Webアプリ開発における「MERN」スタックとは? 「MEAN」との違いは?ユースケースごとの向き、不向きはあるのか

Web開発プロジェクトでは、適切なテクノロジースタックを選定することが極めて重要なステップになる。Web開発プロジェクトではMERNとMEANのどちらかを選ぶのが一般的だ。どちらを選ぶのが最適なのか。

» 2024年01月18日 08時00分 公開
[Twain TaylorTechTarget]

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 Web開発プロジェクトを計画するに当たっては、適切なテクノロジースタックを選定することが極めて重要なステップになる。Web開発においては「MERN」と「MEAN」スタックのどちらかを選ぶのが一般的で、その選択が重要になる。

MERNとMEANの共通要素

 MERNとMEANは、それぞれのスタックを構成する主要要素を指す頭字語で、MERNは「MongoDB」「Express.js」「React」「Node.js」を表し、MEANは「MongoDB」「Express.js」「Angular」「Node.js」を表す。まずは、両スタックに共通する3つの要素を確認する。

MongoDB

 MongoDBは、スキーマの柔軟性とスケーラビリティの高さに定評があるNoSQLデータベースだ。MongoDBはJSONや同様のドキュメント形式を適切に処理するため、迅速な開発サイクルと柔軟なデータモデリング構造を必要とするアプリケーションプロジェクトに適している。オンデマンドでスケーリングするクラウドアプリケーションを扱う際には特に役立つ。

Express.js

 Express.jsはNode.jsベースの軽量のWebアプリケーションフレームワークで、包括的な機能セットが含まれ、サーバのプロビジョニング、リクエストのルーティング、APIの管理などのバックエンドタスクを処理する。Express.jsは細部にわたる構成が可能で、HTTPリクエストの解析および変換、オリジン間リソース共有(CORS:Cross-Origin Resource Sharing)、自動ログ記録用の高度なメカニズムを備えている。こうした機能により、SPA(シングルページアプリケーション)やMPA(マルチページアプリケーション)開発の用途に使用できる。

Node.js

 Node.jsはランタイム環境で、「Google Chrome」のV8エンジン上に構築されている。このイベント駆動型のノンブロッキングランタイム環境は、データを集中的に使用し、高いスケーラビリティとリアルタイム機能を必要とするネットワークアプリケーションを実現するための選択肢となる。Node.jsによって、開発者はJavaScriptコマンドラインツールやサーバサイドスクリプトを利用できるため、動的にWebコンテンツを生成してからユーザーのディスプレイに表示できるようになる。

ReactまたはAngularのどちらを選択すべきか

 MERNはReactライブラリに、MEANはAngularフレームワークに関連付けられていることが、それぞれのスタック特有の開発上のメリットの違いを生み出している。MERNが多用するReactは、コンポーネントベースのUIをビルドするためのフロントエンドJavaScriptライブラリだ。MEANが使用するAngularはTypeScriptベースのWebアプリケーションフレームワークで、大規模アプリケーションの構造に一貫性をもたらす。

Reactの特徴

  • 再利用性:Reactのコンポーネントベースのアーキテクチャはコードの再利用を容易にするため、小規模アプリケーションプロジェクトに適している
  • アップデートとレンダリング:Reactライブラリに見られる仮想ドキュメントオブジェクトモデル(DOM)によって効率の高いアップデートとレンダリングが保証されるため、動的でインタラクティブなWebアプリケーションに適している
  • コミュニティーサポート:Reactが誇る大規模で活発な開発者コミュニティーにより、開発プロセスをスピードアップするために設計された豊富なリソースやサードパーティー製ツールが提供される
  • ユーザーエクスペリエンス:Reactの単一方向のデータフローによって、より動的でインタラクティブなユーザーエクスペリエンスが実現されるため、コンシューマー向け小規模アプリケーションに大きなメリットがもたらされる

Angularの特徴

  • 構造的アプローチ:Angularは、双方向データバインディングや依存関係の挿入のような機能を提供するため、エンタープライズレベルの複雑なアプリケーションに適している
  • 企業向け:Angularの包括的なツールセットとGoogleの強力なサポートにより、大規模Webアプリケーション開発プロジェクト用の強力なフレームワークになっている
  • 学習曲線:Angularは豊富な機能を有する環境であるため、開発初心者には習得が難しく、このフレームワークに不慣れなチームには制限をもたらす可能性がある
  • コミュニティーサポート:Reactほど広範ではないが、 Angularのコミュニティーも活発で、開発に共通する課題に幅広いサポートを提供している

 残念だが、MERNスタックとMEANスタックのどちらを選ぶかに対する「普遍的な」答えはない。正しく選択するには、プロジェクトの技術目標や業務目標を細部まで理解し、開発チームの強みを明確に評価する必要がある。とはいえ、正しく選択するために基本的に考えるべき点は幾つかある。

MERNのユースケース

  • 迅速な開発:MERNのコンポーネントベースのアプローチにより、開発チームは、再利用可能なコードの作成、プロトタイプの迅速な構築、既存のアプリケーション設計の継続的な反復が容易になる
  • 動的アプリケーション:Reactの仮想DOMによってレンダリング速度が向上するため、MERNはインタラクティブ性の高い動的アプリケーションに適している
  • ユースケース:MERNは、小中規模アプリケーションプロジェクト、Eコマースプラットフォームなどの迅速な開発を必要とするユースケースやユーザーエクスペリエンスが最優先となるユースケースに適している

MEANのユースケース

  • 双方向データバインディング:Angularのデータバインディング機能は、MEANを使用する開発者が開発を簡素化し、大規模アプリケーションシステム全体で一貫性を確保するのに役立つ
  • スケーラビリティ:MEANの遅延読み込みやモジュール形式の開発は、エンタープライズレベルの開発で必要とされることが多いスケーラビリティや長期にわたる拡張のサポートに役立つ
  • ユースケース:MEANは、構造、セキュリティ、回復力が優先される大規模エンタープライズアプリケーション、金融システム、CRMプラットフォームなどの開発プロジェクトに選ばれることが多い

ハイブリッドアプローチもある

 両スタックに違いがあるとしても、開発チームはMERNとMEANの要素を組み合わせるハイブリッドアプローチを選択することもできる。例えば、1つのプロジェクトのフロントエンドの開発にReactのコンポーネントベースの設計を使用し、バックエンドプロセスの制御にAngularを使用しても構わない。

 あるいは、第3の選択肢として、フロントエンドライブラリ「Vue.js」がある。Vue.jsのシンプルさとパフォーマンスを組み合わせる「MEVN」(MongoDB、Express.js、Vue.js、Node.js)スタックは、Reactの柔軟性とAngularの構造とのバランスを求める開発チームにとって選択肢の一つになる。

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