Googleは、AIの活用により2030年までに世界の温室効果ガス(GHG)排出量の5〜10%を削減できる可能性があるとするレポートを発表した。本記事ではGoogleのAI活用による温室効果ガス削減策を紹介する。
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Googleは2023年11月20日(米国時間)、AI(人工知能)は2030年までに世界の温室効果ガス(GHG)排出量の5〜10%を削減できる可能性があるというレポートを公開した。本記事ではGoogleのAI活用による温室効果ガス削減策を紹介する。
Googleマップの「低燃費ルーティング」機能では、AIを使い、坂道や交通量が少なく、一定の速度で、かつ同等の時間で移動できるルートを提案している。2021年10月のサービス開始以来、低燃費ルーティングは240万トン以上のCO2排出量削減に貢献していると推定されており、これは約50万台のエンジン車が1年間道路を使用しないことに相当する。
2018年以降、Googleリサーチは洪水予測に取り組んでいる。高度なAIと地理空間分析を用いてリアルタイムの洪水情報を提供し、地域社会や個人が河川の洪水に対応できるようにしている。GoogleのFlood Hubプラットフォームは80カ国以上で利用可能で、4億6000万人に最大7日前までの予測が提供可能だ。
航空機の後方に時折発生する飛行機雲は、気候に驚くほど大きな影響を与えている。2022年のIPCC(気候変動に関する政府間パネル)の報告書では、飛行機雲は航空による地球温暖化の影響のおよそ35%を占めており、これは世界のジェット燃料の影響の半分以上であると指摘されている。Googleはアメリカン航空、Breakthrough Energyと協力し、衛星画像、天候、飛行経路データなどの膨大なデータを集め、AIを使って飛行機雲発生予測マップを作成し、パイロットが飛行機雲の発生を避けるルートを選択できるかどうかをテストした。このテスト飛行の結果、飛行機雲の発生を54%減らすことができた。
AIの応用を拡大し、気候変動対策を加速させることは極めて重要だが、一方でAIによる環境への影響を管理する必要もある。
AIが変曲点にある今、データセンターにおけるAIコンピューティングによるエネルギー使用量と排出量の将来的な伸びを予測することは困難だ。2022年、世界のデータセンターの電力消費量は、世界の最終電力需要の1〜1.3%を占める。
AIコンピューティングをより効率的にするには、新しい方法を発見する必要がある。AIワークロードのカーボンフットプリントを最小化するために、Googleは、AIモデルの学習に必要なエネルギーを最大100分の1に削減し、関連する排出量を最大1000分の1に削減できる手法を導入している。
また、Googleが所有、運営するデータセンターは、一般的な企業データセンターの平均1.5倍以上のエネルギー効率で、グローバルデータセンターの年間平均電力使用効率(PUE)は、業界平均の1.55に対し、1.10だという。
持続可能な未来を創造するには、政策立案者、政府関係者、都市計画担当者、ビジネスリーダー、そして個人による協力が必要だ。
Googleは、「特に政策立案者は、気候変動対策にAIの可能性を活用することに加えて、AIの持続可能かつ公平な利用を確保する上でも、中心的な役割を担っており、下記の3つを加速させるために重要な役割を果たす」としている。
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