非リレーショナルのデータベース管理システム(DBMS)市場において、専業ベンダーのシェアは大きくない。1社のみが独走しているのが現状だ。今回は、各社の割合と今後の展開について考える。
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ガートナーの米国本社発のオフィシャルサイト「Smarter with Gartner」と、ガートナー アナリストらのブログサイト「Gartner Blog Network」から、@IT編集部が独自の視点で“読むべき記事”をピックアップして翻訳。グローバルのITトレンドを先取りし「今、何が起きているのか、起きようとしているのか」を展望する。
2022年5月に公開した記事「2021年のDBMS市場の主要動向――クラウド化がキーワードに」で、データベース管理システム(DBMS)市場が過去5年間に大きく成長し、2021年には世界売上高が前年比で22.3%増加し、800億ドルに迫ったことを指摘した。
さらに、8月上旬に公開した記事「2021年のDBMS市場――非リレーショナルDBMS専業ベンダーの5年間の動向とともに振り返る」では、非リレーショナルDBMS専業ベンダー(Aerospike、Couchbase、DataStax、InterSystems、MarkLogic、MongoDB、Neo4j、Redis)に注目し、2021年にこれらのベンダーの合計売上高が23億ドルに達したことに触れた。その大部分(75%)を占めるのが、MongoDB、InterSystems、MarkLogicの3社だ。
だが、非リレーショナルDBMS市場に占める専業ベンダーのシェアは小さい。Gartnerの推計によると、2021年の非リレーショナルDBMSの世界売上高は148億ドルだ。これはDBMSの世界売上高の19%に当たり、この割合は2017年の8%から2倍以上に増加している。
こうした非リレーショナルDBMS市場では、1社のベンダーが大きく優位に立っている。それはAmazon Web Services(AWS)だ。2021年における同社の非リレーショナルDBMSの売上高は64億ドルで、同市場でのシェアは43%を超える。次いでGoogleが28億ドルで、シェアは18.6%と健闘している。これに続くAlibaba、MongoDB、Clouderaの3社の合計売上高が25億ドル、他のベンダーの合計売上高が31億ドルだ。
AWSの圧倒的な強さは、5月に公開した記事で論じたDBMS市場の主要なトレンドを反映している。それは、クラウドが新しいユースケースを促進し、新興ベンダーを市場の上位に押し上げているというものだ。こうした動きの多くは非リレーショナルDBMSで生まれており、クラウドDBMSの売上高が最も高いAWSが、その恩恵を最も受けている。
最大手クラスのDBMSベンダーの一部は、なかなかこの流れに乗れずにいる。Microsoftは2021年に非リレーショナルDBMSの売上高が5億2800万ドルと5億ドルの大台に乗った。これに対し、IBMは5200万ドルと大きく後れを取り、Oracleは2700万ドルとさらに引き離されている。ただし、いずれも現在、クラウドで非リレーショナルサービスを提供しており、以下のサービスを推進している。
全てのベンダーが全てのカテゴリーを手掛けているわけではない。だが、ベンダーのポートフォリオは拡大していくはずだ。クラウドではポートフォリオが重要だからだ。顧客は選択肢を求めており、全てのベンダーが選択肢の提供に力を入れている。
全体的に、全てのベンダーが一定のシェアを獲得すると考えられる。中でもクラウドプラットフォームプロバイダーが、これまでのGoogleのように大きな存在感を発揮しそうだ。Alibaba(2021年の非リレーショナルDBMSの売上高:8億6200万ドル)、HUAWEI(同:5億4200万ドル)、Microsoftが引き続き順調に前進し、IBMとOracleもペースを挽回するとみられる。
だが、市場トップのAWSは強固な地位を築いており、優位性を保つ見通しだ。運用の効率化とガバナンスの強化に向けてポートフォリオの統合に乗り出しているため、ライバル企業にとっては競争のハードルがさらに上がりそうだ。ここしばらく、AWSは勢力を堅持すると予想される。非リレーショナルDBMS市場は引き続き成長するだろうが、当面の市場競争はあまり激しくなさそうだ。
出典:DBMS Market Transformation 2021: One Big Nonrelational Leader(Gartner Blog Network)
VP Analyst
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