Google Workspaceの「Google Vids」は、一般的な動画作成ツールと発想が違うドキュメントからビデオを自動生成

Google Cloudが年次イベント「Google Cloud Next ‘24」で発表した動画作成ツールの「Google Vids」は、他の使いやすい動画作成ツールとどう違うのか。生成AIはどのように使われているのか。デモの内容から利用イメージを探ってみた。

» 2024年04月15日 09時00分 公開
[三木泉@IT]

この記事は会員限定です。会員登録(無料)すると全てご覧いただけます。

 Google Cloudが2024年4月9日(米国時間)、年次イベント「Google Cloud Next ‘24」で動画作成ツールの「Google Vids(以下、Vids)」を発表した。

 これは「Google Workplace」の一機能。「Googleドキュメント」「Googleシート」「Googleスライド」などと連携し、生成AIを活用して、誰でも簡単に仕事用のビデオコンテンツが作成できるという。

 では、よく見られるような使いやすさをうたった動画作成ツールとはどう違うのか。生成AI(人工知能)はどう生かされるのだろうか。Workspaceに関する特別セッション中に見せたデモで、同社はVidsの狙いをある程度分かりやすく示した。

 本記事では、Google Cloudが明らかにしているVidsの具体的な利用イメージを紹介する。

ドキュメントからビデオを自動生成

 Vidsは他のWorkspaceアプリと同様に、Webブラウザだけで作業を完結でき、共同作業も可能なツールだ。Google Cloudは用途として、新製品の紹介やデモ動画といった営業資料、ハウツー動画、新入社員ブリーフィングやセールストレーニングの資料などを挙げている。

 「誰でもストーリーテラーになれる」とうたっているように、Vidsでは目的に合わせた説明やアピールを、ビデオという形で魅力的にすることに重きを置いているようだ。簡単にビデオをパーソナライズできる機能を入れているのは、そのためだと考えられる。

 デモは、製品マーケティング担当者が営業チームに対して新製品を紹介するビデオを作成する想定。手順を次のように紹介した。

プロンプトウインドウに指示を入力する

 まず、表示されるプロンプトウインドウ(テキストボックス)で、プロンプトとして作りたいものを記述し、内容を記述した資料を指定する。

 デモでは「新製品と発売の概要」という意味のプロンプトを入力し、新製品に関する社内向けGoogleドキュメントを指定している。

 すると、Vidsはビデオの構成を提案してくる。この時点では内容に沿ったシーン分割を、目次のように示すだけのようだ。ユーザーはこの目次を自由に修正できる。

Vidsがビデオの構成案を表示する

 次にデザインテンプレートを選択し、「Create Video」というボタンをクリックするだけで、ビデオが作成される。

 このデモでは画像、動画、バックグラウンドミュージックにロイヤリティフリー素材を使っているようだ。だが、AIが生成することもできるという。

 素材は後から入れ替えることができる。社内やユーザー自身の素材を簡単に組み込むこともできるはずだ。実際、基調講演におけるデモでは、イベント会場のさまざまな場面をまとめたビデオを作成していた。

ビデオの構成案が決まったらテンプレートを選択。次に右下の「Create Video」をクリック
これだけでビデオが一通りできた

 Google Cloudは今回のイベントで、テキストプロンプトから動きのあるイメージを生成できる「Text-to-Live Image」を、画像生成AI「Imagen 2.0」の機能として別途発表した。これも使えるようになるのかもしれない。

 ビデオを作成した時点で各シーンのナレーションスクリプトが自動生成される。つまり、Vidsは必要に応じて資料を要約し、構成案の目次に合わせて各シーンに適切なスクリプトを設定する。ここがVidsにおける生成AIの一番の生かしどころなのかもしれない。

 スクリプトを基に、ユーザー自身がその場でナレーションを録音できる。自分で読み上げたくない場合はAI音声で自動生成をすることもできる。

各シーンのナレーションが自動で生成されている
ナレーションではAI音声による自動読み上げを設定できる

 ここまでのプロセスを見ると、一般的な動画制作ツールとはある意味で発想が逆だということが分かる。Vidsでは、ドキュメントとなっている情報を、目的に合わせてビデオとして表現することに主眼を置いている。つまり、ナレーションが重要であり、ビデオ全体を意味のある映像で構成する必要はない。ストーリーを語るのを助けられるなら、イメージ映像/画像でも積極的に使えばいいということなのだろう。

 ナレーションだけでなく、ユーザー自身が顔を出して語るビデオシーンを挿入することも簡単にできるという。自身でメッセージのスクリプトを書き、PCのマイクとカメラを使ってその場で撮影できる。撮影では、スクリプトをスピーチプロンプトとして画面に表示し、これを見て話すことができる。

 撮影後、Vidsは文字起こしを自動表示し、無音部分やつなぎ言葉の削除を提案してくる。これを見て、ビデオに適宜修正を加えられる。

 「Vidsはビデオ作成を共同作業にできる」ともGoogle Cloudは強調する。デモでは営業責任者にGoogle Chatメッセージを送り、ビデオの特定箇所を指定してメッセージを録画してもらうシナリオを見せている。

営業責任者に対し、特定箇所にメッセージを録画して挿入するよう依頼する
営業責任者は、自身の書いたスクリプトをスピーチプロンプトとして表示し、読み上げる形で録画できる

 Google CloudはVidsの機能について、これ以上の説明をしていない。簡単さこそ強調しているものの、ビデオ全体や各シーンの長さをどう調整できるのかなど、ビデオ制作の素人であっても気になるポイントについては分からないままだ。

 だが、デモの例のようにコンテンツのパーソナライズを通し、日常業務におけるビデオの新たな使い方を提案できるのかもしれない。

 Google Cloudは2024年6月中に、Vidsのテスト版を「Google Workspace Labs」(Google Workplaceユーザーのためのプレビューチャンネル)で提供開始する。

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

スポンサーからのお知らせPR

注目のテーマ

Microsoft & Windows最前線2025
AI for エンジニアリング
ローコード/ノーコード セントラル by @IT - ITエンジニアがビジネスの中心で活躍する組織へ
Cloud Native Central by @IT - スケーラブルな能力を組織に
システム開発ノウハウ 【発注ナビ】PR
あなたにおすすめの記事PR

RSSについて

アイティメディアIDについて

メールマガジン登録

@ITのメールマガジンは、 もちろん、すべて無料です。ぜひメールマガジンをご購読ください。