IPAは「DX白書2023」を公開した。国内DX事例の分析に基づいてDXへの取り組み状況を概観し、日米企業を対象としたアンケート調査結果の経年変化や最新動向、DX推進への課題や求められる取り組みの方向性などについて解説している。
この記事は会員限定です。会員登録(無料)すると全てご覧いただけます。
情報処理推進機構(IPA)は2023年2月9日、「DX白書2023」を公開した。IPAによると「日米企業のDX動向を比較し、戦略や人材、技術の面からDX(デジタルトランスフォーメーション)推進の現状や課題などを包括的に解説している」という。
「DX白書2021」に続く第2弾である本白書では、新たに154件のDX事例を分析し、その結果を「企業規模」「産業」「地域」の3つの軸で俯瞰(ふかん)した図(地域別俯瞰図)にまとめている。これによって「規模や業界、地域性など、自社の状況とニーズに合ったDX事例を探しやすくなった」(IPA)という。
例えば、北海道では農業でのデジタル活用、甲信越ではドローンによる森林調査など地域産業での活用、東北や北陸、四国では働き手の減少や高齢化といった地域課題の解決のためにDXが進んでいることが分かる。
DXの進捗(しんちょく)に関する調査結果を見ると「DXに取り組んでいる」という日本企業の割合は69.3%となっており、前回調査(2021年度調査)よりも13.5ポイント増加した。
だが、「全社戦略に基づいてDXに取り組んでいる」という企業の割合は54.2%となっており、米国企業と比べると13.9ポイント低かった。成果に注目しても、「DXで成果が出ている」とした日本企業は58.0%だったのに対し、米国企業は89.0%と大きく差が開いている。
成果が出た取り組み内容について見ると「データのデジタル化」「業務効率化」などの項目については日本と米国で大きな違いはなく、「新規の製品やサービスの創出」「ビジネスモデルの変革」といった項目での差が目立った。これについてIPAは「日本企業のDXは、デジタイゼーションやデジタライゼーションの領域で成果は上がっているものの、顧客価値の創出やビジネスモデルの変革といったトランスフォーメーションに関しては成果創出が不十分な状態だ」と分析している。
日本ではDXを推進する人材の不足が課題となっているが、米国では違うようだ。DX推進人材が「充足している」と回答した企業の割合は日本はわずか10.9%だったのに対し、米国は73.4%だった。DXを推進する人材像の設定状況については「(人材像を)設定し、社内に周知している」という企業の割合は、日本は18.4%だったが米国では約半数(48.2%)だった。IPAは「人材の獲得や確保を進める上では漠然と人材の獲得・育成に取り組むのではなく、まず自社にとって必要な人材を明確化することが重要だ」としている。
ITシステム開発に関する技術の活用状況を見ると、SaaS(Software as a Service)を活用する企業の割合は日本では40.4%、米国では53.4%と大差なかった。一方、「マイクロサービス/API」は、日本の21.1%に対して米国は57.5%、「コンテナ/コンテナ運用自動化」は日本の10.5%に対して米国は52.1%とそれぞれ差が大きく、IPAは「日本では、ビジネス環境の変化に迅速に対応できるITシステム構築のための技術に対して活用度合いが低い」と指摘している。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.