2022年のSSD故障率、メーカー5社のうち故障率が高いのは?メーカー5社/13モデルを調査

クラウドストレージやクラウドバックアップサービスを提供するBackblazeは、2022年の自社データセンターにおけるSSD使用統計レポートを発表した。

» 2023年03月17日 08時00分 公開
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 クラウドストレージやクラウドバックアップサービスを提供するBackblazeは2023年3月9日(米国時間)、2022年の自社データセンターにおけるSSD使用統計レポートを発表した。

 2022年12月31日時点で、Backblazeは世界中のデータセンターで23万5608台のドライブを管理していた。そのうち4299台が起動ドライブ、23万1309台がデータドライブで、起動ドライブのうち2906台がSSD、他の起動ドライブとデータドライブ全てがHDDだ。

 同レポートではこの2906台のSSDについて、2022年のAFR(Annualized Failure Rate:年間平均故障率)、2020年、2021年、2022年のAFRの比較、生涯AFRを報告している。また、2022年にこれらのSSDとHDDの温度を測定した結果も比較している。

 なお、Backblazeは上記の23万1309台のデータドライブ(HDD)については、2022年の使用統計レポートを2023年1月末に発表している。

SSD起動ドライブの概要

 Backblazeは、以前はストレージサーバの起動ドライブとしてHDDを使っていたが、2018年第4四半期から、全ての新しいストレージサーバの起動ドライブとして、また、故障したHDD起動ドライブの代替として、SSDを採用している。

 Backblazeのデータセンターにおける起動ドライブの役割は、ストレージサーバの起動だけではない。起動ドライブは毎日、ストレージサーバが生成するログファイルや一時ファイルの読み書き、削除も行っている。このワークロードは、レポート対象の全てのSSDで同様だ。

 2022年12月末時点でBackblazeが使用していた2906台のSSDは、5社のメーカーの13モデルで、そのほとんどがコンシューマーグレードだ。その理由については後述する。

2022年のSSDのAFR(年間平均故障率)

Backblazeがデータセンターで使用するSSDの2022年のAFR AvgAge(months):平均使用期間(月数) Drive Days:年間の正常稼働日数 Drive Failures:ドライブの故障件数 (提供:Backblaze)

 Backblazeはこの統計結果について、次のように解説している。

  • 2022年には、13モデルのうち7モデルに故障がなかった。ただし、7モデルのうち6モデルは、稼働日数が1万日未満と限られており、AFRについて信頼できる予測を行うためのデータが不十分だ
  • Dell Technologies(以下、Dell)の「DELLBOSS VD」は、2022年の故障がゼロで、稼働日数が10万日を超えており、優れた安定性を示した。だが、これはサーバ用のPCIeカードに搭載のM.2 SSDであり、一般的には入手できないかもしれない
  • Dell SSDの他、3モデルが2022年に10万日以上の稼働日数を記録しており、AFRを検討するのに十分なデータがある。このうちSeagate Technology(以下、Seagate)の「ZA250CM10003」(別名:「BarraCuda 120 SSD ZA250CM10003」)のAFRが0.73%と最も低く、Crucialの「CT250MX500SSD1」が1.04%、Seagateの「ZA250CM10002」(別名:「BarraCuda SSD ZA250CM10002」)が1.98%だった

2020年、2021年、2022年のSSDのAFR(年間平均故障率)

Backblazeがデータセンターで使用するSSDの2020年、2021年、2022年のAFR(提供:Backblaze)

 Backblazeはこの統計結果について、次のように解説している。

  • Crucialの「CT250MX500SSD1」は、2021年に初期故障が2回発生したが、2022年はうまく改善した
  • 2022年には新たに4モデルが導入され、いずれも年末まで故障しなかった。ただし、AFRのパターンを識別するのに十分な稼働日数に達していない
  • Seagateの250GB SSDのうち2モデルは、3年間使用されてきたが、このうち「ZA250CM10003」は、3年間を通じて1%以下のAFRを実現している。これに対し、「ZA250CM10002」のAFRは、2022年に2%近くまで悪化した。この2つでは、ZA250CM10003の方が約1年新しいモデルであり、アイドル時の消費電力も少ないが、両者はこれら以外の点ではほとんど違わない。2023年のAFRの動向がどうなるかは興味深い

SSDの温度

 SSDメーカーがさまざまなSMARTデータを記録するために使用している属性、さらには命名には、あまり一貫性がない。そうした中で、ほぼ一貫して採用されていると思われるSMART属性が、ドライブの温度だ。

 SMART 194では、SSDの内部温度がセ氏で記録される。2022年に使用されたSSDの月別の平均温度を以下に示す。

2022年におけるSSDの月別の平均温度(提供:Backblaze)

 Backblazeはこの統計結果について、次のように解説している。

  • 2022年の月別の平均温度は、最低が34.4度、最高が35.4度で、その差は1度しかない
  • 2022年通年の平均温度は34.9度となった。これに対し、同じストレージサーバのHDDの通年の平均温度は、29.1度だった。この差は、「SSDの方がHDDよりも低温で動作する」という通念に反しているように思われる。SSDの方がHDDより平均温度が高い理由として考えられることの一つは、Backblazeの全てのストレージサーバで、起動ドライブがデータドライブよりもコールドアイル(冷気通路)から遠いところにあることだ
  • 2022年の全てのSSDにおける温度変化は、セ氏20度(4回の測定)から61度(1回の測定)までの範囲だった。SSDの温度測定結果の分布を以下に示す
2022年におけるSSDの温度測定結果の分布(提供:Backblaze)

SSDの生涯AFR

 生涯AFRは、所定のSSDモデルがBackblazeのシステムでサービスを開始して以来の全期間のデータに基づいている。このデータは2018年第4四半期までさかのぼるが、ほとんどのモデルは過去3年間にサービスインされた。Backblazeが2022年末時点で使用していた全てのSSDモデルの生涯AFRを以下に示す。

Backblazeがデータセンターで使用するSSDの生涯AFR(提供:Backblaze)

 Backblazeはこの統計結果について、次のように解説している。

  • Backblazeが2022年末に本番運用していた全SSDの生涯AFRは、0.89%となり、1年前(1.04%)よりも低下した。
  • 非常に大きな信頼区間が幾つかある。それは、それらのモデルのデータ量(稼働日数)が限られていることに起因している。より多くのデータを蓄積することで、信頼区間はより正確になる見通しだ
  • SSDモデルの信頼区間は1.0%以下であることが望ましい。この基準を満たすモデルは以下の3つに限られる
    • Dell DELLBOSS VD:生涯AFRは0.00%
    • Seagate ZA250CM10003:生涯AFRは0.66%
    • Seagate ZA250CM10002:生涯AFRは0.96%
  • Dell DELLBOSS VDは、前述したように、PCIeカードに搭載のM.2 SSDであり、一般的には入手できない可能性がある。Seagateの2モデルは、コンシューマーレベルのSSDだ。Backblazeでは、安価なコンシューマーレベルのSSDがニーズに合っている。起動ドライブには顧客のデータはなく、起動ファイル、ログファイル、一時ファイルがあるだけだからだ

 一方、Backblazeが最近、ストレージサーバを購入するようになったSupermicroやDellは、全てのコンポーネントをバンドルして、ストレージサーバ1台当たりの単価を設定している。「そのバンドルにエンタープライズクラスのSSDや、PCIeカード上のM.2 SSDが含まれている場合は、それで問題ない」と、Backblazeは補足している。

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