コンテナとKubernetesについて知っておくべきこと(後編)Gartner Insights Pickup(346)

前編では、コンテナとKubernetesの主なメリットや難しさ、課題、一般的なユースケースについて述べた。後編となる今回は、コンテナ管理の9つの新トレンドについて紹介する。

» 2024年04月12日 05時00分 公開
[Wataru Katsurashima(桂島 航), Gartner]

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コンテナ管理の9つの新トレンド

 コンテナ関連技術への関心は高く、Gartnerの顧客企業からの問い合わせは年々増加している。企業は、今後数年間に予想されるコンテナ管理の9つの新たなトレンドや事象に備える必要がある。

ベンダー選択

 多くの企業が迫られるコンテナ管理の主要な判断として、コンテナ管理ベンダーの選択がある。1つの選択肢は、異なるクラウド環境間でシステムやプロセスをある程度共通化できるコンテナ管理ソフトウェアを選択することだ(Red Hat、SUSE、VMwareのソリューションなど)。もう1つの選択肢は、ハイパースケールクラウドサービスプロバイダーのコンテナソリューションを利用することだ。Gartnerは、ハイパースケールプロバイダーのサービスの導入の伸びの方が若干高いと見ている。

AI/ML

 人工知能と機械学習(AI/ML)は、コンテナのユースケースの中でも特にコンテナ利用が進んでいる。コンテナは優れたアジリティ(俊敏性)や高い弾力性、自動化されたパイプラインの構築を可能にし、AI/MLの要件によく合うからだ。データアナリティクスも、コンテナの導入が拡大している分野だ。

 コンテナ管理ベンダーは、DevOpsツールチェーンとAI/MLワークフローの密接な連携を実現するとともに、AIインフラやデータサイエンスワークベンチツールを提供するISVやIHVとのエコシステム統合を進めている。

ISVのサポート

 ISVでは、コンテナ化されたソフトウェアとして、あるいはKubernetesでのリソースオブジェクトとして、ソフトウェア製品を提供することが増えている。ISVは企業と同様に、コンテナ対応によるアプリケーション開発のアジリティとスピードのメリットを見いだしている。この傾向は今後数年間続くだろう。

エッジコンピューティング

 コンテナ管理ベンダーは、エッジコンピューティングのユースケースへの対応を強化している。コンテナは、エッジで仮想マシン(VM)とともに、あるいはVMの代わりにますます採用されるようになっている。コンテナの方がモダンアプリケーションアーキテクチャに適応させやすく、エッジでソフトウェアを更新するのに便利だからだ。

 今後数年間で、エッジでのコンテナのアクティビティーは、オンプレミスでのアクティビティーに匹敵する量になるだろう。

サーバレスコンテナサービス

 コンテナ/Kubernetesサービスは、サーバレスの考え方を取り入れて使いやすくなってきている。これらのサーバレスコンテナサービスは、Kubernetes上に構築されることもある。Gartnerは、これらのサーバレスコンテナサービスが標準的なコンテナ/Kubernetesのデプロイよりも、ますます好まれるようになると予測している。

ステートフルアプリケーション

 ステートフルアプリケーションのサポートは、初期のコンテナ環境の課題だった。だが、コンテナ環境におけるステートフルアプリケーションのサポート(ブロックまたはファイルベースのストレージの抽象化により、コンテナ化されたアプリケーションからのアクセスをサポート)は、ここ数年で改善されてきた。コンテナネイティブのストレージおよびデータ管理ソリューションの成熟度が高まるにつれて、今後数年間でさらに改善される見通しだ。

ベンダー動向

 市場では、ベンダーの激しい勢力争いが引き続き繰り広げられている。買収などの業界再編も起こっており、市場動向を把握して適切にベンダーを管理するのは、一段と難しくなっている。

 コンテナ管理ソフトウェアの大手ベンダーとハイパースケールクラウドプロバイダーの競争については前述したが、以下のように、こうした競合企業が協力している場合もある。

  • 大手コンテナ管理ソフトウェアベンダーはクラウドベンダーと提携し、パブリッククラウド上でマネージドコンテナ管理サービスを提供している
  • クラウドプロバイダーはパブリッククラウドの外部でのサービス提供を進めており、その一環として、コンテナと自社の分散クラウドサービスを組み合わせることが多い
  • クラウド管理プラットフォームの一部の機能は、コンテナ管理ダッシュボードと融合しつつある。従来のクラウド管理プラットフォームがそうした機能を追加しているケースもある

 成功するコンテナ管理ソフトウェアベンダーは、ハイパースケールプロバイダーと緊密に提携し、彼らがネイティブに提供する製品を補完するサービスを提供するだろう。

クラスタフリート管理

 社内でKubernetesの導入が拡大するにつれて、インフラとオペレーション(I&O)チームは、多くのクラスタをデプロイし、管理しなければならないことが分かってきている。これらのクラスタは単一のリージョンやオンプレミス、クラウド、複数のリージョンにわたって配置される可能性がある。

 クラスタフリート管理は、新しい一連のツールとプロセスにより、複数のKubernetesクラスタのライフサイクルと状態を管理することを指す。クラスタフリート管理に使用される主な機能には、オーケストレーションソフトウェアのデプロイとアップグレードや、コンテナ化されたアプリケーションと運用ポリシーのクラスタへの配備などが含まれる。クラスタフリート管理は、異種のKubernetesディストリビューションをサポートするケースも多い。

生成AIベースのユーザーインタフェース

 生成AIは、大規模言語モデル(LLM)を利用した新世代の仮想アシスタントの開発を可能にしている。仮想アシスタントのパフォーマンスを高めるためだけでなく、新しい機能を追加し、タスクの自動化を拡張し、新しい価値の成果をサポートするためにも使用されている。

 Gartnerは、生成AIベースの仮想アシスタントが多くのコンテナ管理製品に新しいユーザーインタフェース(UI)を追加すると予測している。これらのUIは、コンテナ管理製品のドキュメントやデータなどでトレーニングされた生成AIベースの操作支援を提供することで、コンテナ管理製品の運用を効率化し、開発者をサポートする。

出典:What You Need to Know about Containers and Kubernetes:(Gartner)

※この記事は、2024年2月に執筆されたものです。

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