インメモリOLTPガベージコレクションワーカーキューの情報を出力するSQL Server動的管理ビューレファレンス(137)

「Microsoft SQL Server」が稼働するデータベースシステムを運用する管理者に向け、「動的管理ビュー」の活用を軸にしたトラブル対策のためのノウハウを紹介していきます。今回は、インメモリOLTPガベージコレクションワーカーキューの情報の出力について解説します。

» 2022年08月16日 05時00分 公開
[伊東敏章@IT]

この記事は会員限定です。会員登録(無料)すると全てご覧いただけます。

SQL Server動的管理ビュー一覧

 本連載では、「Microsoft SQL Server(以下、SQL Server)」で使用可能な動的管理ビューについて、動作概要や出力内容などを紹介していきます。今回は動的管理ビュー「sys.dm_xtp_gc_queue_stats」における、インメモリOLTPガベージコレクションワーカーキューの情報の出力について解説します。対応バージョンは、SQL Server(サポートされている全てのバージョン)、「Azure SQL Database」「Azure SQL Managed Instance」です。

概要

 SQL ServerではインメモリOLTPを使用することでトランザクション処理やデータ取得、データロード、一時データ・シナリオのパフォーマンスを最適化できます。インメモリOLTPでは、データアクセスやトランザクション実行は、従来のディスクベースのオブジェクトとは異なるアルゴリズムで処理されます。

 メモリ最適化テーブルのデータ行が削除されると、削除されたデータ行はインメモリOLTPガベージコレクションスレッドによってメモリ解放の対象になります。ガベージコレクションの作業項目は、ガベージコレクションワーカーキューによって管理されます。

 「sys.dm_xtp_gc_queue_stats」動的管理ビューを使用することで、ガベージコレクションワーカーキューの現在の作業項目数などの情報を出力することができます。

出力内容

列名 データ型 説明
queue_id int キューの識別子
total_enqueues bigint サーバが起動してからこのキューにエンキューされたガベージコレクション作業項目の総数
total_dequeues bigint サーバが起動してからこのキューからデキューされたガベージコレクション作業項目の総数
current_queue_depth bigint 現在このキューにあるガベージコレクション作業項目の数
maximum_queue_depth bigint このキューに同時に存在した最大項目数
last_service_ticks bigint キューが最後に処理されたときのCPUタイマー刻み

動作例

 事前にデータベースでインメモリOLTPを構成し、メモリ最適化テーブルの作成を行います。作成したメモリ最適化テーブルに多数のデータを挿入した後、「sys.dm_xtp_gc_queue_stats」動的管理ビューを出力しました(図1)。

図1 図1 データの挿入後に「sys.dm_xtp_gc_queue_stats」動的管理ビューを出力したところ

 4つのガベージコレクションワーカーキューの情報が出力されました。この時点ではデータの削除はしていないため、「total_enqueues」列のエンキューされた作業項目の合計は非常に小さい値になっていました。

 次に、このテーブルからデータを削除して、もう一度「sys.dm_xtp_gc_queue_stats」動的管理ビューを出力しました(図2)。

図2 図2 データの削除後に「sys.dm_xtp_gc_queue_stats」動的管理ビューを出力したところ

 「total_enqueues」列のエンキューされた作業項目の数が、大きく増えました。また、「current_queue_depth」列の値が「0」であることから、ガベージコレクションによって処理されていない作業項目は残っておらず、正常にガベージコレクションが動作していそうなことも分かります。

 なお、キューの数は環境のコア数に依存するようです。動作確認に用いた環境は4コアの環境のため、キューの数は「4」になっており、2コアに減らしたところキューの数も「2」に減少しました(図3)。

図3 図3 2コア環境で「sys.dm_xtp_gc_queue_stats」動的管理ビューを出力したところ

※本Tipsは、「Windows Server 2019」上に「SQL Server 2019」をインストールした環境を想定して解説しています。

筆者紹介

椎名 武史(しいな たけし)

BIPROGY株式会社(ビプロジー)所属。Microsoft MVP for Data Platform(2017〜)。入社以来 SQL Serverの評価/設計/構築/教育などに携わりながらも、主にサポート業務に従事。SQL Serverのトラブル対応で社長賞の表彰を受けた経験も持つ。休日は学生時代の仲間と市民駅伝に参加し、銭湯で汗を流してから飲み会へと流れる。

伊東 敏章(いとう としあき)

BIPROGY株式会社(ビプロジー)所属。入社以来SQL Server一筋で評価/設計/構築/教育などに携わりながらも、主にサポート業務に従事。社内のプログラミングコンテストで4回の優勝経験も持つ。趣味は輪行で週末は自転車を持っての旅行。目標は色々な日本百選を制覇すること。


Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

スポンサーからのお知らせPR

注目のテーマ

Microsoft & Windows最前線2025
AI for エンジニアリング
ローコード/ノーコード セントラル by @IT - ITエンジニアがビジネスの中心で活躍する組織へ
Cloud Native Central by @IT - スケーラブルな能力を組織に
システム開発ノウハウ 【発注ナビ】PR
あなたにおすすめの記事PR

RSSについて

アイティメディアIDについて

メールマガジン登録

@ITのメールマガジンは、 もちろん、すべて無料です。ぜひメールマガジンをご購読ください。