LLM、Platform Engineeringなど、VMwareの年次カンファレンスでの重要発表をまとめたVMware Explore 2023

VMwareが年次カンファレンス「VMware Explore 2023」で多数の発表を行った。その中には「LLM」「Platform Engineering」「エッジ」などのキーワードが散りばめられていた。主要な発表をまとめた。

» 2023年08月25日 08時00分 公開
[三木泉@IT]

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 VMwareは2023年8月22日(米国時間)より年次カンファレンス「VMware Explore 2023」を開催し、多数の新製品や新機能を紹介した。本記事では「組織内の大規模言語モデル稼働環境」「クラウドネイティブ基盤へのPlatform Engineering機能投入」「エッジのライフサイクル管理」「ストレージの強化」「ネットワークのマルチクラウド対応」など、主要な発表について紹介する。

LLM利用の課題にフォーカスする「Private AI」

 VMwareは企業における生成AIの活用を支援する取り組みとして「VMware Private AI」を発表した。企業が自らLLMのトレーニング/ファインチューニングおよび推論を進められる環境を整備していく。

 Private AIの目的は、「データ漏えいリスク」「利用するLLMの選択肢」「コスト効率」「パフォーマンス」「コンプライアンス」といった課題を解決することだという。具体的には今回、「VMware Private AI Foundation with NVIDIA」および「VMware Private AI Reference Architecture」を発表した。

 VMwareとNVIDIAはこれまで「VMware vSphere」「VMware Cloud Foundation」とNVIDIA GPUとのインテグレーションを進めてきた。「VMware Private AI Foundation with NVIDIA」ではさらに連携を深め、統合基盤として推進する。

 例えば、単一の仮想マシンが、最大16基のGPUあるいは仮想GPUにアクセスできるようになる。ストレージの「VMware vSAN」では、RDMAによりストレージからGPUへデータを直接転送することで、パフォーマンスを向上する。また、必要なフレームワークやライブラリを組み込んだ「vSphere Deep Learning VM」という仮想マシンイメージにより、迅速なプロトタイピングができるようにする。

 Dell Technologies、Hewlett Packard Enterprise、Lenovoは、VMware Private AI Foundation with NVIDIAに対応したサーバ機を発表した。

 一方、「VMware Private AI Reference Architecture」では、さまざまなLLMを動かすためのKubernetesを含めたインフラ設計を、参照アーキテクチャとして公開している。こちらも現在のところVMware Cloud Foundation、NVIDIAのGPUを前提とした内容になっている。

 ただしVMwareは、Private AIについてマルチクラウドのオープンな取り組みだとしている。エコシステムにはIntelやAMD、Amazon Web Services(AWS)、Microsoft Azure、Google Cloud(のVMware Cloud)、VMware Cloudパートナーも含まれている。

ストレージの容量と性能を強化するVMware vSAN Max

 「VMware vSAN Max」は、仮想ストレージ「VMware vSAN」の新プロダクト。ストレージ容量とパフォーマンスが大幅に向上する。

 「VMware Cloud Foundation」のハイパーコンバージドインフラ(HCI)構成では、同一のコンピュートノード群で仮想マシンとストレージの双方を動かすが、vSAN MaxではvSANに専用のコンピュートノードを割り当て、ストレージクラスタを構成する。これを単一あるいは複数の「VMware vSphere」ホストが共有ストレージとして利用できる。これにより、ストレージの容量とパフォーマンスをコンピュートと独立して拡張できる。

 vSAN Maxでは、最大で1ストレージクラスタ当たり24ノード、容量8.6ペタバイトまで拡張可能。パフォーマンスは最大360万IOPS。100以上のvSphereホストがvSAN Maxを共有できるという。

「VMware Ransomware Recovery」の新機能

 VMwareは、「VMware Ransomware Recovery」というランサムウェアからのデータ復旧サービスを提供している。今回は、複数の仮想マシンの復旧を並列処理することにより高速化を実現。また、ランサムウェアの被害にあったオンプレミスのデータセンターが復旧するまで、クラウドで本番システムを稼働できる機能などを発表した。

 「Cybersecure Storage」という新機能も説明している。オンプレミスのデータセンターのデータ復旧のために最適なスナップショットを決定し、差分のみを転送することで、データ転送量と復旧のための所要時間を減らすという。

コンテナ基盤はPlatform Engineering機能で進化

 アプリケーション開発・運用プラットフォームの「VMware Tanzu Application Platform」では、開発者体験の向上を目的とした機能を2種発表した。まず2022年に紹介済みのBackstageをベースとした開発者向けポータル「VMware Tanzu Developer Portal」、そして「VMware Tanzu Application Engine」だ。

 Tanzu Application Engineは、Platform Engineeringを支援するツール。プラットフォームエンジニアが、セキュリティや可用性など、ガバナンス/コンプライアンス要件に合ったアプリケーション環境設定を「Application Space」と呼ばれるプロファイルとして用意する。開発者はこれを利用して開発を行えばいい。

 開発者はチケットを発行して待つなどの必要がなく、開発に集中できるという。

Tanzu Intelligence Servicesには、VMware Ariaの一部が移行

 また、Tanzu関連では、プラットフォーム/運用チームによるDay 2の作業を支援する管理製品として「Tanzu Intelligence Services」を発表した。これには、2022年に「VMware Aria」として発表された管理製品群のうち一部が含まれている。

 具体的には、「VMware Aria Cost by CloudHealth」が「VMware Tanzu CloudHealth」、「VMware Aria Migration」が「VMware Tanzu Transformer」となった。他には「VMware Tanzu Guardrails」「VMware Tanzu Insights」などがある。

 Ariaの中核的な存在である「VMware Aria Hub」も「VMware Tanzu Hub」と名称を変えた。

ネットワーク仮想化ではマルチクラウド対応した「VMware NSX+」

 ネットワーク仮想化の「VMware NSX」では、ハードウェア機器の設置や設定変更などなしに、ネットワークやセキュリティを柔軟に設計し、運用できる。仮想的なルータ、ファイアウォール、ロードバランサーなどを柔軟に配置するイメージで、データセンター内のネットワークを構成できる。代表的なユースケースの一つとして知られるマイクロセグメンテーションでは、ネットワークをきめ細かく分割し、マルウェア/ランサムウェアを封じ込めるなどが可能。

 新発表の「VMware NSX+」では複数のクラウドにNSXを展開し、単一のクラウドコンソールで一括管理できる。複数クラウドのネットワーク/セキュリティを構成し、一貫したポリシーを適用して、抜けのないように監視できるという。これについては別記事で紹介する。

Edge Cloud Orchestratorでエッジのライフサイクル管理

 VMwareは、店舗や工場などのエッジ向けの小型ITインフラ/アプライアンス用ソフトウェアとして「VMware Edge Compute Stack」を提供している。今回その統合管理/オーケストレーションツールとして「VMware Edge Cloud Orchestrator」を発表した。「VMware SASE Orchestrator」と呼ばれていたものを拡張し、改称したという。

 Edge Compute Stackを数千、数万といった多数の拠点に展開し、その際設置拠点に技術スタッフを送り込めないといった場合に最も役立つと説明する。Edge Stackに加え、SD-WANやセキュリティの設定をゼロタッチで自動的に行える。その後のアップデートも自動化される。

 Edge Compute Stackとその上で稼働するアプリケーションのライフサイクル管理については、「Project Keswick」として開発されてきた機能を「テクノロジーショーケース」としてリリースした。

 この機能では、GitOpsを採用している。Git上で「あるべき状態」が管理され、これをEdge Compute Stack側から取得する。

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