欠落インデックスによる実行プランへの影響に関する情報を出力するSQL Server動的管理ビューレファレンス(119)

「Microsoft SQL Server」が稼働するデータベースシステムを運用する管理者に向け、「動的管理ビュー」の活用を軸にしたトラブル対策のためのノウハウを紹介していきます。今回は、欠落インデックスによる実行プランへの影響に関する情報を出力する方法について解説します。

» 2022年06月14日 05時00分 公開
[伊東敏章@IT]

SQL Server動的管理ビュー一覧

 本連載では、「Microsoft SQL Server(以下、SQL Server)」で使用可能な動的管理ビューについて、動作概要や出力内容などを紹介していきます。今回は動的管理ビュー「sys.dm_db_missing_index_group_stats」における、欠落インデックスによる実行プランへの影響に関する情報を出力する方法について解説します。対応バージョンは、SQL Server(サポートされている全てのバージョン)、「Azure SQL Database」です。

概要

 SQL Serverでは、テーブルやビューにインデックスを作成することで、効率的にデータ検索やテーブル間の結合を実行できます。データ検索やテーブル間の結合に適したインデックスが作成されていない場合には、データ検索のためにテーブルのデータ全体を読み込む必要があり、クエリの実行は非効率なものとなります。

 SQL Serverでは、クエリのコンパイル時に、クエリに適したインデックスが不足していること(欠落インデックス)を検出する機能があります。検出された欠落インデックスはSQL Server Management Studio(SSMS)でクエリの実行プランを表示して確認することや、動的管理ビューを使用して確認することが可能です。

 「sys.dm_db_missing_index_group_stats」動的管理ビューを使用することで、検出された欠落インデックスが無いことによる実行プランコストなどへの影響に関する情報を出力できます。そのため、検出された欠落インデックスを作成した場合の効果などを分析するのに役立ちます。

 なお、「sys.dm_db_missing_index_group_stats」動的管理ビューにおける欠落インデックスの区別には、欠落インデックスのグループIDが使用されます。欠落インデックスに含まれる列の情報を出力できる「sys.dm_db_missing_index_details」動的管理ビューなどでは、欠落インデックスの区別には、欠落インデックスのインデックスIDが使用されます。そのため、欠落インデックスの情報を詳細に確認したい場合には、2つのIDを関連付けるために、併せて「sys.dm_db_missing_index_groups」動的管理ビューも出力しておく必要があります。

出力内容

列名 データ型 説明
group_handle int 欠落インデックスグループのID
unique_compiles bigint この欠落インデックスによって影響を受けるコンパイルおよび再コンパイルの数
user_seeks bigint 欠落インデックスを使用できた場合にユーザークエリによって発生するシーク数
user_scans bigint 欠落インデックスを使用できた場合にユーザークエリによって発生するスキャン数
last_user_seek datetime 欠落インデックスを使用できた場合にユーザークエリによって発生した前回のシーク日時
last_user_scan datetime 欠落インデックスを使用できた場合にユーザークエリによって発生した前回のスキャン日時
avg_total_user_cost float 欠落インデックスを作成することで削減できるユーザークエリの平均コスト
avg_user_impact float この欠落インデックスが実装された場合に減少するユーザークエリのコストの平均パーセンテージ(%)
system_seeks bigint 欠落インデックスを使用できた場合にシステムクエリ(Auto Statsクエリなど)によって発生するシーク数
system_scans bigint 欠落インデックスを使用できた場合にシステムクエリによって発生するスキャン数
last_system_seek datetime 欠落インデックスを使用できた場合にシステムクエリによって発生した前回のシーク日時
last_system_scan datetime 欠落インデックスを使用できた場合にシステムクエリによって発生した前回のスキャン日時
avg_total_system_cost float 欠落インデックスを作成することで削減できるシステムクエリの平均コスト
avg_system_impact float この欠落インデックスが実装された場合に減少するシステムクエリのコストの平均パーセンテージ(%)

動作例

 動作確認用のテーブルを作成し、SELECTクエリを実行しました。このテーブルにはインデックスを作成していないため、SSMSで実行プランを表示すると「不足しているインデックス」(欠落インデックス)が表示されました(図1)。

図1 図1 SSMSで欠落インデックスが表示されたところ

 次に、「sys.dm_db_missing_index_group_stats」動的管理ビューを出力します。SELECTクエリにより欠落インデックスが検出されたため、結果が1行表示されました(図2)。

図2 図2 欠落インデックスの情報が出力された

 「sys.dm_db_missing_index_group_stats」動的管理ビューには、欠落インデックスによるクエリ実行への影響に関する情報が含まれます。この動的管理ビューの出力だけでは、必要なインデックスの定義や欠落インデックスが検出されたクエリの情報は確認することができません。

 「sys.dm_db_missing_index_group_stats」動的管理ビューに、欠落インデックスの列の情報を出力できる「sys.dm_db_missing_index_details」動的管理ビューや、欠落インデックスのインデックスIDとグループIDを関連付ける「sys.dm_db_missing_index_groups」動的管理ビューを組み合わせることで、欠落インデックスの列情報と実行プラン作成への影響などを対応付けて確認することができます(図3)。

図3 図3 欠落インデックスの列情報と実行プランへの影響を組み合わせて出力したところ

 なお、「sys.dm_db_missing_index_group_stats」動的管理ビューは欠落インデックスごとの出力です。同じ定義の欠落インデックスが検出されたクエリが複数ある場合には、それらのクエリは欠落インデックスにより集計されて出力されます。クエリごとに出力したい場合には、クエリハッシュごとに実行プランへの影響が出力される「sys.dm_db_missing_index_group_stats_query」動的管理ビューを使用します(図4)。

図4 図4 「sys.dm_db_missing_index_group_stats」動的管理ビューは欠落インデックスで集計されていることが分かる

※本Tipsは、「Windows Server 2019」上に「SQL Server 2019」をインストールした環境を想定して解説しています。

筆者紹介

椎名 武史(しいな たけし)

BIPROGY株式会社(ビプロジー)所属。Microsoft MVP for Data Platform(2017〜)。入社以来 SQL Serverの評価/設計/構築/教育などに携わりながらも、主にサポート業務に従事。SQL Serverのトラブル対応で社長賞の表彰を受けた経験も持つ。休日は学生時代の仲間と市民駅伝に参加し、銭湯で汗を流してから飲み会へと流れる。

伊東 敏章(いとう としあき)

BIPROGY株式会社(ビプロジー)所属。入社以来SQL Server一筋で評価/設計/構築/教育などに携わりながらも、主にサポート業務に従事。社内のプログラミングコンテストで4回の優勝経験も持つ。趣味は輪行で週末は自転車を持っての旅行。目標は色々な日本百選を制覇すること。


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