「Kotlin 2.0」公開 次世代コンパイラ「K2」が安定版にコンパイル速度が2倍に、マルチプラットフォーム対応も進化

プログラミング言語「Kotlin」の最新メジャーバージョンとなる「Kotlin 2.0」が公開された。

» 2024年05月28日 08時00分 公開
[@IT]

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 Kotlinチームは2024年5月23日(米国時間)、プログラミング言語「Kotlin」の最新メジャーバージョンとなる「Kotlin 2.0」を公開した。

 Kotlin 2.0では、次世代コンパイラとして開発されてきた「Kotlin K2」(以下、K2コンパイラ)が安定版となり、正式に導入された。K2コンパイラではマルチプラットフォーム対応が進化している他、コンパイル速度が2倍に向上し、コード解析も改善されている。

マルチプラットフォーム対応の進化

 K2コンパイラでは、Kotlinがサポートする全てのプラットフォームのコンパイラバックエンドが、多くのロジックと統一パイプラインを共有するようになった。これにより、ほとんどの機能、最適化、バグ修正を全てのプラットフォームで一度に実装できるようになり、新しい言語機能の開発速度が大幅に向上した。この新しいアーキテクチャは、マルチプラットフォームプロジェクトのコンパイル時間のさらなる改善も見込んでいる。

K2コンパイラのアーキテクチャ(提供:Kotlinチーム)

 K2コンパイラの導入により、コンパイル以外の改善も可能になっている。Kotlinチームは既に、「Kotlin Multiplatform」(KMP)ライブラリを配布するための次世代フォーマットに積極的に取り組んでいる。KMPは、ネイティブプログラミングの柔軟性やメリットを維持しながら、異なるプラットフォーム間でKotlinコードを再利用可能にする技術だ。

 このフォーマットは、KMPエコシステムの拡大に貢献する見通しだ。マルチプラットフォームライブラリの開発をJVM(Java仮想マシン)ライブラリの開発のように容易にするからだ。

 またKotlin 2.0は、「Compose Multiplatform」プロジェクトのファーストパーティーサポートも提供する。Compose Multiplatformは、KotlinとUI(ユーザーインタフェース)ツールキット「Jetpack Compose」を使って、Android、iOS、Web、デスクトップ(JVMを使用)間でUIを共有するための宣言型フレームワークだ。Compose Multiplatformを支えるJetpack Composeコンパイラが、Kotlinリポジトリにマージされており、Kotlinとともにリリースされるようになった。

コンパイル速度の向上

 新しいコンパイラフロントエンドのおかげで、Kotlin 2.0ではコンパイル速度が向上しており、プロジェクトによっては2倍になる可能性がある。

新しいK2モード

 JetBrainsのIDE(統合開発環境)「IntelliJ IDEA」のK2モード(現在はα版)により、IntelliJ IDEA Ultimateコードベースでは、コードのハイライト表示が約1.8倍に、補完処理が約1.5倍に高速化している。K2モードがより安定すれば、より高速なハイライト表示と補完処理が可能になるという。

 K2モードは、IntelliJ IDEAの2024.2バージョンでβステータスになる。2024年末までに、既定で有効化される予定だ。

よりスマートなコード解析

 Kotlinチームによると、K2コンパイラは、動作の一貫性が向上しており、コードをよりよく理解し、Kotlinのスマートキャストをよりスマートにするという。また、多くの長年の問題を解決し、より堅牢(けんろう)なコードの作成を可能にしている。

安全な移行

 Kotlinチームは、JetBrainsとコミュニティーの開発者、企業が多くのプロジェクトを通じて厳密にテストしたことで、Kotlin 2.0は過去最高品質のリリースとなり、安全かつスムーズに移行することが可能になったと述べている。

今後の計画

 Kotlinチームは今後、以下に重点を置いて開発を進める計画だ。

  • 強力なデータフローフレームワークとデータクラスの改善
  • コンテキストパラメーターや明示的なバッキングフィールドなどの機能による抽象化の推進
  • 値クラスと不変性による高性能で明快なコードの実現
  • オプトインの仕組みや署名管理の改善によるライブラリ開発体験の向上

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