円安で無視できないAWSコスト増、AWSジャパンが説明する「こうすれば安くなります」クラウドネイティブなアーキテクチャへの刷新も重要

2022年9月16日、AWSジャパンは「今だからこそ考える最適なクラウド活用」というテーマで記者説明会を開催した。円安で利用コスト増への対策として「Cloud Financial Management」や「Savings Plans」などの活用方法を説明した。

» 2022年09月27日 10時30分 公開
[ANDG CO., LTD.]

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 2022年3月時点で1ドル110円台だった円相場は、9月に入り一時1ドル140円台を記録するなど円安が加速している。この円安局面は、多くの企業で活用が進んでいるパブリッククラウドの利用にも影響がある。ドル価格体系のサービスの場合、支払日の為替レートに基づいた請求となるためだ。

 クラウドの真の価値はコスト削減ではなくリソースの調達速度を含めたアジリティにあるとはいえ、急激な為替変動による利用コスト増は、クラウド利用企業にとって課題となる状況だ。

 こうした状況に対し、アマゾンウェブサービスジャパン(AWSジャパン)は2022年9月16日、「今だからこそ考える最適なクラウド活用」というテーマで記者説明会を開催。同社の佐藤有紀子氏(事業開発統括本部 統括本部長 兼サステナビリティ推進室 室長)と、瀧澤与一氏(パブリックセクター技術統括本部 統括本部長 / プリンシパルソリューションアーキテクト)が、Amazon Web Services(AWS)におけるコスト最適化や利用コストの削減方法を説明した。

顧客のクラウド利用のフェーズに合わせて必要な支援を提供

AWSジャパン 事業開発統括本部 統括本部長 兼サステナビリティ推進室 室長 佐藤有紀子氏 AWSジャパン 事業開発統括本部 統括本部長 兼サステナビリティ推進室 室長 佐藤有紀子氏

 佐藤氏は、クラウドに移行しても円安の影響でコスト効果を実感しづらいといった顧客の懸念があるとし、課題解消のための支援プログラムを紹介した。AWSへの移行後のコスト最適化を支援する「Cloud Financial Management(CFM)」、組織横断的なワークショップを支援する「Financial Hackathonワークショップ(FinHack)」、持続的な最適化のためのケイパビリティ可視化支援「Capability Assessment(CFM-CA)」だ。

 「評価の段階では『Cloud Economics』、移行してもコストが下がっていないと感じた場合はCFM、そして組織横断的な取り組みのためのFinHack、さらにケイパビリティの可視化ということでCFMの中のCFM-CAを用意している。クラウドを利用する前、利用から間もない時期、そして何年か経過した時期と、利用企業のフェーズに合わせ、必要な支援を適切に提供していく」(佐藤氏)

AWSへの移行後も利用状況を可視化しながら継続的にコスト最適化できる AWSへの移行後も利用状況を可視化しながら継続的にコスト最適化できる

 2020年に提供を開始したCFMは、2022年8月までに200件以上の提供実績があり、コスト削減効果は平均で15〜20%に達しているという。

AWSへの移行後も利用状況を可視化しながら継続的にコスト最適化できる

 AWSジャパンは、ITコストの削減、最適化の観点において「AWS Cloud Value Framework」を提供している。これは「コスト削減 (TCO)」「スタッフの生産性」「オペレーショナルレジリエンス」「ビジネスの俊敏性」の4つの観点をまとめたフレームワークだ。1500人のAWSユーザーによる移行前と移行後の改善を調査した結果では、27.4%のコスト削減や、障害が発生したときのダウンタイムが56.7%減少したなどの効果が出ているという。

 瀧澤氏は「オンプレミスと比べてAWSはさまざまな観点でメリットが大きい。それぞれの項目で最適化を進めていくことで、利用の効果をさらに大きくしていくことができる」と述べる。

 「コスト最適化の状況をセルフサービスでチェックできるツールとして『AWS Trusted Advisor』を提供している。コスト最適化の柱には14のチェック項目があり、コストが最適かどうかをチェックできる」(瀧澤氏)

AWSアカウントを評価し、料金節約の可能性を確認できるAWS Trusted Advisor AWSアカウントを評価し、料金節約の可能性を確認できるAWS Trusted Advisor

