「Microsoft SQL Server」が稼働するデータベースシステムを運用する管理者に向け、「動的管理ビュー」の活用を軸にしたトラブル対策のためのノウハウを紹介していきます。今回は、対象オブジェクトを参照する参照元エンティティの情報を出力する方法について解説します。
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本連載では、「Microsoft SQL Server(以下、SQL Server)」で使用可能な動的管理ビューについて、動作概要や出力内容などを紹介していきます。今回は動的管理ビュー「sys.dm_sql_referencing_entities」における、対象オブジェクトを参照する参照元エンティティの情報を出力する方法について解説します。対応バージョンは、SQL Server(サポートされている全てのバージョン)、「Azure SQL Database」「Azure SQL Managed Instance」です。
「sys.dm_sql_referencing_entities」動的管理関数では、パラメーターに対象とするオブジェクトを指定することで、そのオブジェクトを参照している別のユーザー定義オブジェクトの情報の一覧を出力できます。
例えば、パラメーターとしてテーブルを引数とすることで、そのテーブルを参照するビューやストアドプロシージャ、ユーザー定義関数などの一覧を参照元エンティティとして出力できます。
構文 sys.dm_sql_referencing_entities ( '[schema_name.] referenced_entity_name','referenced_class' )
引数名 | データ型 | 説明 |
---|---|---|
[schema_name.] referenced_entity_name |
nvarchar(517) | 参照先エンティティの名前 参照先クラスがPARTITION_FUNCTION以外の場合、schema_nameは必須 |
referenced_class | nvarchar(60) | 参照先エンティティのクラス 下記のいずれかの値 OBJECT TYPE XML_SCHEMA_COLLECTION PARTITION_FUNCTION 1つのクラスのみ指定できる |
列名 | データ型 | 説明 |
---|---|---|
referencing_schema_name | sysname | 参照元エンティティが属しているスキーマ データベースレベルおよびサーバレベルのDDLトリガーの場合はNULL |
referencing_entity_name | sysname | 参照元エンティティの名前 |
referencing_id | int | 参照元エンティティのID |
referencing_class | tinyint | 参照元エンティティのクラス 「1」=OBJECT 「12」=DATABASE_DDL_TRIGGER 「13」=SERVER_DDL_TRIGGER |
referencing_class_desc | nvarchar(60) | 参照元エンティティのクラスの説明 |
is_caller_dependent | bit | 参照先エンティティが呼び出し元のスキーマに依存するため、参照先エンティティIDの解決が実行時に行われることを示す 「1」=参照元エンティティは、エンティティを参照する可能性がある。ただし、参照先エンティティIDの解決は呼び出し元に依存しているため、特定できない 「0」=参照先エンティティは呼び出し元に依存しない |
テーブルを参照するストアドプロシージャを、2つ作成しました。2つのストアドプロシージャは、SELECTステートメントの参照テーブルにおけるスキーマ指定の有無が異なります(図1)。
ストアドプロシージャが参照するテーブルを引数に指定して、「sys.dm_sql_referencing_entities」動的管理関数を出力しました。特に、スキーマの有無などに関係なく、引数で指定したテーブルを参照するストアドプロシージャの情報が出力されました(図2)。
次に、ユーザー定義タイプでも試してみます。作成したユーザー定義タイプを使用するテーブルと、ストアドプロシージャを作成しました(図3)。
テーブルとストアドプロシージャが参照するユーザー定義タイプを引数に指定して「sys.dm_sql_referencing_entities」動的管理関数を出力しました(図4)。
ストアドプロシージャの情報は出力されましたが、テーブルの情報は出力されませんでした。Microsoftの「sys.dm_sql_referencing_entities」のドキュメントによると、テーブルは参照元エンティティとして追跡される条件があり、ユーザー定義型の使用だけでは追跡される条件に該当しないため、出力されなかったようです。
※本Tipsは、「Windows Server 2019」上に「SQL Server 2019」をインストールした環境を想定して解説しています。
BIPROGY株式会社(ビプロジー)所属。Microsoft MVP for Data Platform(2017〜)。入社以来 SQL Serverの評価/設計/構築/教育などに携わりながらも、主にサポート業務に従事。SQL Serverのトラブル対応で社長賞の表彰を受けた経験も持つ。休日は学生時代の仲間と市民駅伝に参加し、銭湯で汗を流してから飲み会へと流れる。
BIPROGY株式会社(ビプロジー)所属。入社以来SQL Server一筋で評価/設計/構築/教育などに携わりながらも、主にサポート業務に従事。社内のプログラミングコンテストで4回の優勝経験も持つ。趣味は輪行で週末は自転車を持っての旅行。目標は色々な日本百選を制覇すること。
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