18日、2022年に向けて日本企業が注目すべきクラウドコンピューティングのトレンドを発表した。
同社は「次世代サービス・ファクトリー」「人・組織」「ビジネス/主権」の3つをテーマに掲げ、企業全体のクラウドに関するリテラシーとスキルを次のステージに高めて、将来に向けた「新たなアーキテクチャ」を構想し、駆動できるよう、クラウドを前提としたビジネス戦略を加速させていく必要があると指摘する。
・次世代サービス・ファクトリー
「次世代サービス・ファクトリー」に関しては、「分散クラウド」「Kubernetes」「IaC(Infrastructure as Code)」を取り上げた。
これらは従来型の一度作ったら変えないシステムとその作り方から、環境やニーズの変化に迅速に対応できるサービス開発、提供のスタイルへの転換をもたらす技術だと、ガートナーは指摘している。
例えばKubernetesは、コンテナを活用した分散システムを弾力的に実行するフレームワークで、コンテナオーケストレーションのデファクトスタンダードになっている。こうした技術は従来型の手組みによるITの作り方から、近代化されたサービス工場のようなやり方に転換させるものだと説明する。
・「人・組織」
「人・組織」に分類したテーマは、「原理原則ベースのシンプルなガイドライン」と「クラウドCOE」の2つだ。
これまでもクラウドの推進に当たってガイドラインを策定する動きはあった。ところが、クラウドサービスの多様化に伴い、従来のようなガイドラインによるガバナンスが機能しなくなってきているとガートナーは指摘する。これからは、クラウドを使うスキルがある人を前提としたシンプルな原理原則ベースのガイドライン策定が標準になると同社はみている。
・「ビジネス/主権」
「ビジネス/主権」に関するテーマは「インダストリ・クラウド」と「ソブリン・クラウド」。これら2つは、ガートナーが2021年8月に発表した「先進テクノロジのハイプ・サイクル:2021年」で初めて登場した(関連記事)。
インダストリ・クラウドは、基盤となるクラウドサービスの上に構築するソリューション。規制や技術要件とユースケースに対応し、インダストリに必要なクラウド部品をあらかじめ包括的に組み合わせて提供する。一方のソブリン・クラウドは、技術ではなく、トレンドの名称だ。米国と中国のプロバイダーがクラウドサービス市場を支配している中、こうしたプロバイダーへの依存度を高めた場合に「主権」はどうなるかといった点が論点だという。ただ、ガートナーでは、日本ではすぐにソブリン・クラウドが問題になることはないとしている。
ガートナー ジャパンのアナリストでディスティングイッシュトバイスプレジデントを務める亦賀忠明氏は、「今後、クラウドの進化はさらに加速する。例えば、クラウドコンピューティングは注目を集めつつあるメタバースの中核技術になる。クラウドをいち早く採用した先行企業と比べると、取り組んでいない企業は知見、経験で既に10年以上の差が開いている。2022年に向けて、『クラウドの再定義が起こっている』こと、『新たなステージに入りつつある』ことを理解する必要がある」と述べている。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.