TechTargetは「疑似コード」に関する記事を公開した。疑似コードを記述することで開発者は、プログラミングの重要な側面でもある「問題解決のスキル」を磨くことができるという。
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トウェイン・テイラー氏は2023年11月6日(米国時間)、TechTargetで「疑似コード(pseudocode)」に関する記事を公開した。
アイデアを機能的なプログラムに変換するには、一連の、構造化された手順が必要となる。コードを記述してプログラムをテストする前に、プログラムのロジックと構造を概念化する重要なフェーズがあるが、そこで疑似コードが役立つ。テイラー氏は疑似コードについて「思い付いたアイデアを機能として実装するまでの間の重要な橋渡しとなる。つまり、開発者がアイデアを明確かつ簡潔に表現できるようにするものだ」と説明している。
疑似コードは、特定のプログラミング言語ではなく日常で使っている言語を用いて、プログラムやアルゴリズムを読みやすく表現するものだ。開発者は疑似コードを使うことで、構文を気にすることなく、アルゴリズムやプロセスを概念化できる。フローチャートなどのアルゴリズム設計ツールと比べて疑似コードはシンプルでアクセスしやすいため、開発者の中で人気のツールとなっている。
実際のプログラムコードとは異なり、コンパイルや実行を目的にしたものではないが、その代わりプログラマーが問題を考え抜き、それを解決するためのプランを考えるのに役立つ。疑似コードは変更が容易なため、アイデアやアルゴリズムを素早く生み出すことができる。
開発プロセスで疑似コードを使用すると、次のようなメリットが得られる。
疑似コードによってアルゴリズムの表現がシンプルになるため、問題点や解決策の理解が容易になる。
アイデアを明瞭に、協力的に伝えることができるようになるため、関係者全員がアルゴリズムを確実に理解できる。
コーディング作業に入る前に論理的な間違いや非効率な部分を見つけられるため、時間とリソースを節約できる。
疑似コードは特定の言語には依存しない。そのため、精通するプログラミング言語が異なる開発者同士でもプロジェクトを理解し、共同作業ができる。
疑似コードを使えば、学習者は構文ではなく、ロジックに集中できる。そのため、プログラミングの概念を教えるのに役立つ。
コーディングを始める前にプログラムの構造を整理できるため、エラーを減らせる。
効果的な疑似コードを記述するには、基本原則がある。
疑似コードを見た他の人がアルゴリズムを理解できるように、簡単な言葉で書くこと。
アルゴリズムの入力、出力、必要な手順を明確に記述すること。
長い説明や複雑な説明は避けること。
疑似コード作成の全体の流れは次の通りだ。まず、解決すべき問題点を把握し、分析する。次に、その問題点を細かく分解し、小さく、管理しやすい部分を特定する。続いて、各部分の疑似コードの記述に着手し、問題を解決するために必要な手順を明確に記述する。最後に、疑似コードの個別のセクションをまとまりのある全体に統合する。
以下に、幾つか例を示す。
FUNCTION binarySearch(array, target) left = 0 right = array length - 1 WHILE left <= right middle = (left + right) / 2 IF array[middle] == target RETURN middle ELSE IF array[middle] < target left = middle + 1 ELSE right = middle - 1 END IF END WHILE RETURN 'Not Found' END FUNCTION
FOR i = 1 to array length - 1 FOR j = 1 to array length - i IF array[j] > array[j + 1] SWAP array[j] and array[j + 1] END IF END FOR END FOR
効果的な疑似コードを記述することで、コーディング作業がスムーズになり、効率も高まる。以下に、疑似コードの記述スキルを高めるためのヒントを幾つか紹介する。
疑似コードを記述する前に、問題点を完璧に理解することが重要だ。望ましい結果、入力、結果に到達するまでに必要な手順の要点を記述する。
分かりやすく、簡潔な言葉を使って、アルゴリズムの手順を正確に記述すること。他人を混乱させる可能性のある複雑な言葉や専門用語の使用は避けるべきだ。
明確さを保つため、疑似コード全体で一貫したスタイルを使用すること。一貫性を保つことは、記述者の思考プロセスを他人が適切に理解するのに役立つ。
疑似コードの手順は、論理的な順序に従う必要がある。そうすれば、疑似コードをプログラミング言語に変換するのが容易になる。
いったん疑似コードを記述したら、そのコードが明確かつ論理的なことを確認すること。さらにシンプルにできる部分や明確にできる部分がないかを探すといいだろう。
ただ、忘れてはいけないのは疑似コードは“完璧である必要はない”ということだ。疑似コードの目的は、アルゴリズムの考え方を示し、他のユーザーとのコミュニケーションを容易にすることだ。
疑似コードは、さまざまなプログラミングパラダイム(プログラミングの考え方、実装方法)に当てはめることができるため、高レベルのアイデアと具体的なプログラミング構造との間のギャップを埋めるのに役立つ。疑似コードは、手続き型プログラミングとオブジェクト指向プログラミング(OOP)という2つのプログラミングパラダイムのどちらにも使用できる。
手続き型プログラミングでは、コードを一連の命令として記述するが、疑似コードは、実行すべき手続きとその順序の概要を示すことができる。例えば、数値の階乗を計算する手順は、疑似コードで記述してから、手続き型言語で実装できる。
OOPでは、オブジェクトとオブジェクト同士の相互作用に重点が置かれるため、OOPの疑似コードは、クラスとそのプロパティとメソッドの概要を説明できる。OOPの疑似コードでは、クラスと、そのクラスのプロパティとメソッドの概要を記述する。例えば、プロパティ(色と速度)とメソッド(アクセルとブレーキ)を備えた“自動車クラス”を設計する場合、「Java」などのOOP言語で実装する前に、疑似コードを使って表現できる。
どちらのパラダイムでも、開発者は疑似コードを使うことで、構文を気にすることなく、プログラムのロジックと構造に専念できる。さまざまなパラダイムにまたがって疑似コードを実践することで、プログラミングの核となる概念の理解を深め、開発者としての多様性を高めることができる。
疑似コードは、プログラマーにとって強力なツールになる。疑似コードを使うことで「アルゴリズムを設計し、伝え、デバッグする」という作業を簡素化できる。
経験豊富な開発者にとっては、複雑なアルゴリズムやシステムの設計に役立つだろう。開発者は疑似コードを使って自身の考え方を明確に表現し、同僚と効果的に共同作業して開発の早い段階で潜在的なエラーを発見できる。初心者にとってはプログラミングの基礎を学ぶ貴重なツールとなる。構文の複雑さに惑わされず、アルゴリズムのロジックと構造の理解に専念することができるからだ。
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