最適なプランの選択が、コスト削減につながる

AWSジャパン パブリックセクター技術統括本部 統括本部長 / プリンシパルソリューションアーキテクト 瀧澤与一氏 AWSジャパン パブリックセクター技術統括本部 統括本部長 / プリンシパルソリューションアーキテクト 瀧澤与一氏

 瀧澤氏は、複数の料金プランから選択することでコストを削減する方法も紹介した。その1つが一定期間の契約を前提とした「リザーブドインスタンス(RI)」だ。契約期間中のRI権利の条件を柔軟に変更する可能性があるかどうかで、スタンダード(変更不可)とコンバーティブル(変更可)を選択できる。スタンダードの場合、RI権利の変更は不可だが、割引率が最も高い。コンバーティブルは期間中に柔軟な権利変更が可能だが、スタンダードよりも割引率は低い。

 「オンデマンドインスタンス(時間単位の請求)とRIをミックスして使うこともできる。例えばサーバを100台使っている状況なら、60台はRI、40台はオンデマンドインスタンスを選択するような使い方もできる。また、全額前払いの支払い方法も選択できる。今月時点の為替レートに基づいて料金が設定されるため、円安が今後も進行すると予測している場合は全額前払いの方法を選ぶとよいのでは」(瀧澤氏)

リザーブドインスタンスにおけるクラス、割引率の違い リザーブドインスタンスにおけるクラス、割引率の違い

RIにもさまざまなクラス、割引率がある

 より柔軟性の高いプランとして提供されているのが「Savings Plans」だ。RIと同様、料金プランのオプションが複数ある。Savings PlansはRIの利点全てを活用できる上、柔軟性が向上し、管理業務も削減されるという。

 Savings Plansには「Compute Savings Plans」と「EC2 Instance Savings Plans」がある。「Compute Savings Plans」はコンバーティブルRIと同様に最大66%引きされる。「EC2 Instance Savings Plans」は特定のAWSリージョンで適用可能だ。選択されたインスタンスファミリー(C5やM5など)で最大72%引きされる。

料金プランが複数あるため、ニーズに応じて自由にコントロールできる 料金プランが複数あるため、ニーズに応じて自由にコントロールできる

 「CFMのプログラムを通じてリソース状況を見ながら、Savings Plansを使うべきなのかRIを使うべきなのか、それ以外を使うべきなのかを当社のソリューションアーキテクトが提案、支援する」(瀧澤氏)

用途に応じてストレージタイプを変更することでコストを削減

 コストを削減する別のオプションとして瀧澤氏はファイルサーバサービスの「Amazon FSx for Windows File Server」を紹介した。自動的に重複しているファイルを探して削除する機能を持っており、データ容量に基づくストレージコストを削減できるとした。

 またストレージサービスの「Amazon S3」は保存容量に対して課金されるため、用途に応じてストレージタイプを変更することでコストを削減できるという。Amazon S3の「Intelligent Tiering」を利用すると、30日間のアクセス状況からストレージの使い方と要件とコストのバランスをチェックし、最適なストレージタイプに自動的に移動する。「ユーザーの利便性は変わらずに最適なストレージの配置になるのが特徴だ」と瀧澤氏は述べた。

ファイルの利用状況に応じて保存先サービスを変更することで、容量あたりのコストを最適化 ファイルの利用状況に応じて保存先サービスを変更することで、容量当たりのコストを最適化

 瀧澤氏は最後に、AWSが用意したマネージドサービスやサーバレスコンピューティングの仕組みを活用するなど、アプリケーションのアーキテクチャをクラウドネイティブなアーキテクチャに最適化させていくことでコスト効果を高められると説明した。

従来の3層アーキテクチャ(左図)より、クラウドネイティブなアーキテクチャ(右図)に変えていくことでコスト効果が得られるとした 従来の3層アーキテクチャ(左図)より、クラウドネイティブなアーキテクチャ(右図)に変えていくことでコスト効果が得られるとした

 「『AWS Well-Architected』フレームワークに基づいて、コスト最適化の方法など、顧客とって最適なアーキテクチャを提供していきたい」(瀧澤氏)

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