インデックスの物理的な統計に関する情報を出力するSQL Server動的管理ビューレファレンス(115)

「Microsoft SQL Server」が稼働するデータベースシステムを運用する管理者に向け、「動的管理ビュー」の活用を軸にしたトラブル対策のためのノウハウを紹介していきます。今回は、インデックスの物理的な統計に関する情報を出力する方法について解説します。

» 2022年05月31日 05時00分 公開
[椎名武史@IT]

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SQL Server動的管理ビュー一覧

 本連載では、「Microsoft SQL Server(以下、SQL Server)」で使用可能な動的管理ビューについて、動作概要や出力内容などを紹介していきます。今回は動的管理関数「sys.dm_db_index_physical_stats」における、インデックスの物理的な統計に関する情報を出力する方法について解説します。対応バージョンは、SQL Server(サポートされている全てのバージョン)、「Azure SQL Database」です。

概要

 SQL Serverでは、テーブルやビューにインデックスを作成することで、効率的にデータ検索やテーブル間の結合を実行できます。データの検索やテーブル間の結合に適したインデックスが作成されていない場合には、データの検索のためにテーブルのデータ全体を読み込む必要があり、クエリの実行は非効率なものとなります。

 「sys.dm_db_index_physical_stats」では、インデックスの物理的な統計に関する情報を出力します。

構文と引数

構文 sys.dm_db_index_physical_stats (database_id, object_id, index_id, partition_number, mode)

列名 データ型 既定値 説明
database_id smallint 0 対象とするデータベースのID
有効な入力値はデータベースのID、「NULL」「0」「DEFAULT」
「NULL」「0」「DEFAULT」を指定した場合、全てのデータベースに関する情報を返す
全てのデータベースを対象とする場合、ほかの引数も「NULL」を指定
object_id int 0 対象とするインデックスがあるテーブルまたはビューのオブジェクトID
有効な入力値は、テーブルおよびビューのID、「NULL」「0」「DEFAULT」
「NULL」「0」「DEFAULT」を指定した場合、データベース内にある全てのテーブルとビューが対象
「NULL」「0」「DEFAULT」を指定した場合は、「index_id」「partition_number」も「NULL」を指定
index_id int -1 対象とするインデックスのID
有効な入力値はインデックスのID、「0」(ヒープの場合)、「NULL」「-1」「DEFAULT」
「NULL」「-1」「DEFAULT」を指定した場合、対象テーブルまたはビュー内の全インデックスが対象
「NULL」「-1」「DEFAULT」を指定した場合は、「partition_number」も「NULL」を指定
partition_number int 0 対象とするオブジェクト内のパーティション番号
有効な入力値は、インデックスまたはヒープのパーティション番号、「NULL」「0」「DEFAULT」
「NULL」「0」「DEFAULT」を指定した場合、インデックスまたはヒープの全パーティションが対象
非パーティションインデックスまたはヒープ場合は「1」
mode sysname LIMITED モードの指定。有効な値は「DEFAULT」「NULL」「LIMITED」「SAMPLED」「DETAILED」のいずれか

出力内容

列名 データ型 説明
database_id smallint データベースのID
object_id int テーブルまたはビューのオブジェクトID
index_id int インデックスのインデックスID
partition_number int パーティション番号
index_type_desc nvarchar(60) インデックスの種類の説明
alloc_unit_type_desc nvarchar(60) アロケーションユニットの種類の説明
index_depth tinyint インデックスレベルの数
index_level tinyint インデックスの現在のレベル
avg_fragmentation_in_percent float インデックスの平均断片化率
fragment_count bigint 断片化数
avg_fragment_size_in_pages float 断片化の平均サイズ
page_count bigint インデックスのページ数
avg_page_space_used_in_percent float 使用可能な領域の平均割合
record_count bigint レコードの総数
ghost_record_count bigint ゴーストレコードの数
version_ghost_record_count bigint スナップショット分離トランザクションによって保持されているゴーストレコードの数
min_record_size_in_bytes int 最小レコードサイズ
max_record_size_in_bytes int 最大レコードサイズ
avg_record_size_in_bytes float 平均レコードサイズ
forwarded_record_count bigint 転送ポインターを持つレコード数
compressed_page_count bigint 圧縮されたページ数
hobt_id bigint ヒープまたはB-treeのID
column_store_delete_buffer_state tinyint 列ストアインデックスのバッファーの状態。次のいずれかになる
 「0」=NOT_APPLICABLE
 「1」=OPEN
 「2」=DRAINING
 「3」=FLUSHING
 「4」=RETIRING
 「5」=READY
適用対象:SQL Server 2016 以降、Azure SQL Database、Azure SQL Managed Instance
column_store_delete_buff_state_desc nvarchar(60) 列ストアインデックスのバッファーの状態の説明。次のいずれかになる
 NOT VALID
 OPEN
 DRAINING
 FLUSHING
 RETIRING
 READY
version_record_count bigint 行バージョンレコードの数
inrow_version_record_count bigint 高速データベース復旧用のバージョンレコードの数
inrow_diff_version_record_count bigint 高速データベース復旧用の別形式のバージョンレコードの数
total_inrow_version_payload_size_in_bytes bigint バージョンレコードの合計サイズ
offrow_regular_version_record_count bigint 外部に保持されているバージョンレコードの数
offrow_long_term_version_record_count bigint 長期間のバージョンレコードの数

動作例

 パーティション分割されたクラスタ化インデックスを持つテーブルにいくつかデータを挿入し、「sys.dm_db_index_physical_stats」を複数のmodeで実行すると、インデックスの物理的な統計に関する情報が出力されました(図1)。

図1 図1 それぞれのモードでは列や行の内容が異なる出力結果が表示された

 modeで「NULL」を指定すると、既定のLIMITEDモードで動作するため、レコード数や高速データベース復旧関連の情報は「NULL」として出力されます。SAMPLEDモードではLIMITEDモードでは表示されなかった列が表示されました。

 さらにDETAILEDモードではインデックスレベルごとに1行出力されるため、より詳細に状況を確認できました。ヒープテーブルに非クラスタ化列ストアインデックスを持つテーブルにデータを挿入すると、先ほどとは「forwarded_record_count」列や「column_store_delete_buffer_state」列が異なる出力結果を確認できました。また、インデックスの状況を詳細に確認するためSAMPLEDモードとDETAILEDモードでは行数が異なっている様子も確認できました(図2)。

図2 図2 SAMPLEDモードとDETAILEDモードでは1行目の各COUNT数などが異なっている

※本Tipsは、「Windows Server 2019」上に「SQL Server 2019」をインストールした環境を想定して解説しています。

筆者紹介

椎名 武史(しいな たけし)

BIPROGY株式会社(ビプロジー)所属。Microsoft MVP for Data Platform(2017〜)。入社以来 SQL Serverの評価/設計/構築/教育などに携わりながらも、主にサポート業務に従事。SQL Serverのトラブル対応で社長賞の表彰を受けた経験も持つ。休日は学生時代の仲間と市民駅伝に参加し、銭湯で汗を流してから飲み会へと流れる。

伊東 敏章(いとう としあき)

BIPROGY株式会社(ビプロジー)所属。入社以来SQL Server一筋で評価/設計/構築/教育などに携わりながらも、主にサポート業務に従事。社内のプログラミングコンテストで4回の優勝経験も持つ。趣味は輪行で週末は自転車を持っての旅行。目標は色々な日本百選を制覇すること。


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