BroadcomによるVMwareの買収プロセスが完了した。だが、Broadcomは公表することなくVMwareを4つの部門に分割した。この4つの部門を束ねるリーダーは置いていない。VMwareはどう変わっていくのか。
この記事は会員限定です。会員登録(無料)すると全てご覧いただけます。
Broadcomが、買収したVMwareを4つの部門に分割したことが明らかになった。これについてBroadcomは、本記事の公開時点まで公表していない。VMwareのCEO(最高経営責任者)を務めていたラグー・ラグラム氏は退社した。
BroadcomによるVMwareの買収プロセスは2023年11月22日(米国時間)に完了した。Broadcomのプレスリリースや、社長兼CEOであるホック・タン氏のブログポストには、典型的な買収側企業のコメントが散りばめられていた。
2022年5月の買収に関する当初の発表は、買収完了後のVMwareについて次のように記述していた。
「買収完了後、Broadcomのソフトウェア部門であるBroadcom Software GroupはVMwareとしてリブランディングされ、運営される。Broadcomの既存のインフラおよびセキュリティソフトウェアソリューションはVMwareの事業ポートフォリオの一部として組み込まれる」
こうした方向性は、これまで否定も修正もされることはなかった。そのため、筆者も含めて多くの人々は、VMwareがこれまでの事業にBroadcomの既存ソフトウェア事業を束ねて統括的に推進する部門になると考えたはずだ。そう思い込んでいる限り、買収完了に関するプレスリリースやブログポストは自然なものに感じられた。
だが、発表後1日も経たないうちに、英ITニュース媒体のThe Registerが、公表されていない事実に気づいた。VMwareが4つの部門に分割されているのではないかとBroadcomに問い合わせ、同社もこれを認めた。
実は筆者も、買収完了に関するメッセージをまとめたBroadcomの特設ページに大きな違和感を覚えていた。幹部たちへの個別インタビュー動画が5本掲載されているが、登場するのはタン氏と4つの部門のトップのみ。ラグラム氏の姿はなかったし、(どういう役職名でもいいが)4部門(を含めたソフトウェア事業)を束ねる立場の人が登場しなかったからだ。
The RegisterがリンクしていたBroadcomの幹部リストを見ると、旧VMwareの4部門は、製品ジャンル別に分かれたBroadcomの既存部門と横並びになっている。2021年に設立されたBroadcom Software Groupの名前はない。例えばSymantecのセキュリティ事業は「Symantec Enterprise Division」として独立している。その他のソフトウェア製品群も、それぞれ別部門が担当している。
なお、当初の買収発表時にBroadcom Software Groupを率いていたトム・クロース氏は2022年にBroadcomを退社し、その際に同グループのプレジデントという役職はなくなっていたようだ。
つまり、「Broadcomの既存のインフラおよびセキュリティソフトウェアソリューションはVMwareの事業ポートフォリオの一部として組み込まれる」というくだりは実現しなかったことになる。今後、ソフトウェア製品あるいは旧VMwareを統括する役職が生まれる可能性はゼロではないのかもしれないが、当初の発表から1年以上も経って買収が完了したのだから、間に合わなかったということではないはずだ。
旧VMwareの4部門とは、「VMware Cloud Foundation」「Tanzu」「Software-Defined Edge」「Application Networking and Security」。大まかにはVMwareの事業部門を引き継いだものとなっている。ゼネラルマネジャーたちも、全員がVMwareから横すべりした形だ。
だが当然ながら、この4つは完全に別事業として進められるものではない。全てが共通の基盤上で成り立ち、連動している。これをどう指揮していくのだろうか。
買収完了に際し、タン氏はブログポストで旧VMwareのビジネスを加速すると強調した。
「(旧VMwareに)年間20億ドルの追加投資を計画しており、その半分を研究開発に使い、残りの半分を、VMwareとパートナーのプロフェッショナルサービスを通じたVMwareソリューションの展開支援に集中させる予定だ」
だが、研究開発戦略は誰が立て、誰が投資の優先順位を決めるのかが全く見えない。
販売面でも疑問がある。これまでBroadcomの企業向けビジネスは大規模企業のみをターゲットとし、基本的には直販で進めてきたことで知られる。VMwareが展開してきたこれまでのチャネルプログラムは維持されるのだろうか。
2024年8月の実施が予定されているVMwareの年次イベント「VMware Explore 2024」はどうなるのだろうか。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.